相続人の中に行方不明者がいる場合はこうすればいい|司法書士が実例付で解説

著者情報

司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫
年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
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司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫
年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
「家族が亡くなったので相続手続きを進めたいけど、相続人の中に行方不明者がいて連絡が取れない…」
亡くなった人の財産は、相続人全員で遺産分割協議を行い、分け方を決める必要があります。
行方不明だからと言って除外することはできず、探し出して協議に参加してもらうか、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
本記事では、行方不明の相続人の探し方や、見つからない場合はどのように相続手続きを進めていけばよいかなどについて、実際の解決事例も交えて詳しく解説します。
司法書士田中暢夫一般的な知識の解説にとどまらず、現役の司法書士である筆者の経験に基づく具体的なノウハウを解説しているので参考にされてください。
また、「現在行方不明の親族がいて、将来の相続に不安がある」という方に向けて生前に取るべき対策も解説しているので、本記事を読めば、行方不明者がいる場合の相続に関する不安や悩みが軽減・解消されます。
行方不明の相続人がいても相続人全員での遺産分割協議が必要
人が亡くなり相続が開始すると、故人の財産をどのように分け合うかを決める「遺産分割協議」を相続人全員で行う必要があります。
たとえ長期間にわたって所在不明で生死すら分からないという場合であっても、相続人のうち誰か一人でも除いて行われた遺産分割協議は無効です。
そのため行方不明の相続人がいる場合は所在を調査し、それでも居所や連絡先が分からなければ、不在者財産管理人の選任や失踪宣告の申立てを検討する必要があります。
司法書士田中暢夫故人が有効な遺言書を残している場合は、その遺言書の内容通りに相続手続きを行うことができます。
行方不明者を含む相続人全員での遺産分割協議は必要ありません。
行方不明の相続人を探す方法
相続人の中に行方が分からない人がいる場合は、次の手順で探します。
まず、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をすべて集めます。
戸籍を取得する中で、行方不明の相続人の記載が出てきたら、その方が除籍(その戸籍からいなくなること)になっているか確認します。
除籍になっているかについては下記の部分で確認できます。
- 最近の戸籍・・・名前の横に「除籍」と記載されている。
- 古い戸籍・・・名前の所に×が付いている。
除籍になっていなければ、その方が記載されている戸籍が現在の本籍地なので、STEP3に飛んで行方不明者の戸籍の附票を請求します。
STEP1で行方不明者が除籍になっていて、理由が「婚姻」「転籍」「縁組」などの場合は、新しい本籍地に戸籍を請求します。
新しい本籍はその人に関する記載事項の一番最後あたりに記載されています。
新しく取得した戸籍を確認し、転籍等によりさらに新しい戸籍が存在する場合は、最新の戸籍(現在の本籍地)に辿り着くまで戸籍請求を繰り返します。
司法書士田中暢夫除籍の理由が「死亡」の場合は、その方の子供が相続人になる可能性があるので、その方の出生から死亡までの戸籍を取得して子供がいるかどうかを調べます。
現在の本籍地がわかったら、その本籍地の市区町村役場に戸籍の附票を請求します。
戸籍の附票には住所の変遷が記載されており、一番新しい住所が住民登録上の現住所という事になります。
■戸籍の附票の見本

司法書士田中暢夫なお、この時点で住民票が抹消(職権抹消)されていることが判明した場合、以後の手順は対応不要です。 くわしくはこちら
連絡先が分からない相続人の住所の調べ方についてくわしくはこちらをご覧ください。

行方不明者の住所がわかったら、相続手続きへの協力をお願いする内容の手紙を出しましょう。
送付した手紙が「あて所に尋ねあたりません」というスタンプを押されて戻ってきた場合は、行方不明者はそこには住んでいない可能性が高いです。
返送された郵便物は、後の手続きで資料として家庭裁判所への提出が必要となるので、必ず保管しておきましょう。
また、郵便物が戻ってこない場合は、行方不明者が転送届を出していることも考えられます。
郵便局の郵便追跡サービスで、配達状況が「転送」になっている場合は、何らかの事情で住民登録上の現住所とは別の場所に住んでいる可能性が高いでしょう。
どの郵便局から配達されたかを確認すれば、現在の居場所のヒントがつかめるかもしれません。
参考
≫郵便追跡サービス|日本郵政
司法書士田中暢夫郵便追跡サービスを利用すれば、到着したか否か、転送されたか否かのほかに、どの郵便局から配達されたかなども確認できるので、普通郵便ではなく書留郵便などの追跡可能な郵送方法で送りましょう。
郵便物が相手に届かず返送されてきた場合、可能であれば行方不明者の住所地に直接行ってみましょう。
近所の方や賃貸物件の管理人などに聞き込みをすれば、足取りを追えるかもしれません。
現地では、表札の有無や郵便受け・ガスメーターの状態、夜間に明かりが灯ることがないかなどを確認し、後の手続きを考えて日時入りの写真で証拠化しておきましょう。
このような調査を尽くしてもその人の所在や連絡先が分からないということであれば、家庭裁判所への申立てを検討する必要があります。
司法書士田中暢夫裁判所での手続きの前提として現地調査が必要な場合を除いて、現地調査は必須ではないので、遠方の場合は無理に行く必要はありません。
司法書士田中暢夫完全に行方不明というわけではなく、「疎遠な関係のため連絡先がわからない」「全く面識がない・長らく音信不通のため連絡の取り方がわからない」という場合は、下記の記事を参考に連絡をとってみましょう。

