異母兄弟に相続させない方法は?トラブル回避のための対策を徹底解説

著者情報

司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫
年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
著者情報

司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫
年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
「父親には前妻との間の子がいるが、財産を相続させたくない」
「面識のない異母兄弟と、相続でトラブルになりたくない」
異母兄弟がいる方の中には、このような不安を抱える方も少なくありません。
異母兄弟には相続人として父の財産を相続する権利があります。
もし異母兄弟に財産を相続させたくない場合には、生前から対策をとることが重要です。
本記事では、異母兄弟(異父兄弟)の相続に関する基礎知識から親の財産を相続させないための方法、相続におけるトラブルを避ける方法まで詳しくお伝えします。
司法書士田中暢夫一般的な知識の解説にとどまらず、現役の司法書士である筆者の経験に基づく具体的なノウハウを解説しているので参考にされてください。
異母兄弟が自分の相続人となる場合に財産を相続させない方法についても解説しているので、本記事を読めば、異母兄弟に相続させないためにあなたがとるべき行動がわかります。
異母兄弟(異父兄弟)がいる場合の相続関係・法定相続分
民法では、下記のように相続人の優先順位が定められています。
■相続人の相続順位
| 被相続人から見た関係 | 相続順位 |
| 配偶者 | 常に相続人 |
| 子 | 第1順位 |
| 直系尊属(父母、祖父母など) | 第2順位 |
| 兄弟姉妹 | 第3順位 |
※第2順位以降の後順位者は先順位者がいない場合にのみ相続人となる
以下では、親が亡くなった場合に異母兄弟が持つ相続人としての権利について解説します。
親が亡くなり、異母兄弟がいる場合の相続関係

異母兄弟は、父親が亡くなった場合には、子として第1順位の相続人になります。
異母兄弟が父の前妻の子であり、何年も連絡を取っていなくても、子供である以上父親との親子関係は消滅しません。
前妻との子でも後妻との子でも子供という立場は同じなので、法定相続分は子供の人数で均等割りとなります。
また、前妻の子と後妻の子のほかに、配偶者(後妻)がいる場合は、法定相続分は配偶者が2分の1、子供達は2分の1を人数で均等割りとなります。
司法書士田中暢夫なお、父親の前妻や内縁の妻は上記のいずれにも当てはまらないため相続人にはなりません。
婚姻外の子供でも認知されていれば相続人になる

