遺言書に記載されているが取壊し済の建物、相続登記は必要?【遺言書に記載があるが現存しない建物について滅失登記を行うケース】

既に無い建物が遺言書に記載されている…必要な手続きは?

ご相談前の状況

お父様が亡くなられた方からのご相談。

相続人はお子様4人。

お父様は公正証書遺言を残されていたため、遺言に従って相続登記のご依頼を検討されているとのこと。

遺言書の中に、すでに取り壊し済みで現存しない建物が記載されているため、こちらについても他の不動産同様に相続登記が必要かも確認したいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 遺言による登記を申請する場合、遺言書に記載のない不動産が無いか確認する必要がある。
  • 遺言書に記載されているが、すでに現存しない建物についてどうすべきか確認が必要。
  • 登記簿が閉鎖されていない場合、相続登記の他に建物滅失登記が必要になる。

当事務所からのご提案

亡くなった方が遺言書を残されていた場合、基本的には遺言にしたがって手続きを進めることになります。

遺言書が公正証書であれば検認手続きは不要なため、不動産に関しては戸籍謄本等の必要書類を揃えれば登記申請は可能です。

ただし、遺言書には必ずしも所有する不動産すべてが記載されているとは限りません。

特に私道(公衆用道路)は非課税のため、把握していない方が多く、遺言書の記載から漏れてしまう事も珍しくありません。

相続登記を漏らしてしまうと将来的に10万円以下の過料の対象になります。

また、後から登記をしようとしても二次相続の発生等により多大な労力がかかる可能性があります。

このようなリスクを防ぐためには、名寄帳を取得して遺言書に記載された以外の不動産がないか確認すべきです。

名寄帳には固定資産課税台帳に記載されている請求対象者名義の不動産がすべて記載されています。

そのため私道等があっても、同一行政区域内に存在するものについてはほぼ確実に把握することができます。

そこで今回は、相続登記漏れを防ぐために、当事務所で名寄帳の請求を行ってから登記を申請する事になりました。

すでに存在しない建物について必要な手続きとは?

遺言書は作成されてから相続発生までに期間が空くことも少なくありません。

そのため、遺言書作成後に不動産を売却したり、取り壊したりした等の事情により、遺言書に記載された不動産と実際に故人が所有する不動産が異なるという事態が起こり得ます。

このケースでは、遺言書に記載された建物のうちの一つが生前に取り壊し済みで存在しないとのことでした。

このような場合、建物が登記済みかどうかでとるべき手続きが異なります。

まず未登記の場合は基本的に何もすることはありません。

ただし、万が一現存しないにも関わらず固定資産税が課税されているのであれば、役所等に事情を説明して課税を取り消してもらうべきです。

一方、登記がされていて、かつ登記簿が閉鎖されていない場合は、建物滅失登記を行うべきです。

建物滅失登記は、解体等により建物が無くなった場合に建物が無くなったことを登記簿に記録する手続きです。滅失登記がされた登記簿はその後閉鎖されます。

建物滅失登記は建物が存在しなくなった時から1か月以内に申請しなければ10万円以下の過料に処すると定められています。(実際には過料が科せられたケースは無いようです。)

また、建物の登記が残ったままだと、土地を売却する際や建替え等で土地を担保にローンを組む際に支障が出る恐れがあります。

通常は滅失登記をすることが契約条件となるため、すぐに登記ができなければ契約そのものが流れてしまう可能性もあります。

こちらの方が過料以上に大きなデメリットと言えるでしょう。

上記についてご相談者様にご説明したところ、当面売却等の予定は無いものの、後で面倒なことにならないようにこの機会に建物滅失登記を行うことを希望されました。

そこで、当事務所で戸籍収集等を含む相続登記に必要な手続きを全面的にサポートさせていただくとともに、建物滅失登記を担当する土地家屋調査士をお繋ぎさせていただくことになりました。

※建物滅失登記は、権利に関する登記ではなく表題部に関する登記のため、司法書士ではなく、土地家屋調査士の職域です。

このように解決しました

  • 名寄帳の請求を行い、漏れのないように調査を行いました。
  • 戸籍謄本の必要書類の収集・手配を行い、遺言による相続登記を申請しました。
  • 相続登記の完了後、建物滅失登記を担当する土地家屋調査士をお繋ぎし、必要な情報や書類を連携しました。
  • その後、土地家屋調査士により建物滅失登記が申請され、無事完了しました。

担当者からのコメント

相続発生後に遺言書を確認したところ、既に所有していない不動産が記載されていたというのはよくある話です。

取り壊し済みの建物については登記簿上残っていても実害はない事が多く、放置されてしまう方も多いのですが、売却の際や新たに担保を設定する際には、結局建物滅失登記を求められることがほとんどです。

また、表題部登記の過料についても、相続登記の義務化に伴い今後は厳しく適用されるようになる可能性は否定できません。

そのうちやればいいかと思っているうちに、手続きの事をすっかり忘れてしまう方は少なくありません。

しかしいつかやらなくてはいけないのなら相続を機に面倒ごとはすべて片づけておいた方が安心でしょう。

相続をきっかけにすでに現存しない建物の登記が放置されている事がわかったら、相続登記と併せて建物滅失登記も行っておくことをおすすめします。

当事務所では、建物滅失登記を含む相続手続き全般について、数多くのご相談・サポートの実績があります。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

※地目変更登記については、提携の土地家屋調査士をご紹介いたします。

相続登記サポートについてくわしくはこちら

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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