行方不明の相続人がいるときの相続手続きの進め方
上記の方法で探しても相続人の消息が不明な場合は、以下のような流れで相続手続きを進めていきます。
前章の手順で戸籍を収集し、手紙の送付などを行い行方不明者の所在を調べます。
戸籍は役所窓口での請求のほか、郵送でも請求可能です。
また、直系血族の戸籍については、「戸籍の広域交付制度」を利用すれば、最寄りの市区町村役場窓口で一括取得することができます。
戸籍の広域交付制度など、戸籍の集め方についてくわしくはこちらをご覧ください。

STEP1と並行して、亡くなった人が遺言書を残しているかどうかを確認します。
遺言書は作成形式により調査・探索方法が異なります。
一般的には「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」のどちらかであることがほとんどで、「自筆証書遺言書保管制度」の利用有無を含めて下記の3つに分かれます。
■遺言書の種類と探索方法
| 遺言書の種類 | 調査・探索先 | 調査・探索する方法 |
| 自筆証書遺言 | ・故人の自宅 ・金融機関の貸金庫など | ・故人宅の金庫や引き出し等を探す ・故人の取引先の金融機関に確認する |
| 自筆証書遺言(遺言書保管制度利用) | 全国の法務局 | 「遺言書情報証明書」又は「遺言書保管事実証明書」の交付請求を行う |
| 公正証書遺言 | 全国の公証役場 | 遺言検索システムを利用する |
まずは故人の自宅などを捜索し、見つからなければ公証役場や法務局での調査を行いましょう。
司法書士田中暢夫有効な遺言書がある場合は、行方不明者の関与なく相続手続きを進められる可能があるため、遺言書の有無はできるだけ早めに確認しておきましょう。 くわしくはこちら
遺言書の調査・探索方法についてくわしくはこちらをご覧ください

行方不明者届(旧・捜索願)が受理されていれば、後の家庭裁判所での手続きを進めやすいので、行方不明者届を出せる場合は、現住所に住んでいないことが分かった段階で出しておきましょう。
行方不明者届は、下記のいずれかの警察署で行います。
- 行方不明者が行方不明となった時における住所又は居所を管轄する警察署
- 行方不明者届を届出る方の住所又は居所を管轄する警察署
- 行方不明者が行方不明となった場所を管轄する警察署
届出の際は、行方不明者の戸籍や戸籍の附票、写真、その他行方不明者発見の参考になる資料、届出をする人の身分証等を持参します。
参考
司法書士田中暢夫なお、行方不明者届は事情によっては受理されない場合もあるため、届出は必須ではありません。くわしくはこちら
後の家庭裁判所での手続きや遺産分割協議を行うにあたり必要になるため、故人の財産調査を行います。
主な財産の調査方法等は以下のとおりです。
■相続財産の調査方法
| 財産の種類 | 調査・探索先 | 収集・取得する資料 |
| 不動産 | 自宅、法務局、市区町村役場(東京23区は都税事務所) | 登記済権利証、登記事項全部証明書、固定資産税評価証明書、名寄帳等 |
| 預貯金 | 自宅、各金融機関 | 通帳、残高証明書、取引履歴等 |
| 株式、投資信託等の有価証券 | 自宅、各金融機関、証券保管振替機構 | 残高証明書、異動明細等 |
| 生命保険等の保険契約 | 自宅、各保険会社、生命保険協会 | 保険証書、契約内容の案内、相続評価額証明書等 |
なお、残高証明書等は必ず「相続開始日時点のもの」を取得してください。
相続財産の調査方法についてくわしくはこちらをご覧ください。
戸籍収集や財産調査が完了したら、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てまたは失踪宣告の申立てを行います。
申立ての流れや必要書類についてくわしくは「5.不在者財産管理人選任の申立てとは」「6.失踪宣告の申立てとは」でそれぞれ解説します。
STEP5で行ったいずれかの申立てを経て、家庭裁判所の審判確定後に、相続人全員で遺産分割協議を行います。
不在者財産管理人選任の申立てを行った場合は、裁判所により選任された財産管理人が不在者(行方不明者)の代理人として遺産分割協議に参加します。
遺産の分け方は相続人全員の合意があれば自由に決めて構いませんが、不在者財産管理人が代理する相続人については法定相続分の確保が必要になります。
下記の記事も参考にしてください。

遺産の分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名押印を貰います。
この後の相続手続きでは遺産分割協議書とあわせて印鑑証明書も必要になるので、一緒に提供してもらいましょう。
不在者財産管理人については、印鑑証明書のほかに「不在者財産管理人の選任審判書」「権限外行為許可審判書」も提供してもらう必要があります。
遺産分割協議書の作成方法についてくわしくはこちらをご覧ください。