異母兄弟が、愛人など婚姻関係にない女性との間に生まれた子供(非嫡出子)である場合でも、父親から「認知」を受けていれば相続する権利があります。
婚姻関係にあった夫婦の間に生まれた子供(嫡出子)と婚姻外の子供(非嫡出子)がいる場合でも、子供という立場は同じなので、法定相続分は子供の人数で均等割りとなります。
司法書士田中暢夫以前は、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1とされていましたが、2013年の民法改正により、両者の法定相続分は同等になりました。
一方、父親からの「認知」を受けていない場合は父と異母兄弟の間に親子関係は生まれず、相続人とはなりません。
ただし、生前に父親から認知を受けていなかった場合でも、遺言により父親から認知を受けた場合は相続人として遺産を相続する権利を有することになります。(遺言認知・民法第781条第2項)
また、生前の届出又は遺言により父親から認知を受けていない子供であっても、父親が亡くなってから3年以内に「認知の訴え」を提起し、訴えが認められた場合は相続人になります。(死後認知・民法第787条)
異母兄弟の相続権の有無についてまとめると下記のとおりです。
- 異母兄弟が父の前妻など婚姻関係にあった夫婦の間に生まれた(嫡出子)の場合…遺産相続権あり
- 異母兄弟が父の愛人の子供など婚外子(非嫡出子)だが認知(遺言認知や死後認知含む)をされている…遺産相続権あり
- 異母兄弟が父の愛人の子供など婚外子(非嫡出子)で認知(遺言認知や死後認知含む)をされていない…遺産相続権なし
親の財産を異母兄弟(異父兄弟)に相続させない6つの方法
父親が亡くなった場合、異母兄弟は法定相続人となり、遺留分も認められます。
たとえ何年間も会っておらず関係性が希薄な場合でも関係ありません。
しかし、長年父と過ごしてきた子供の立場として、財産を異母兄弟に譲りたくないと考える方もいるでしょう。
では、異母兄弟に父の財産を相続させない、または相続させる財産を可能な限り少なくできる方法はあるのでしょうか。
有効な方法としては以下の6つが考えられます。
①遺言書を作成する
異母兄弟に財産を相続させたくないのであれば、必ず行っておくべき対策は、遺言書の作成です。
父が現在の妻やその妻との間の子に財産を相続させる旨の遺言を遺すことで、遺言書の内容どおりに財産を相続させることができます。
後述する遺留分の問題はありますが、すべての遺産を現在の家族に相続させ、異母兄弟には一切相続させないという内容であっても、法律的には遺言書として有効です。
ただし、トラブル防止のためには異母兄弟に遺留分相当の財産は相続させる内容にすることが望ましいでしょう。
また、遺言の有効性で争いになることを避けるためにも、遺言書は自筆ではなく公正証書で作成することをおすすめします。
■遺留分とは
遺留分とは、一定の法定相続人に保証された遺産の最低限の取り分のことです。
遺言書の内容が兄弟姉妹以外の法定相続人の「遺留分」を侵害している場合は、侵害された相続人は、遺産を多く受取った人に対して、「遺留分侵害額請求」を行う事ができます。
具体的には、遺留分相当額に不足する分について、金銭による支払いを請求することができます。
各相続人に認められた遺留分は下記の表のとおりです。
なお、兄弟姉妹(甥姪)に遺留分はありません。
【法定相続人ごとの遺留分の割合】
| 法定相続人の構成 | 各相続人の遺留分 | |||
| 配偶者 | 子 | 直系尊属 | 兄弟姉妹 | |
| 配偶者のみ | 2分の1 | – | – | – |
| 配偶者と子 | 4分の1 | 4分の1 | – | – |
| 配偶者と直系尊属 | 3分の1 | – | 6分の1 | – |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 2分の1 | – | – | 遺留分なし |
| 子のみ | – | 2分の1 | – | – |
| 直系尊属のみ | – | – | 3分の1 | – |
| 兄弟姉妹のみ | – | – | – | 遺留分なし |
遺留分についてくわしくはこちらをご覧ください。

