相続放棄の撤回や取り消しはできる?取り消すための手続きについて

相続放棄は取り消せる?

亡くなった方にプラスの財産が少なく、逆に多額の借金などの負債がある場合、相続放棄を選択されることがほとんどかと思います。

ところが、とっくに相続放棄の手続きは済ませてしまった後で、実は負債よりはるかに高額なプラスの財産がある事が判明した。

「やっぱりやめます」は通用する?

このような場合に相続放棄をなかったことにできるのでしょうか?

ここでは、一度受理された相続放棄について撤回や取り消しはできるのか、その方法について解説します。

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目次

相続放棄後に財産が判明!相続放棄をなかったことにできる?

亡くなってすぐにはわからなかったが、相続放棄の申述が家庭裁判所に受理され、放棄が認められた後で、負債をはるかに上回る資産が見つかった。

あるいは、他の相続人に借金があるから放棄した方がいいよと言われて放棄したが、実は借金などなく、遺産を独り占めされたことが判明した。

こういった場合には、当然相続放棄をなかったことにできないかと考えるでしょう。

はたして一度相続放棄をした後で、それをなかったことにできるのでしょうか?

相続放棄を撤回することはできない

結論から述べますと、一度裁判所に認められた相続放棄をなかったことにすること「原則としてできない」となります。

相続放棄をなかったことにするためには、「撤回」や「取消し」といった方法が考えられますが、少なくとも法律上『撤回』はできないと定められています。(民法第919条第1項)

安易な撤回を認めると、相続をめぐる法律関係がいつまでも安定せず、他の相続人や債権者に迷惑がかかってしまいます。

だから相続放棄する際は慎重に考えましょうということです。

撤回はできないが取消しはできる場合がある

上記のとおり、相続放棄の「撤回」はできないものの、「取消し」については、条件を満たせばできる場合もあります。

その条件は下記の通りです。

1.取消しができるのは、騙されたときや強迫されたときなど一定の場合に限られる。

2.取消しができる期間は追認できる時から6か月以内、または相続放棄の時から10年以内。

3.取消しには家庭裁判所への申述が必要。

※追認できる時というのは、騙されたことに気づいたときや、強迫状態を脱したときなど、取消しの原因となる状況が消えた時のことです。

つまり取り消したいと思った原因が、他の人に騙されたとか脅されたとかであれば、取消しできる可能性があるということです。

いくら相続をめぐる法律関係の安定が大事とはいっても、他人の詐欺や強迫によって相続放棄した場合にまで、取消しできないというのは公平ではないからです。

また、未成年や被保佐人などが相続放棄を行う場合、親権者や保佐人などから同意を得る必要がありますが、この同意を得ずに相続放棄した場合も取消しが可能です。

成年被後見人本人が相続放棄の手続きを行った場合も同様に取消しが可能です。

参考 (相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)

第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。

2 前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。

3 前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。

4 第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

引用:民法|e-Gov法令検索 

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錯誤(勘違い)による取り消しが認められる可能性について

では後から負債をはるかに上回る資産が見つかったので取り消したい場合はどうでしょう。

この場合は騙されたりしたわけではなく、自分が勝手に勘違いしただけです。(勘違いのことを法律的には「錯誤」と言います。)

この点、錯誤による相続放棄の無効*を認めた判例はあります。

*2020年4月の民法改正以前は錯誤の効果は「取消し」ではなく「無効」でした。

そこで次のような事情があれば、錯誤による取り消しが認められる可能性はあります。

1.相続放棄をしようとした事情についての錯誤(動機の錯誤)があり、その事情が重要かつ対外的に表示されている。

2.錯誤に陥ったことにつき重大な過失がない。

1については、多額の負債があると勘違いしたため相続放棄したという場合は、負債がない(負債を上回る資産がある)とわかっていれば当然放棄しなかったでしょうから、重要な動機の錯誤にあたる可能性はあります。