遺産分割協議書と印鑑証明書が揃ったら、預貯金口座の解約や不動産の名義変更手続きを行っていきます。
金融機関での手続きの際には、発行後6か月以内(3か月以内の場合もあり)の印鑑証明書を求められることがほとんどなので、期限切れによる再取得の手間が生じないよう、速やかに手続きを終わらせましょう。
下記の記事も参考にしてください。



遺産総額が相続税の基礎控除額【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】を超える場合は、相続税の申告・納付を行います。
申告・納付期限は故人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
配偶者控除や小規模宅地等の特例等の税制上の優遇措置を受けるためには、遺産分割協議も10か月以内に終わらせる必要があるので注意しましょう。
【解決事例】ケース別・行方不明の相続人がいる場合の相続
行方不明の相続人がいる場合の相続手続きは、相続をめぐる事情により注意すべき点や進め方が異なります。
実際の事例を見た方が全体像を把握しやすいので、ここでは当事務所が対応した4つの実例をご紹介します。
事例① 行方不明の相続人がいて貸金庫を開けられないケース

【事例の概要】
ご兄弟が亡くなられた方からのご相談。
相続人は兄弟姉妹及び甥姪。
相続人の人数も多く、疎遠な方もいるため、やり取りや意見調整も大変だが、それに加えて行方不明の相続人がいるとのこと。
故人は貸金庫を利用しており中身を確認する必要がありそうだが、金融機関からは貸金庫を開けるには相続人全員の同意が必要と言われ、困り果てて相談にいらっしゃいました。
【問題点】
- 貸金庫の中に把握していない財産に関する資料や遺言書があるかもしれないので、早急に中身を確認する必要がある。
- 亡くなった後に貸金庫を開けるためには、原則として相続人全員の同意が必要になる。
- 遺産分割協議や預金解約等の相続手続きも原則として相続人全員で行う必要がある。
- 相続人の中に行方不明の方がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう必要がある。
- 相続税の申告及び納付が必要なため、相続財産調査、不在者財産管理人の選任、相続預金の解約及び分配を迅速に行わなくてはならない。
【このように解決しました】
上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決に至りました。
- 相続関係を確定させるため、全国の役所に請求を行い、大量の戸籍を迅速に収集しました。
- 並行して各地にいる相続人に一人ずつ連絡を取り、手続きへのご協力をお願いし、同意を貰うことができました。
- 金融機関及び公証役場と調整の上、事実実験公正証書を作成することで行方不明者の同意を得ることなく貸金庫の中身を確認することができました。
- 貸金庫には遺言書は入っていなかったものの、全く把握していない金融機関の通帳等が入っていたため、以後の手続きに大きく役立ちました。
- 不動産や金融機関の調査を迅速に完了させ、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てを行いました。
- 不在者財産管理人として選任された弁護士と連絡を取り、他の相続人とも調整した結果、遺産は法定相続分で分けることになりました。
- 遺産の分け方が決まった後は速やかに遺産分割協議書を作成し、全国にいる相続人に署名捺印をいただくための手配を行いました。
- 遺産分割協議書が揃った段階で迅速に金融機関に書類を提出し、解約手続きを行い、各相続人への分配まで完了させました。
- 並行して相続税申告の準備を進めていたので、申告期限ぎりぎりにはなりましたが、無事相続税の申告及び納付まで完了させることができました。
- 当事務所に全ておまかせいただいた結果、公平かつ迅速に手続きを完了できたため、相続人様の皆様に大変ご満足いただくことができました。
司法書士田中暢夫行方不明の相続人がいる場合に、故人の貸金庫の確認が必要な理由と貸金庫を開ける方法については「7-6.貸金庫がある場合は早めに中身を確認する」で解説します。
この事例の詳細についてはこちら