②生前贈与を行う
現預金や不動産などの財産を、現在の妻やその妻との子供に生前贈与しておけば、相続の対象となる父名義の財産が減るため、異母兄弟に渡る財産を少なくすることができます。
年間110万円以内であれば贈与税がかからないので、少しずつ贈与すれば、現預金の多くを現在の家族に渡すことも可能です。
また、親から子・孫へ生前贈与する場合、教育資金やマイホーム資金等の支援が目的であれば、一定額まで非課税で贈与できる特例も活用できます。
ただし生前贈与は、時期や内容によっては遺留分請求の対象となる可能性があり、せっかくの贈与が無駄になってしまうリスクがあるので気を付けましょう。
詳しくは「4-1.生前贈与の「渡し方」に注意する」で解説します。
■生前贈与は時間との勝負
後述するとおり、相続開始前10年以内の法定相続人への生前贈与は、原則として遺留分算定の対象となるため、遺留分対策としての生前贈与は、早めに実行することが重要です。
また、一般的に生前贈与は相続税の節税対策として行われることが多いです。
相続開始前7年以内の生前贈与は相続税の対象となるため、節税のための生前贈与も、やはり早めに実行する方が効果的です。
さらに、どのような目的であっても認知症等の影響で判断能力が失われた後は、生前贈与はできません。
現在の家族になるべく多くの財産を残したいという事であれば、「生前贈与は時間との勝負」であることを意識し、生命保険など他の対策と組みあわせて、なるべく早いうちから実行することが重要です。
③生命保険を活用する
異母兄弟に財産を相続させたくないのであれば、生命保険の活用も検討しましょう。
生命保険の被保険者死亡時に支払われる死亡保険金は受取人の固有財産になるため、遺産分割する必要がなく、遺留分請求の対象にもなりません。
一時払いの生命保険であれば、健康状態に関わらず90歳ぐらいまで加入できる商品もあるので、父を契約者兼被保険者、受取人を現在の家族とする生命保険への加入を検討しましょう。
ただし、財産の大半を使って生命保険に加入するなどした結果、相続人間で著しい不公平が生じる場合は、例外的に死亡保険金が遺留分請求の対象となる可能性があるので注意しましょう。
詳しくは「4-2.生命保険の「入りすぎ」に注意する」で解説します。
司法書士田中暢夫生命保険は生前贈与と異なり、「相続開始前○年以内の契約は遺留分の対象」という制限はありませんが、認知症になると新たに契約はできないため、やはり早めに対策しておくべきでしょう。
④子の配偶者や孫を養子縁組をする
子供の配偶者や孫と養子縁組をするというのは節税対策で用いられる手法ですが、遺留分対策としても効果があります。
養子縁組をすることで、法定相続人が一人増えるため、異母兄弟の法定相続分・遺留分が相対的に減ることになります。
ただし、養子縁組には下記のような注意点があります。
- 戸籍の変更や名字の変更を伴う場合がある。
- 未成年を養子縁組すると実親が親権者でなくなる。
- 実質的な親子関係形成の意思がない場合、養子縁組が無効になる可能性がある。
- 新たに法定相続人になった方が、相続争いに巻き込まれる可能性がある。
特に、異母兄弟等の関係性が微妙な相続人がいるケースでは、養子縁組の有効性を巡って争いになりやすいです。
司法書士田中暢夫養親養子双方に親子関係形成の意思があり、養子にも財産を渡すつもりであれば問題ありませんが、主に遺留分を減らす目的で行った養子縁組は、より大きなトラブルに発展する恐れがあるので慎重に検討しましょう。
⑤異母兄弟に遺留分放棄をしてもらう
異母兄弟に父の相続について遺留分の放棄をしてもらうと、相続開始後に異母兄弟から遺留分の請求をされる可能性がなくなります。
遺留分の放棄とは、被相続人(父)が生きている間に相続人(異母兄弟)が家庭裁判所へ申立てをおこない、相続開始前に遺留分を放棄する制度です。
ただし、遺留分放棄が認められる条件の一つに、「放棄をしようとする者が放棄に見合うだけの対価(放棄の代償)を得ていること」というものがあります。
具体的には、父から異母兄弟に遺留分相当の金銭を生前贈与するなどして放棄の代償を払う必要があるため、「異母兄弟に財産を相続させたくない」ための対策としては現実的ではないでしょう。
司法書士田中暢夫「結局遺留分相当の財産を渡すなら意味がない」と断念する方も多いですが、「財産の前渡しをしてでも相続開始後のトラブルを避けたい」という事であれば、遺留分放棄は有力な選択肢になります。
現在の家族と前妻の子との間でトラブルにならないように遺留分放棄により対策を行った事例はこちら
遺留分放棄についてくわしくはこちらをご覧ください。

⑥異母兄弟に相続放棄をしてもらう(相続開始後)
異母兄弟が相続開始後に自分の意思で相続放棄をすると、財産を渡す必要がなくなります。
相続放棄をすると「はじめから相続人とならなかったもの」とみなされるため、財産を相続することができなくなります。
しかし、相続放棄は父が亡くなってから(異母兄弟が自分が相続人であることを知ってから)3か月以内に、自ら家庭裁判所に申立てなければなりません。
相続放棄は亡くなってからでないとできず、他人から強制することもできません。
たとえ生前に相続放棄をすることを約束した覚書を作成したとしても、心理的な効果はともかく、法的な拘束力はありません。
司法書士田中暢夫中には自ら相続放棄される方もいますが、異母兄弟の意向も確認できないうちから相続放棄するよう迫ることは、トラブルになる可能性が高いのでやめておきましょう。
異母兄弟(異父兄弟)に相続させないために最も有効な対策とは?
親の財産を異母兄弟に相続させないために最も有効なのは、遺言書を作ったうえで生前贈与や生命保険を活用してなるべく相続させる分を減らす方法です。
まずは親が「現在の配偶者や特定の子供にすべての財産を相続させる」内容の遺言書を作成することは必須です。
これだけでは相続開始後に異母兄弟から遺留分の請求をされる可能性があるので、遺留分を減らすための対策を行います。
父を契約者兼被保険者、受取人を配偶者や特定の子供とする生命保険に加入することで、金融資産を受取人固有の財産に組み替えます。
並行して配偶者や特定の子供・孫などに生前贈与を行い、手元の財産を減らしてきます。
このように遺言に加えて、遺留分請求の対象となる財産を減らす対策を複数行うことで、異母兄弟に相続させる財産をなるべく少なくすることができます。