ただし、それだけでは足りず、その事情が相続放棄申述書の「放棄の理由」欄に記載されているなど、対外的に表示されている必要があります。

2については、事前に自分で財産や債務の調査をしたり、関係者に確認をするなど、相続放棄をするにあたって当然行うべきことを怠っていた場合は、重大な過失があるとして取消しが認められない可能性があります。

また、上記のような事情があっても、取消しが認められるかどうかはその他の事情も含めて総合的に判断されるため、必ず認められるとは限りません。

錯誤による相続放棄の取り消しは、法律上はできる可能性はありますが、認められるためのハードルは非常に高いと言っていいでしょう。

参考 (錯誤)

第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

引用:民法|e-Gov法令検索 

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現実的には取消しが認められるケースはほとんどない

上記のとおり、錯誤は本人の勘違いによるものなので、本人保護の必要性が低いという事もあり、取消しが認められるためのハードルは非常に高く、それなりの事情があったとしてもかなり難しいでしょう。

一方、詐欺や脅迫の場合は、本人保護の必要性が錯誤に比べて高いため、取消しが認められるためのハードルも錯誤に比べれば低いです。

ただし、詐欺や脅迫による取消しの場合でも、取消しを主張するにあたっては、裁判所に取消原因があったという証拠を提出するなどして、取消しを認めるべき事情がある事を立証する必要があります。

一般的にそのような証拠が残っていることは少ないでしょうから、立証はかなり困難でしょう。

現実的には一度相続放棄の申述が受理されてしまうと、どのような事情があっても取消しが認められる事は稀です。

相続放棄をするにあたっては、事前に十分に調査を行い、関係者とも相談した上で、判断すべきでしょう。

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相続放棄が受理される前なら申述の取り下げはできる

上記のとおり、一度相続放棄の申述が受理されてしまうと、撤回はできず、取消しも基本的には難しいです。

しかし、相続放棄の申述をした後(家庭裁判所に申述書を提出した後)であっても、相続放棄の申述が受理される前であれば、取り下げは可能です。

相続放棄の申述の際には家庭裁判所に申述書等の書類を提出します。そして書類の提出後、おおむね1~2週間ほどで照会書(回答書)が届きます。

この照会書(回答書)を提出するまでは、相続放棄の申述が受理されることはないので、取り下げることは可能です。

すでに照会書(回答書)を提出してしまっている場合は、いつ受理されてもおかしくない状況です。(通常は照会書(回答書)の提出後数日~2週間程度で申述受理が決定されます。)

急いで申立先の家庭裁判所に連絡をして、取り下げをしたい旨を伝え、取り下げの手続きを行いましょう。

相続放棄の取消しの申述手続きの概要

どうしても相続放棄を取り消したいという場合、家庭裁判所に取消しの申立て(申述)を行うことになります。

相続放棄の取消しの申述手続きの概要は以下の通りです。

なお、これまで解説したとおり、取消しが認められるためのハードルは非常に高いので、申立ての際は相続に強い弁護士や司法書士に相談されることを強くおすすめします。

■申立人

相続放棄の申述をした人 又はその法定代理人

■申立先

相続放棄の申述をした家庭裁判所(被相続人の最後の住所地の管轄裁判所)

■申立てできる期間

・追認できる時から6か月以内

・相続放棄の時から10年以内

■申立てにかかる費用

・申立手数料 800円(収入印紙を申立書に貼付して納付)

・連絡用郵便切手 数百円程度

■必要書類

・相続放棄取消申述書

・取消事由があったことを証明する資料等(ケースによって異なります。詳しくは弁護士等にご相談ください。)

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相続放棄は慎重に!迷ったら専門家に相談を!

本記事では、一度認められた相続放棄をなかったことにするための手続き等について解説しました。

相続放棄は、一度受理されてしまうと後で取り消すことは非常に困難なので、後悔しないよう、事前に相続に強い司法書士や弁護士などの専門家に相談の上、慎重に判断することをおすすめします。

また、相続放棄をしてしまったがどうしても取り消したいという方は弁護士等への相談をおすすめします。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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