事例② 外国に帰化した相続人が行方不明のケース

【相談前の状況】
お父様が亡くなられた方からのご相談。
相続人はお子様3人。
相続人の一人であるご相談者様の兄は10年ほど前に海外に渡航し、そのまま渡航先で帰化されたとのこと。
兄と最後に会話したのは数年前で、死亡したことを知らせようとしても連絡がつかないという状況で、今後相続手続きをどう進めればいいかわからず、途方に暮れて相談にいらっしゃいました。
【問題点】
- 遺産分割協議や預金解約等の相続手続きには、原則として相続人全員の同意が必要。
- 相続人の中に行方不明の方がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう必要がある。
- 不在者財産管理人の選任申立ての前提として、通常は行方不明者届を出すが、海外在住者の場合について対応を確認する必要がある。
- 公平な遺産分割のため、相続財産の調査をきちんと行う必要がある。
■行方不明者が外国籍の場合に行方不明者届は出せる?
通常、不在者財産管理人選任申立ての際は、前提として警察に「行方不明者届(旧・捜索願)」を出します。
また、海外在住者の場合は、外務省に「所在調査」の依頼をして連絡先等を確認する必要があります。
【所在調査とは】
海外に在留している可能性が高く、長期(概ね半年以上)にわたってその所在が確認されていない日本人の連絡先等を確認する行政サービス。
三親等内の親族から外務省へ依頼することで、在外公館(現地の日本領事館など)が保有する資料を基に本人へ連絡し、連絡先開示の可否を確認する方法により行われる。
ところが、このケースでは音信不通の相続人は海外在住かつ外国籍ということで、行方不明者届と所在調査のいずれも対象外のため、届出・申出をすることができません。
このような場合でも申立てができないわけではなく、裁判所に事情を説明し、個別に対応を確認しながら手続きを進めることになります。
【このように解決しました】
上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決に至りました。
- 相続関係及び不在者の足取りの調査のため、戸籍謄本等の収集を行いました。
- 故人の預貯金等の財産を調査して、財産目録を作成しました。
- ご依頼者様から行方不明になった経緯を詳しく伺い、裁判所に事情を説明するための事情説明書を作成しました。
- 家庭裁判所に必要書類等の確認を行い、事情説明書やその他書類一式を整え、不在者財産管理人選任の申立てを行いました。
- 不在者財産管理人として選任された弁護士と連絡を取り、遺産の分け方や分配方法についての確認・調整を行いました。
- 遺産の分け方について裁判所の許可が出た後に遺産分割協議書を作成し、各相続人に署名捺印をいただくための手配を行いました。
- 預貯金の解約手続きを行い、各相続人への分配まで完了させました。
- 当事務所にすべておまかせいただいたことで、相続人様の負担なく手続きを終えることができたということで、大変ご満足いただけました。
司法書士田中暢夫外国籍の相続人がいる場合はイレギュラーな対応が求められるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。
この事例の詳細についてはこちら

事例③ 不在者財産管理人を選任した上で不動産の売却を行うケース

【事例の概要】
ご両親が相次いで亡くなられた方からのご相談。
相続人はお子様3人。
相続人であるご兄弟の一人は、数年前に失踪しており、現在も音信不通でどこにいるかもわからないとのこと。
主な遺産である自宅マンションは売却して代金を分ける事を考えているが、行方不明者がいる状況でどのように遺産分割や売却手続きを進めていいかわからず、困り果てて相談にいらっしゃいました。
【問題点】
- 遺産分割協議や預金解約等の相続手続きには、原則として相続人全員の同意が必要。
- 相続人の中に行方不明の方がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう必要がある。
- 不在者財産管理人が遺産分割協議に参加する場合、分割内容について家庭裁判所の許可を得る必要がある。
- 不動産を換価分割する場合は、売却の妥当性含めて家庭裁判所の許可を得る必要がある
- 不在者の相続分含めて売却するには、不在者財産管理人と協力して売却を進める必要がある。
- 不在者財産管理人との調整が必要なため、不動産の売却や財産の分配も含めて公平な第三者に任せたい。
【このように解決しました】
上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決に至りました。
- 相続関係及び不在者の所在調査のため、戸籍謄本等の収集を行いました。
- 家庭裁判所への申立てを行う準備として、相続財産の調査を行い、財産目録を作成しました。
- 必要書類一式を整え、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てを行いました。
- 不在者財産管理人として選任された弁護士と連絡を取り、遺産の分け方や分配方法についての確認・調整を行いました。
- 相続物件に強い不動産会社の協力のもと、指名入札方式により購入希望者を募りました。
- 最高額で入札した業者から買付証明書を取得し、弁護士と調整を行い、売却について家庭裁判所の許可を得られる見込みであることを確認しました。
- 遺産分割について裁判所の許可が出た後に遺産分割協議書を作成し、署名捺印の手配を行いました。
- 最高額で入札した業者と売買契約を締結し、残置物撤去など引き渡しに向けての準備を整えました。
- 代金決済・引き渡しまでに間に合うように相続登記を完了させました。
- 代金決済・引き渡し後に経費等の精算も行い、不在者財産管理人及び各相続人への売却代金の分配を行いました。
司法書士田中暢夫不動産を売却して代金を分ける(換価分割する)場合、売却すること含めて裁判所の許可が必要になるため、売却金額や条件等について調整を行う必要があります。
この事例の詳細についてはこちら