特定の子供になるべく多くの財産を遺すための対策を行った具体的な事例はこちら

司法書士田中暢夫なお、生前贈与や生命保険による対策はやりすぎると逆効果になることがあります。くわしくは次章で解説します。
生前対策を行う際の注意点
異母兄弟に父の財産を相続させないためには生前の対策が重要ですが、やり方を間違うと効果がないどころかむしろ逆効果になってしまうことさえあります。
以下では、正しく生前対策を実行するための注意点について解説します。
生前贈与の「渡し方」に注意する
生前贈与が、相続開始前10年以内に法定相続人に対してされたものであるなど、一定の条件に該当する場合、遺留分請求の対象となる可能性があります。
具体的には下記に該当する生前贈与は、遺留分侵害額請求の対象となるので注意しましょう。
- 相続開始前1年以内に行われた法定相続人以外への生前贈与
- 相続開始前10年以内に行われた「特別受益」にあたる法定相続人への生前贈与
- 当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行われた生前贈与(相続関係や期間の制限無し)
上記②については「特別受益*」に該当する生前贈与が遺留分請求の対象ですが、特定の相続人だけに遺産の前渡しにあたるような贈与を行った場合は、基本的に遺留分請求の対象となるでしょう。
*特別受益…故人が特定の相続人だけに生前贈与等で与えた利益
また、「贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合*」は、贈与を受けたのが相続人か否かに関わらず、10年以上前に行われた生前贈与であっても、遺留分請求の対象となります。
*財産をあげる側と貰う側双方が、贈与により遺留分を侵害することを知っていた場合
(遺留分を算定するための財産の価額)
第1044条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
参考:民法|e-Gov法令検索
生前贈与が遺留分請求の対象となってしまうと、異母兄弟が請求できる遺留分の金額が増えてしまい、せっかく行った生前贈与の効果が失われることになります。
■異母兄弟に相続させないために行った生前贈与はすべて無駄?
上記のとおり、民法の条文上は期間の制限なく遺留分請求の対象となる可能性があるため、「では、父の財産を異母兄弟に相続させないために行った生前贈与はすべて無駄になってしまうの?」と思われるかもしれません。
しかし、実際には下記の理由から遺留分を請求する側の負担が大きいため、やり方さえ間違えなければ、すべての生前贈与が無駄になる可能性は低いです。
- 裁判になった場合、生前贈与があった事やそれにより遺留分を侵害された事実の立証責任は遺留分を請求する側が負う。
- 金銭の贈与は、10年以上前に行われたものについて客観的に証明することは困難。(金融機関は原則10年間しか取引記録を保存していないため)
- 「当事双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた」ことを客観的に証明することは困難。
上記の理由から、少なくとも相続開始より10年以上前にされた金銭による生前贈与については、遺留分請求の対象から外れる可能性が高いと言えるでしょう。
また、相続開始より1年以上前にされた法定相続人でない親族(子供の配偶者や孫など)への生前贈与は、あからさまに遺留分対策としてされたものでなければ、対象となり辛いでしょう。
司法書士田中暢夫遺留分対策として生前贈与を行うのであれば、贈与する相手も考慮した上で、なるべく早く実行することが重要になります。
生命保険の「入りすぎ」に注意する
死亡保険金の額が遺産総額に占める割合が大きい場合、遺産分割や遺留分請求の対象となってしまう可能性があります。
「2-3.③生命保険を活用する」で解説したとおり、生命保険契約に基づき支払われる死亡保険金は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割の対象にはなりません。
しかし、判例では「保険金受取人である相続人とその他の相続人の間に著しい不公平が生じる場合」は、例外的に死亡保険金が遺産分割や遺留分請求の対象となることがあると示されています。(最高裁判所平成16年10月29日決定)
…保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。…
参考:裁二小判平成16・10・29民集 第58巻7号1979頁 裁判例結果詳細|裁判所
つまり、財産の大半を使って生命保険に加入するなどして、異母兄弟の相続分を極端に少なくしてしまうと、裁判で「死亡保険金も遺産に持ち戻して遺産分割や遺留分の計算を行うように」と判断される可能性があるという事です。
相続人間の不公平が著しいかどうかの判断基準について、死亡保険金の金額が「○○円以上の場合」あるいは「遺産総額の○○%を超える場合」という明確なものはなく、相続人との関係性などの個別の事情により判断されます。
ただ、実務上は保険金額の遺産総額に対する比率が比較的重視される傾向にあり、50%を超えると持ち戻しの対象となる可能性が高いと考えられます。
持ち戻しの対象となる場合、妥当な範囲を超過した部分のみが対象となるわけではなく、保険金全額が対象となるため、注意しましょう。
例:財産総額1億円のうち7,000万円を死亡保険金として受取り、持ち戻しの対象と判断された場合、50%を超える部分(2,000万円)のみが持ち戻し対象ではなく、7,000万円全額が持ち戻しの対象となる。
司法書士田中暢夫生命保険による対策はやりすぎると逆効果になるリスクがあるため、相続実務に精通した専門家に相談の上で、慎重に実行することをおすすめします。
遺言書に付言事項を記載する
亡くなった後、異母兄弟に遺留分侵害額請求をしてほしくない場合、遺言書の付言事項に「なぜ異母兄弟に財産を相続させない内容になっているか」と「遺留分を請求しないでほしいこと」を書いておくことをおすすめします。
付言事項とは、法定遺言事項(財産の分け方など)以外の、遺言書の記載事項のことです。
主に遺言を遺した理由や家族への想いを書くことが多く、法律的な効力はないものの、心情に訴えかけることで紛争を未然に防ぐことが期待できます。
例えば、付言事項で「自身の遺産を少しでも多く遺さなければ、後妻や後妻との子が生活を維持していくのが困難である」など、なぜこのような分け方になったかを伝えることで、遺産を貰えないことに納得してもらえる可能性があります。
また、「不公平な分け方になって申し訳ないが、どうか私の気持ちを尊重して、遺留分の請求はしないでほしい」などと記載しておくことで、遺留分請求を踏みとどまらせる可能性があります。
司法書士田中暢夫付言事項の内容によっては、異母兄弟に反感を抱かせ、遺留分請求を誘発する恐れもあります。
くれぐれも、異母兄弟への非難、苦言などの否定的感情をそのまま書き綴ることはやめておきましょう。
付言事項に遺言者の想いや不公平な分け方になった理由を盛り込み、できる限り配慮した事例はこちら

