相続によって分散した株式、今後のことを考えて集約しておきたい【親族経営の会社の分散した株式を後継者に集約したいケース】

分散してしまった株式を集約したい…

ご相談前の状況

事業承継対策をご検討中の方からのご相談。

先日、先代社長であるお父様が急逝され、急遽長男が継ぐことになったが、親族経営の会社で故人の妻(現社長の母)も事業を手伝っていたため、経営の方は問題ないとのこと。

しかし、承継手続きを進める中で、3世代前の社長の相続の際に株式が親族に分散してしまっていることが判明したので、今後のことを考えて、この機会に集約したいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 相続によって親族10名以上に株式が分散してしまっており、放置しておくと相続によって今後さらに株主が増えることが予想される。
  • 現社長及び家族の株式を合わせても議決権の過半数に満たないので、会社の乗っ取りなどの危険がある。
  • 総株式の3割を持つ大株主との関係は今の所良好だが、高齢のため、近いうちに認知症の発症や相続発生のリスクがある。
  • 少数株主の中に、敵対的な株主がいるが、今後の会社運営の手間を考えると廃除しておきたい。
  • 会社の経営は順調で、株式評価額が高くなっており、時価で買い取るとコストがかさむ。
  • 買取ではなく贈与してもらうとしても高額の贈与税がかかることが懸念される。

当事務所からのご提案

非上場会社では、株主=経営者(又はその家族)であることが一般的です。

しかし、歴史の古い会社の場合、全く経営に関与していない株主が複数存在するという事は珍しくありません。

というのも、その昔旧商法の時代は会社設立時には最低7名の株主が必要とされており、頭数を揃えるために家族以外の親戚や知人に株主になってもらうという事がよくあったのです。

頭数を揃えるためであり、出資の実態はないのであくまで名義だけの株主ですが(名義株主と言います)、事情を知らない名義株主の相続人が権利を主張してくるケースもあります。

また、株主としての実態があるケースでも、相続の発生によって株式が分割相続されてしまっているケースもあります。

今回のケースも、まさにそのようなケースであり、元々は設立時の代表取締役社長がほぼすべての株式を保有していたのですが、対策を行わないまま相続が発生して子供たちに分割承継されてしまった状況でした。

さらに、その後も度重なる相続の発生により、現在では全く経営に関与していない株主が10名を超える状況でした。

そこで、当事務所で株主との関係や保有株式数を考慮した上で、株式の買取、贈与、信託等の方法を検討し、最適な方法の提案と実行のサポートをさせていただくことになりました。

非上場株式を株主から譲渡してもらう方法は?

ご依頼後、当事務所で状況を整理し、検討した結果、まず関係性が良くない株主については、税理士に現在の株式評価額を算定してもらい、多少上乗せした金額で買取る旨を申し出ることになりました。

敵対的株主の保有する一人当たりの株式数が少なかったため、他の方法にかかる手間や費用を考えると、多少コストを支払ってでもこの方法でできる限り解決するのがメリットが大きいと思われました。

この申し出に応じない方については、株式分割等によるスクイーズアウトも検討していたのですが、幸いにも期限内に全員から申し出に応じる旨の回答がありました。

また、友好的株主のうち、少数株主の何名かについては快く贈与してもらえることになりました。

問題は、総株式の3割を持つ大株主の方ですが、基本的には無償で譲渡していただけることで話はまとまりました。

ただし、一度に贈与してしまうと贈与税が高額になってしまいます。一方で株主は高齢のため、あまり長期間に分けて贈与してしまうと、途中で相続が発生し、トラブルになるリスクがあります。

そこで、税理士と相談の上、コストとリスクのバランスを考慮し、最適と思われる贈与時期、金額で贈与してもらうことを提案しました。

このように解決しました

  • 株主への通知書や売買契約書、譲渡承認請求書等を作成し、敵対的株主からの株式買取を実行しました。
  • 友好的株主については2回に分けて贈与して貰うことになったため、定期贈与とみなされないよう都度契約書等を作成し、贈与を実行しました。
  • 万が一相続が発生した場合に備えて、臨時株主総会を開催し、定款に「相続人等に対する株式の売渡し請求の定め」を新たに設けました。
  • 買取及び贈与の結果、総株式数の7割強を現社長に集約することができました。
  • 残りの株式については、現社長の家族か、友好的な少数株主が保有しているため、今後時間をかけて少しずつ譲渡してもらうことになりました。

担当者からのコメント

このケースでは、幸いにも株主が協力体だったため、スムーズに手続きが進み、コストを抑えつつ、短期間で株式を集めることができました。

しかし、交渉が長引けばさらなる相続発生により当事者が増え、より手間や費用がかかる恐れがありました。

また、相続人による議決権行使で会社の運営に支障が出るリスクも無視できません。

任意交渉による早期の譲渡が難しい場合、スクイーズアウトなどの強硬手段も検討すべきでしょう。

株式の譲渡には、会社法や、各種の法令、税制が複雑に関わってくるので、小規模企業の場合、顧問税理士では対応できないこともよくあります。実際今回のケースでもそうでした。

誤った解釈のまま対策を行った結果、事態がより混乱してしまった…という事のないように、事業の安定経営のために株式の集約をしたいと考えている方は、相続と事業承継の専門家に相談の上、実行されることを強くおすすめします。

当事務所では、会社経営者の方のための遺言・相続対策や、事業承継対策について数多くのサポートの実績がございます。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

遺言書作成サポートについてはこちら

相続で揉めやすいケースとその対策についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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