事例④ 実家売却のために失踪した相続人の失踪宣告を申立てるケース

【事例の概要】
お父様が亡くなられた方からのご相談。
亡くなったのは6年前で現在の相続人は妻と子(ご相談者様)の2人。
しかし、相続人であるご相談者様の母は、父が亡くなる1年前に失踪し、以来行方不明の状態が続いているとのこと。
両親と暮らしていた兄も1年ほど前に亡くなり、空き家状態の実家不動産を処分したいが、この状況で手続きをどう進めればいいかわからないという事で相談にいらっしゃいました。
【問題点】
- 故人名義の不動産を処分するには前提として相続人への名義変更が必要。
- 相続人の中に行方不明の方がいる場合、相続手続きを進めるには家庭裁判所に申立てを行う必要がある。
- 行方不明の状況によっては、失踪宣告の申立てを行うことになる。
【このように解決しました】
上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決に至りました。
- 相続関係及び不在者の足取りの調査のため、戸籍謄本等の収集を行いました。
- ご依頼者様から行方不明の状況を詳しく伺い、裁判所に事情を説明するための事情説明書を作成しました。
- その他の必要書類を揃え、家庭裁判所に失踪宣告の申立てを行いました。
- 申立て後、調査官による事情聴取や公示催告などが行われ、申立てから8か月後に失踪宣告の審判が出ました。
- 審判確定後、不在者の住所地の役所に失踪届を提出し、戸籍に「死亡とみなされた日」が記載されました。
- 法務局に相続登記の申請を行い、亡父の名義から唯一の法定相続人であるご依頼者様の単独名義に変更することができました。
- その後、無事に実家を売却できたという事で、大変お喜びいただけました。
司法書士田中暢夫相続関係その他の事情によっては、失踪宣告の要件を満たしていても、あえて不在者財産管理人選任申立てを選択することもあります。詳しくは「7-8.どちらの方法を選ぶかは慎重に判断する」で解説します。
この事例の詳細についてはこちら