生前の「相続しない旨の覚書や念書」はやめておく
生前に親と異母兄弟の間で、「財産は受け取りません」「遺留分は請求しません」「財産を相続する権利は放棄します」といった内容の覚書や念書を取り交わすことはやめておきましょう。
生前に作成した「相続しない旨の覚書や念書」に法的効力はなく、例えその時は本心で作成したとしても、相続開始後に翻意して法定相続分や遺留分を請求することができます。
心理的に遺留分の請求をためらわせる効果はあるかもしれませんが、作成を打診することで逆に反感を招く可能性もあり、より大きなトラブルに繋がりかねません。
異母兄弟が相続を辞退する意向であれば、覚書や念書の作成ではなく、遺留分放棄や相続開始後の相続放棄といった正式な制度を利用しましょう。
自分や兄弟の財産を異母兄弟に相続させない方法
異母兄弟がいる場合、父親だけでなく自分自身の相続や、親しい兄弟の相続に関係する可能性があります。
亡くなった人に子どもや親がいない場合は、兄弟姉妹が相続人となるため、異母兄弟も相続人となります。
したがって、異母兄弟に財産を相続させたくない場合には対策をとる必要があります。
自分や兄弟が亡くなり、異母兄弟が相続人になる場合の相続関係

亡くなった人に子供がおらず親も亡くなっている場合は、兄弟が相続人となります。
同じ父親の子である異母兄弟も例外なく相続人となります。
ただし、民法では異母兄弟の法定相続分は両親とも同じ兄弟の半分と定められています。(民法第900条第4項)
そのため、相続人として全血兄弟(両親とも同じ兄弟)と半血兄弟(異母兄弟)がいる場合、異母兄弟の法定相続分は両親とも同じ兄弟の2分の1になります。
遺言書があれば異母兄弟に相続させないことが可能
兄弟姉妹が相続人になるケースで異母兄弟に相続させない方法は、ずばり遺言書を作成することです。
兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書で財産を遺す人を指定しておけば異母兄弟に財産が渡ることはありません。
遺言書は自筆のものでも有効ですが、確実性の面で公正証書遺言の作成をおすすめします。
公正証書遺言であれば少なくとも形式不備で無効になることはなく、作成時の意思能力の有無をめぐり争いになるリスクも少ないからです。
なお、公正証書遺言でも内容に不備があるために異母兄弟の協力が必要になるリスクはあります。
せっかく遺言書を作るなら、確実にトラブルを避けるために、相続実務に精通した専門家に相談の上で作成することをおすすめします。
遺言書のトラブル事例と失敗しないための作成方法についてはこちらをご覧ください。

