苦労をかけた子供のために遺言で財産を遺したい【特定の相続人に多くの財産を相続させたいケース】

長女に苦労をかけたのでその子供の学費を出してやりたい。気を付ける事は?

ご相談前の状況

遺言書の作成をご検討中の方からのご相談。

すでにご主人様は亡くなられており、現時点での推定相続人はお子様4人。

お子様のうちご長女様については、当時の経済状況から希望どおり進学させてあげられなかったことを悔やんでいるとのこと。

せめてご長女様のお子様の学費については全面的に支援したいという思いがあり、自分が亡くなった後も確実に希望を実現したいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 苦労をかけた長女の子供の学費の支援のために十分な財産を遺したいが、多額の財産があるというわけではないので調整が難しい。
  • 他の相続人に遺す財産が少なくなるようであれば、遺留分請求のリスクについても検討する必要がある。
  • 一見すると不公平な配分となるため、他の子供から不満が出ないよう、遺言書を作成した理由や遺言者の想いなども遺言書に明記する必要がある。
  • 万が一、亡くなる順番が逆になった場合に備えて、遺言の中で対策しておく必要がある。
  • 財産を貰う方の負担にならないように、亡くなった後の手続きについても対策しておく必要がある。

当事務所からのご提案

一般的に、亡くなった後の財産の分け方は、法定相続分をベースとして、その時点の法定相続人全員の協議によって決めることが多いです。

遺言を遺すことによって法定相続分とは異なる分け方で相続させることが可能ですが、特定の方に多くの財産を相続させる場合、慎重な配慮が必要です。

もし、遺言で貰える財産の額が遺留分(法律上最低限保証されている各相続人の取り分)を下回ってしまうと、多く貰った方に対して、死後に遺留分の請求がされる可能性があります。

遺留分の請求をされてしまうと相続人にとってかなり負担になるので、できるだけ遺留分を下回らないような分け方が望ましいです。

やむを得ず下回る場合でも、遺留分の請求を控えてもらうような配慮や、請求された場合の対策を検討しておくべきです。

今回は、お孫様が複数いることもあり、財産の総額に対してこれからかかる学費が大きな割合を占めるため、相続発生の時期によっては他の方への相続分が遺留分を下回ることが予想されました。

このような場合、他の相続人との関係性や、各自の経済状況(仕事は安定しているか、経済的に不自由していないかなど)が重要になりますが、状況を伺ったところ、他の相続人との関係は良好で、経済的にも皆自立しているとのことでした。

そこで、当事務所で遺言者様の半生、遺言を遺すにあたっての想い等を詳しく伺い、遺留分を下回った場合でも請求はしないで欲しいという強い想いを遺言作成の経緯と共に記した遺言を公正証書で作成することを提案しました。

また、相続が発生した際にご長女様がすみやかに財産を受け取れるように、スムーズな財産承継のための対策もご提案させていただくことになりました。

このように解決しました

  • 当事務所で、遺言者様の半生、遺言を遺すにあたっての想い等を詳しく伺い、ご希望を確実に実現するための遺言書の原案を作成しました。
  • 死後に遺留分請求の問題が生じないよう、今回の相続における遺留分についても確保されていることを確認しました。
  • 遺留分を下回った場合でも請求を控えてもらえるように、ご長女様に苦労をかけた事など、遺言書作成の経緯や想いを付言事項に盛り込みました。
  • 万が一亡くなる順番が逆になったときの対策のため、遺言書には予備的遺言も盛り込みました。
  • 作成した原案をもとに公証人と調整を行い、当事務所の司法書士が証人として立ち会いのもと、公正証書遺言を作成しました。
  • 遺言で当事務所を遺言執行者に指定していただき、遺言書正本をお預かりさせていただきました。
  • 当事務所が執行者として遺言を執り行う事で、相続が発生した際のスムーズな財産承継が可能となり、安心していただくことができました。

担当者からのコメント

このケースのように、特定の相続人の方に多くの財産を遺したいという方は一定数いらっしゃいます。

しかし、法定相続人には遺留分があるので*、単純に特定の方に財産を多く遺すという内容の遺言を作成するだけでは、死後に遺留分を請求されるリスクがあります。

*兄弟姉妹・甥姪が相続人になる場合を除く。

特に遺留分についての対策をしなかった場合、困るのは財産を貰う相続人の方です。

大切な方にそのような負担を負わせることは望んでいないという方も多いのではないでしょうか。

もちろんこのケースのように、やむを得ず遺留分を侵害する内容で遺言を作成するケースもありますが、その場合でも付言事項で遺言作成の経緯や遺留分請求を控えて欲しい旨を記すなどして、請求のリスクを少しでも減らすための対策は必須です。

付言事項は法的効力・拘束力はないので、軽視する専門家もいるのですが、私の経験上、相続人同士の仲が元々険悪でない限り、感情面への働きかけはとても有効です。

遺留分請求は放っておいても誰かが勝手にやってくれるわけではなく、自ら行動を起こし、他の方への請求が必要なことを考えると当然のことです。

特定の方に多くの財産を遺したいが、できれば他の方は遺留分を請求せずに円満に解決してほしいとお考えの方は、遺留分対策を含む相続対策全般に強い専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、残されたご家族が円満相続を迎えるための遺言書作成や生前対策について数多くのサポートの実績がございます。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

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※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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