不在者財産管理人選任の申立てとは
不在者財産管理人選任の申立てとは、家庭裁判所に申立てを行い、行方不明者(不在者)に代わってその財産を管理する者を選任してもらう制度です。
この制度を利用すると、不在者財産管理人と他の相続人との間で遺産分割協議をすることが可能になり、行方不明者がいることで滞っている様々な手続きを進めることができるようになります。
以下、不在者財産管理人選任申立ての概要や手続きの流れ等についてくわしく解説します。
不在者財産管理人選任申立ての概要
不在者財産管理人選任申立てに必要な書類や費用など、手続きの概要は以下の通りです。
■申立てできる人
- 利害関係人*
- 検察官
*不在者以外の共同相続人は利害関係人に該当します。
■申立先
不在者の「従来の住所地(住民票に記載の住所地)」又は「居所地(継続して居住していた場所)」を管轄する家庭裁判所
管轄の裁判所は下記の裁判所ホームページで確認できます。
■申立てに必要な費用
- 申立手数料 800円(収入印紙を申立書に貼付して納付)
- 連絡用郵便切手 数千円程度*
*郵便切手の額は裁判所によって異なるため申立先の家庭裁判所に確認してください。
なお、「各地の裁判所の裁判手続利用ページ一覧」から管轄を選択して、リンク先の「郵便料及び予納金一覧(家庭裁判所)」から確認することもできます。
■予納金
30万円~100万円程度
申立時には必要ありませんが、申立後に予納金を納付します。
予納金の金額は事案の複雑さに応じて裁判所が決定します。納付不要とされる場合もあります。
※「Q.不在者財産管理人選任の申立ての際の予納金は還ってこない?」を参照。
■必要書類
| 書類 | 備考 | |
| 1 | 不在者財産管理人選任申立書 | 裁判所HPからダウンロード可能 |
| 2 | 不在者の戸籍謄本 | 本籍地の市町村役場で取得 |
| 3 | 不在者の戸籍附票 | 本籍地の市町村役場で取得 |
| 4 | 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票 | 候補者を立てない場合は不要 |
| 5 | 不在の事実を証する資料 | ・警察に行方不明者届を出した際の受理証明書又は受理番号 ・「あて所に尋ね無し」で返送された封筒コピー ・現地に出向いた際の写真 ・不在者が行方不明になってから現在までの経過や調査内容等を記載した事情説明書など |
| 6 | 不在者の財産に関する資料 | ・財産目録 ・預貯金等の通帳の写し、残高証明書など ・登記事項証明書、固定資産税評価証明書など |
| 7 | 不在者と申立人の利害関係を証する資料 | 相続関係を証明する戸籍謄本一式,法定相続情報一覧図など |
■申立てから選任までにかかる期間の目安
2~3か月程度*
*行方不明の状況や相続をめぐる事情のほか、裁判所の繁忙状況により異なります。
ご自身で申立てを行う場合は、下記の裁判所ホームページをご確認ください。
不在者財産管理人選任申立ての流れ
遺産分割協議を行うために不在者財産管理人を選任してもらう場合の、事前準備から選任、その後の遺産分割協議までの流れは下記のとおりです。
- 戸籍謄本や不在者に関する資料等の必要書類を集める。
- 家庭裁判所に申立てを行う。
- 家庭裁判所による審理が行われる。
- 裁判官により選任の審判がされる。
- 不在者財産管理人による不在者の財産調査等が行われる。
- 不在者財産管理人により権限外行為許可申立てが行われる。
- 許可審判後、不在者財産管理人と共同相続人との間で遺産分割協議を行う。
申立ての際に、財産管理人の候補者として親族等などを挙げることもできますが、必ずしも候補者から選任されるとは限りません。
遺産分割協議を行うために選任する場合は、家庭裁判所指定の弁護士等の専門職が選任されることが多いです。
不在者財産管理人が選任される場合はもちろん、審理の結果選任されない場合も、家庭裁判所から申立人に結果が通知されます。
司法書士田中暢夫遺産分割協議は財産の処分行為にあたるため、家庭裁判所の権限外行為許可を得る必要があります。
詳しくは「7-7.不在者財産管理人が選任された場合、不在者の法定相続分の確保が必要」で解説します。
失踪宣告の申立てとは
失踪宣告とは、行方不明者が下記のいずれかに当てはまる場合に、家庭裁判所の審判により法律上「死亡したものとみなす」制度です。
- 7年以上生死不明の状態にある(普通失踪)
- 戦争・震災などの危難に遭遇し、危難が去った後1年以上生死不明の状態にある(特別失踪)
失踪宣告の審判がされると、行方不明者は死亡したものと取り扱われるため、相続関係に変化が生じます。
その相続人全員が遺産分割協議をすることによって、残された遺族は財産を自由に処分することが可能となります。
以下、失踪宣告の申立ての概要や手続きの流れ等についてくわしく解説します。
失踪宣告申立ての概要
不在者財産管理人選任申立てに必要な書類や費用など、手続きの概要は以下の通りです。
■申立てできる人
利害関係人
※「Q.亡父の相続人である行方不明者には子供がいるが、兄弟である自分が失踪宣告の申立てを行うことはできる?」参照
■申立先
不在者の「従来の住所地(住民票に記載の住所地)」又は「居所地(継続して居住していた場所)」を管轄する家庭裁判所
管轄の裁判所は下記の裁判所ホームページで確認できます。
■申立てに必要な費用
- 申立手数料 800円(収入印紙を申立書に貼付して納付)
- 連絡用郵便切手 数千円程度*
- 官報公告料 5298円(裁判所の指示後に納付する)
*郵便切手の額は裁判所によって異なるため申立先の家庭裁判所に確認してください。
なお、「各地の裁判所の裁判手続利用ページ一覧」から管轄を選択して、リンク先の「郵便料及び予納金一覧(家庭裁判所)」から確認することもできます。
■必要書類
| 書類 | 備考 | |
| 1 | 失踪宣言の申立書 | 裁判所HPからダウンロード可能 |
| 2 | 不在者の戸籍謄本 | 本籍地の市町村役場で取得 |
| 3 | 不在者の戸籍附票 | 本籍地の市町村役場で取得 |
| 4 | 失踪を証する資料 | ・警察に行方不明者届を出した際の受理証明書又は受理番号 ・「あて所に尋ね無し」で返送された封筒コピー ・現地に出向いた際の写真 ・不在者が行方不明になってから現在までの経過や調査内容等を記載した事情説明書など |
| 5 | 不在者と申立人の利害関係を証する資料 | 戸籍謄本等 |
■申立てから審判までにかかる期間の目安
8か月~1年程度*
*最低3か月の公告期間がかかるほか、行方不明の状況や裁判所の繁忙状況により異なります。
ご自身で申立てを行う場合は、下記の裁判所ホームページをご確認ください。
失踪宣告の申立ての流れ
失踪宣告の申立ての、事前準備から審判確定、その後の遺産分割協議までの流れは下記のとおりです。
- 戸籍謄本や不在者に関する資料等の必要書類を集める。
- 家庭裁判所に申立てを行う。
- 家庭裁判所による調査が行われる。
- 家庭裁判所により官報公告が行われる。
- 裁判官により失踪宣告の審判がされる。
- 審判確定後、市町村役場に失踪届を提出する。
- 戸籍に失踪宣告(死亡とみなされた日)が記載される。
- 失踪宣告を踏まえた相続人全員で遺産分割協議を行う。
失踪宣告の申立てを受けた家庭裁判所は、親族等への聞き取りや登録情報機関への確認等の独自の調査を行います。
調査終了後、一定期間(普通失踪の場合は最低3か月)を定めて「失踪に関する届出の催告」という公告が行われます。
公告は家庭裁判所により行われ、官報のほか裁判所の掲示板にも掲示されます。
公告期間満了までに生存の届出がない場合は、裁判所は失踪宣告の審判を下します。
失踪宣告がされても自動的に行方不明者の戸籍は変更されないので、審判確定後10日以内に行方不明者の本籍地又は申立人の住所地である市区町村の役場へ失踪届の提出が必要となります。
司法書士田中暢夫普通失踪の場合、家庭裁判所が判断した「最後に生存が確認できた日」から7年経過した日が「死亡とみなされた日」として戸籍に記載されます。
行方不明の相続人がいる場合の注意点
行方不明の相続人がいる場合は、正しい理解のもとに順序立てて手続きを進めていく必要があります。
以下では、手続きを進めるにあたり必ず確認しておくべき点と、トラブルを避けるためのポイントについて解説します。
遺言書の有無の確認は最初に行う
行方不明の相続人がいる場合は、相続手続きを進める最初の段階で必ず遺言書の有無を確認しておきましょう。
有効な遺言書がある場合は、その内容に従って手続きを進められるため、基本的に相続人全員で遺産分割協議を行う必要はありません。
所在調査や裁判所の手続きなどの面倒な手続きが一切不要になる可能性があるので、早めに確認しておきましょう。
遺言書の種類や探し方については、「遺言書を探す」を参考にしてください。
司法書士田中暢夫なお、見つかった遺言書が自筆証書遺言であり、かつ遺言書保管制度を利用したものでなければ、相続手続きを進めるにあたり遺言書の検認手続きが必要になります。
遺言書の検認についてくわしくはこちら
郵送による所在調査は必ず行う
行方不明者の住民登録上の住所が判明したら、「郵送による所在調査」は必ず行っておきましょう。
行方不明者に関する裁判所の手続きでは、「不在の事実を証する資料」又は「失踪を証する資料」を提出する必要があります。
行方不明者の住所宛に手紙を送ったが、居住していないため「あて所に尋ねあたりません」というスタンプを押されて返送された手紙(封筒のコピー)が上記の資料にあたります。
■住民票が抹消されている場合の対応
自治体の調査により不居住の事実が確認された場合、住民票が職権により抹消(職権消除)されていることがあります。
その場合、住民登録上の住所がないため手紙の送付は不要ですが、代わりに職権消除された住民票(又は戸籍の附票)を資料として提出することになります。
現地調査が必要な場合がある
相続人の中に行方不明者がいる場合に、必ずしも現地調査が必要なわけではありません。
ただし、下記に当てはまる場合は、家庭裁判所への申立ての際に現地調査を行っておく必要があります。
- 不在者財産管理人選任申立てを行う場合に、不在者の住所宛の手紙が届いた(返送されない)場合
- 失踪宣告の申立てを行う場合に、不在者の住民票が残っている(消除されていない)場合
現地調査は誰が行っても問題ないので、遠方の場合は近くに住む親族などに確認してもらいましょう。
費用はかかりますが、現地調査を司法書士などの専門家に依頼することもできます。
なお、探偵に依頼しての調査までは求められません。
司法書士田中暢夫現地調査の方法については「可能であれば現地に行って確かめる」を参考にして下さい。
行方不明者届は出せるなら出しておく
「行方不明者届を出す」で解説したとおり、行方不明者届(旧・捜索願)は、現住所に住んでいないことが分かった段階で出しておくといいでしょう。
行方不明者届が受理されている場合は、家庭裁判所に申立てを行うにあたり、行方不明者届受理証明書(又は受理番号)を提出することになります。
特に不在者財産管理人選任の申立ての際は、裁判所から提出を促されることが多いです。
届出後の捜索により発見されることもあるので、出せるなら早めに出しておきましょう。
相続財産の調査は早めに行う
故人の財産調査は早めに行っておきましょう。
不在者財産管理人選任の申立てを行うにあたっては、「不在者の財産に関する資料」を裁判所に提出する必要があります。
不在者の財産には、「不在者が相続する予定の財産」も含まれるため、相続財産の価額等がわかる資料を収集し、相続財産目録を作成する必要があります。
相続財産の調査は各相続人が単独で行えるので、行方不明者の所在調査などと並行して早めに進めておくといいでしょう。
なお、不在者の固有財産については調査が難しいことも多いですが、選任審判後に不在者財産管理人が自ら調査するので、申立時は不明でも大丈夫です。
主な相続財産の種類や調査方法については「相続財産の調査を行う」を参考にしてください。
司法書士田中暢夫失踪宣告の場合も、後に相続人全員で遺産分割協議を行う際に対象財産を把握する必要があるため、やはり財産調査は早めに行っておきましょう。
貸金庫がある場合は早めに中身を確認する
事例①のように、故人が金融機関に貸金庫を持っている場合、出来るだけ早く中身を確認しましょう。
貸金庫の中には、遺言書や預金通帳などの相続に関する重要な資料が入っている可能性があります。
特に遺言書が入っていた場合、先述のとおり、今後の相続手続きが大幅に楽になる可能性があるため、できるだけ早く貸金庫の中身を確認すべきです。
ただし、貸金庫の開扉し中身を確認するには原則として行方不明者含む相続人全員の同意が必要になります。
この点は、「公証人に立会ってもらい、貸金庫の中身を確認した公証人がそれを公正証書にする方法(事実実験公正証書)」により、行方不明者の同意が無くても貸金庫を開けることが可能です。
司法書士田中暢夫事実実験公正証書の作成によって貸金庫の中身を確認するためには、金融機関に事情を説明し理解を得る必要があるため、相続実務に精通した専門家に相談しましょう。
事実実験公正証書についてくわしくはこちらをご覧ください。