身近に親族がいない場合は自筆証書遺言書保管制度の併用がおすすめ
兄弟相続のケースで、身近に信頼できる親族がいない場合は、公正証書遺言に加えて自筆証書遺言保管制度を利用することを検討しましょう。
身近に信頼できる親族がいない場合、異母兄弟が遺言書の存在に気付かずに(あるいは意図的に無視されて)相続手続きが行われる可能性があります。
遺言書の有無は相続人以外は基本的に調べようがないので、例えば「自分の死後は公益団体に遺贈寄付する」という内容の遺言書を作成したとしても、希望が実現されないリスクがあるという事です。
このような事態を防ぐ方法として、自筆証書遺言書保管制度の「指定した相続人等への死亡時の通知」という仕組みを利用するという方法があります。
これは、遺言書の保管申請時に、死亡したことを通知して欲しい関係者(相続人、受遺者、遺言執行者など)を指定しておくことで、遺言者が亡くなった際に、法務局から指定された人へ「遺言者の死亡及び遺言書が保管されている事実」が通知されるという仕組みです。

この制度を利用して、遺言執行者や寄付先団体を通知先に指定しておけば、通知により遺言者の死亡を把握し、遺言書の内容を確認することが可能になります。
公正証書遺言には現在のところ同様の仕組みがないので、確実に遺言の内容を実現してほしい場合は、公正証書遺言とあわせて、死亡通知用に保管制度を併用することも検討しましょう。
司法書士田中暢夫なお、遺言書は重複する部分は後の日付のものが有効なので、併用する場合は「保管申請を先に、公正証書を後に」するよう注意しましょう。
異母兄弟(異父兄弟)に知らせず(知られず)に相続手続きはできる?
「異母兄弟に財産を相続させたくない」「疎遠で交流を持ちたくない」等の理由から、異母兄弟に父親が亡くなったことを知られずに相続手続きをしたいという方もいるでしょう。
しかし、ほとんどの場合は異母兄弟に知らせず(知られず)に相続手続きをすることはできません。
以下、ケース別にくわしく説明します。
遺言書がない場合
遺言書がない場合は、異母兄弟に知らせずに相続手続きをすることはできません。
亡くなった人が遺言書を残していない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
相続人である異母兄弟の協力を得るため、必ず連絡を取らなくてはなりません。
遺言書がある場合
遺言書がある場合は、遺言書の種類や内容によって異なります。
自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度の利用なし)の場合
自筆証書遺言がある場合は、異母兄弟に亡くなったことを知られずに相続手続きを行うことはできません。
自筆証書遺言で相続手続きを行うためには、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要があります。
検認の日程が決まると家庭裁判所から相続人全員に通知がされるので、この段階で異母兄弟に知られることになります。
自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度の利用あり)の場合
遺言者が、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合も、やはり異母兄弟に亡くなったことを知られずに相続手続きを行うことはできません。
自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書であれば、検認手続きは不要ですが、相続手続きのために必要な遺言書情報証明書の交付請求をした際に、法務局から相続人全員に通知が送付されます。
自筆証書遺言書保管制度についてくわしくはこちら

公正証書遺言(遺言執行者の指定あり)の場合
遺言書の中で遺言執行者*が指定されている場合、異母兄弟に知られずに相続手続きをすることはできません。
*遺言執行者…相続開始後に遺言の内容を実現するために相続手続きを行う人のこと
公正証書遺言の場合、自筆証書遺言のような公的機関からの通知の仕組みはありません。
しかし、遺言執行者は相続人に対して、遺言書の内容を知らせる法的義務があります。(民法第1007条第2項)
そのため、相続人から積極的に連絡せずとも、遺言執行者からの通知により、いずれ異母兄弟は相続発生の事実や遺言の内容について知ることになります。
(遺言執行者の任務の開始)
第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
参考:民法|e-Gov法令検索
司法書士田中暢夫自筆証書遺言かつ遺言執行者が指定されている場合は、裁判所(又は法務局)からの通知と、遺言執行者からの通知が重ねて行われることになります。
遺言執行者の法的義務について詳しくはこちら

