財産が不動産しかないので遺留分請求をして欲しくない・・・【相続人ではない方に遺贈したいが遺留分請求される可能性が高いケース】

財産が不動産しかないので、遺留分を請求されないようにしたい

ご相談前の状況

生前の相続対策、特に遺留分対策についてお悩みの方からのご相談。

現時点での法定相続人は養子含むお子様4人。

訳あって相続人ではない親族にすべての財産を託したいが、不動産が財産のほぼすべてを占めるため、遺留分請求されないための対策はないかという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 法定相続人に財産を一切渡さないのであれば、遺留分請求について対策しておく必要がある。
  • 意思能力の問題で後で揉め事にならないように、きちんとした形で作成する必要がある。
  • 万が一、亡くなる順番が逆になった場合に備えて、遺言の中で対策しておく必要がある。
  • 何も対策をしなければ、亡くなった後に受遺者の方が相続人の方と連絡を取り、やり取りをしなければならなくなる。

当事務所からのご提案

亡くなった後の財産については、その時点の法定相続人全員によって遺産分割協議を行い、相続されるのが一般的です。

しかし、様々な事情から、相続人ではない方にすべての財産を相続させたいと考える方もいらっしゃいます。

そのような希望は、遺言を遺すことによって実現させることが可能ですが、相続人に一切相続させない場合、慎重な配慮が必要です。

法定相続人には、法律上最低限保証されている各相続人の取り分として「遺留分」が定められているためです。

もし、遺言で貰える財産の額がこの遺留分を下回ってしまうと、多く貰った方に対して、死後に遺留分を下回った額に相当する金銭の支払いを要求することができます。(遺留分侵害額請求と言います。)

遺留分の請求をされてしまうと相続人にとってかなり負担になるので、できるだけ遺留分を下回らないような分け方が望ましいですが、やむを得ず下回る場合でも、遺留分の請求を控えてもらうような配慮や、請求された場合の対策を検討しておくべきです。

今回は、実子と養子がいる、疎遠なお子様がいる、以前別の方に相続させる内容の遺言を作成している、等の複雑な事情があり、死後に遺留分請求をされる可能性はかなり高いと予想されました。

しかし、ご相談者様は価値の高い不動産をお持ちでしたが、その他にこれといった財産はなく、遺留分の請求をされた場合、受遺者の方が支払いに困るという状況でした。

そこで、当事務所で遺言者様の半生、遺言を遺すにあたっての想い等を詳しく伺い、遺留分については請求はしないで欲しいという強い想いを遺言作成の経緯と共に記した遺言を公正証書で作成することを提案しました。

また、相続が発生した後の相続人とのやり取りで受遺者様になるべく負担をかけたくないとのことでしたので、そちらについても対策もご提案させていただくことになりました。

このように解決しました

  • 当事務所で、相続関係や財産状況、遺言を遺すにあたっての想い等を詳しく伺い、基本的にご希望通りの内容で遺言書の原案を作成しました。
  • 遺留分請求のリスクを少しでも減らすために、遺言書を遺した理由や遺言者様の心情、請求を控えて欲しい事等を付言事項に盛り込みました。
  • 万が一亡くなる順番が逆になったときの対策のため、遺言書案は予備的遺言も盛り込んだ内容になりました。
  • 作成した原案を基に、司法書士が証人として立ち会いのもと、意思能力についても証拠が残る形で公正証書遺言を作成しました。
  • 将来、相続が発生した後のやり取りについての相続人様の負担を軽減するために、遺言の中で当事務所を遺言執行者に指定していただきました。
  • 万が一遺言時の意思能力で争いになったときに備えて、遺言の他に遺言者様によるビデオメッセージを撮影してお預かりしました。
  • 遺留分支払いのための資金調達方法等についてもアドバイスさせていただき、引き続きサポートさせていただくことになりました。

担当者からのコメント

このケースのように、様々な事情から、相続人ではない方にすべての財産を相続させたいと考える方は一定数いらっしゃいます。

遺留分を侵害する内容であっても遺言は有効ですが、遺留分請求をされた場合に困るのは、財産を遺す側ではなく受け取る側です。

そしてトラブルが勃発した際には本人はすでに亡くなっているので、仲裁することもできません。

遺留分請求のリスクをゼロにすることは難しいですが、請求する側も人間である以上、付言事項で感情面に訴えるなどの対策によって請求を思い留まる方がいるかもしれません。

また、遺留分を請求する場合でも、裁判ではなく話し合いでの解決を望むなど対応が柔らかくなる可能性もあります。

専門家の中には、付言事項は法的拘束力が無いので対策にはならないと言う方もいるようですが、少しでもリスクが減る可能性があれば、できる限りの対策を打つべきだと私は考えます。

大切な財産を遺す方の負担を少しでも軽減したいとお考えであれば、相続開始後のサポート経験も豊富な専門家に相談の上、万全の対策を行うことを強くおすすめします。

当事務所では、財産を貰う方に負担をかけないための遺留分対策など、相続対策や遺言書の作成について数多くのご相談・ご依頼をいただいております。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

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※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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