不在者財産管理人が選任された場合、不在者の法定相続分の確保が必要
不在者財産管理人が選任された場合の遺産分割協議は、少なくとも不在者に法定相続分は相続させる内容でなければ成立しません。
不在者財産管理人が遺産分割協議を行うことは財産の処分行為にあたるため、家庭裁判所の権限外行為許可を得る必要があります。
権限外行為許可を得るにあたっては、家庭裁判所に遺産分割案を提出する必要がありますが、行方不明者にとって不利な(法定相続分を下回る)案では許可は得られません。
司法書士田中暢夫不在者財産管理人が選任された場合は「行方不明の相続人の取り分をゼロにして、他の相続人で財産を分け合う」などの自由な遺産分割が出来る訳ではないので注意しましょう。
どちらの方法を選ぶかは慎重に判断する
不在者財産管理人選任の申立てを行うか、失踪宣告の申立てを行うかは慎重に判断する必要があります。
失踪宣告の申立て要件を満たしている場合、当然に不在者財産管理人選任申立ての要件も満たすので、どちらかの手続きを選択することになります。
この点、不在者財産管理人の方は遺産分割協議における不在者の法定相続分の確保や、財産管理人との調整が必要であることを考慮すると、失踪宣告の方が自由度が高く、スムーズに相続手続きを完了させることができるように思われます。
しかし、行方不明者に配偶者や子供がいる場合、失踪宣告により死亡したとみなされた結果、代襲相続や二次相続が発生し、新たに相続人が出現することになるので注意が必要です。
新たな相続人との間で遺産をめぐりトラブルになることが懸念されるのであれば、あえて不在者財産管理人選任の申立てを選択するということもあり得ます。
また、行方不明者の家族にとっては「死亡とみなされる」ことに対する心理的な抵抗があるかもしれません。
どちらの方法をとるかは、親族間で十分に話し合ったうえで慎重に判断しましょう。
司法書士田中暢夫親族関係のほか、財産状況によっても適切な方法は変わってくるため、相続に精通した専門家にも相談の上、判断することをおすすめします。
相続税の申告が必要な場合は早めに着手しないと間に合わない
行方不明者に関する裁判所での手続きが必要な場合、事前調査や準備を含めると、遺産分割協議成立までに最低でも6~8か月はかかるため、相続開始後すぐに動き出さなければ相続税の申告期限に間に合わない可能性があります。
遺産総額が基礎控除額を超える場合は、10か月の期限内に遺産分割協議を行い、誰がいくら相続するかを確定した上で、相続税の申告・納税を完了させなくてはなりません。
行方不明の相続人がいて遺産分割協議ができないとしても、期限が延長されるわけではありません。
申告期限を過ぎると小規模宅地等の特例などの減税効果の大きい特例が使えなくなるほか、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課されるので、一刻も早く調査等に着手することが重要です。
特に失踪宣告を行う場合は、裁判所での手続きだけでも10か月を過ぎる可能性が高いため、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出するなどの対応も検討すべきでしょう。
相続税の申告書の提出期限までに相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が分割されていない場合において、その分割されていない財産を申告書の提出期限から3年以内に分割し、配偶者の相続税の軽減、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例、特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例又は特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けるためにその旨を届け出る手続きです。
引用:B1-5 相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続|国税庁
なお、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する場合、いったん法定相続したものとして相続税の申告・納税を行う必要があるため、納税資金の確保が問題になる可能性があります。
司法書士田中暢夫相続税の申告が必要な場合、適切な対応を取らなければ、相続人全員に大きなデメリットが生じるため、すみやかに専門家に相談の上、対応することをおすすめします。
遺産分割協議と相続税申告期限の関係についてはこちらをご覧ください。