公正証書遺言(遺言執行者の指定なし)の場合
公正証書遺言があり、その中で遺言執行者が指定されていない場合は、異母兄弟に知らせず(知られず)に相続手続きできる可能性があります。
この場合、裁判所や法務局から通知がされることはなく、遺言を作成した公証役場から通知がされることもありません。
また、遺言執行者がいなければ、他の相続人に対して通知をする法的義務はありません。
よって異母兄弟が遺産を全く相続しない内容の遺言書であれば、異母兄弟に知らせずに、最後まで知られることもなく相続手続きを完了できる可能性があります。
ただし、異母兄弟自身が親の戸籍を取得して生死を確認することや、相続人として公証役場で遺言の有無や内容を確認することはできるため、異母兄弟に知られる可能性を完全に排除することはできません。
司法書士田中暢夫なお、遺言執行者が指定されていない場合、金融機関での相続手続きの際に、別途異母兄弟の同意や確認を求められる可能性があります。
異母兄弟に親が亡くなった事を知らせないのは良策とは言えない
上記のとおり、遺言執行者が指定されていない公正証書遺言があれば、異母兄弟に知らせずに相続手続きを完了できる可能性はあります。
しかし、その場合でも異母兄弟に親が亡くなったことを知らせないことが良策とは言い切れません。
まず、親が亡くなった場合、仮にこちらから知らせなかったとしても、何らかのきっかけで異母兄弟が相続発生の事実を知る可能性は高いです。
子供が自分の親の戸籍を取得することは容易で、戸籍謄本を見れば死亡したことはすぐにわかってしまいます。
また、遺留分の請求には時効があるため*、知らせずにやり過ごしたいと考えるかもしれません。
しかし、異母兄弟が死亡の事実を知れば、公証役場で遺言書を確認することができるため、10年もの間やり過ごすのは難しく、精神衛生上も良くはないでしょう。
*遺留分侵害の事実を知ってから1年または相続開始から10年経つと、時効により遺留分の請求はできなくなります。
何より、いくら疎遠であっても、親が亡くなったのに何も知らせないというのは、道義的に問題があります。
知らせなかったことで異母兄弟との関係性が悪化し、より大きなトラブルになるリスクを考えると、知らせないという判断が正しいとは言い切れないでしょう。
司法書士田中暢夫葬儀や納骨については故人の意向を尊重して知らせずに済ませることもあるでしょうが、連絡先が分かるのであれば、時期を見て少なくとも亡くなった事実だけは伝えた方がいいでしょう。
異母兄弟(異父兄弟)に相続させたくない場合は専門家に相談を
ここまで解説したとおり、異母兄弟に親の相続させたくない場合、遺言書をはじめとした生前対策が重要になります。
ただし、生前対策はやり方を間違えると、効果がないどころか逆効果になることさえあり得ます。
特に異母兄弟のように関係性が微妙な相続人がいる場合は、法律的な問題に加え、感情的な面で家族が大変な思いをする可能性が高いです。
たとえ万全な対策を行っても、現在の家族と異母兄弟が接触することで感情的になり、トラブルが起きる可能性はあるので、相続に精通した司法書士などの専門家に相談の上、専門家を遺言執行者に指定しておくことをおすすめします。
司法書士田中暢夫異母兄弟がいるような複雑な相続について経験豊富な専門家は意外と少ないので、ホームページで実際の事例を公開している場合は参考にするといいでしょう。
よくある質問
ここからは、異母兄弟がいる相続のご相談の際によく受ける質問を、Q&A形式で解説します。
まとめ
異母兄弟がいる場合の相続は、相続人同士の複雑な感情が絡む分トラブルになりやすいです。
相続が発生してから異母兄弟に「父の財産を相続しないでほしい」と伝えても、受け入れてもらえる可能性は低く、相手の気分を害して手続きに協力してもらえなくなるリスクがあります。
異母兄弟に財産を相続させたくない場合は、父親に協力して貰い、生前に対策を取っておきましょう。
本記事でも解説したとおり、生前対策は「正しい知識に基づいて行うこと」「出来るだけ早く始めること」が重要です。
生前対策を検討されている方は、お早めに相続に詳しい専門家に相談されることをおすすめします。
記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。
専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

お電話でのお問合せはこちら(通話料無料)
0120-546-069
















