行方不明者がいる場合は生前に遺言書を!
推定相続人の中に、行方不明者や長年連絡が取れない人がいる場合は、生前に遺言書を作成しておきましょう。
たとえば、自分の親が亡くなった場合に共同相続人となる兄弟と現在連絡が取れないケースです。
親に頼んで遺言書を作成してもらうことで遺産分割協議が不要になるため、相続開始後に兄弟を探し出す必要や裁判所での手続きを行う必要はなくなります。
また、遺言で遺言執行者*を指定しておけば、他の相続人の協力を得ることなく、執行者が単独で相続手続きを行うことができます。
*遺言執行者…遺言の内容に従い相続手続きを行う権限を持つ者
ただし、せっかく遺言書を準備しても、財産の記載漏れや様式に不備があると相続手続きに使用できず、元の木阿弥になってしまいます。
そのようなトラブルを防ぐためにも、遺言書を作成する際には相続に詳しい専門家に相談のうえ、不備の無い遺言書を作成しましょう。
失敗しない遺言書作成の秘訣についてくわしくはこちらをご覧ください

行方不明の相続人がいる場合は専門家に相談を
ここまで解説したとおり、行方不明の相続人がいる場合は、相続をめぐる事情や行方不明の事情に応じて適切な方法を選択する必要があります。
裁判所の手続きだけでなく、行方不明者の所在調査や相続財産の調査なども手間がかかるため、普通の方が自分たちだけで判断して手続きを進めるのは至難の業でしょう。
司法書士などの専門家であれば、所在調査から遺産分割協議、相続財産の分配まで一連の手続きをすべて代行することが可能です。
ただし、司法書士や弁護士であっても、そのすべてが相続実務に精通しているわけではありません。
特に行方不明者がいる場合の相続手続きは、同種の他の事例の経験の有無で対応力に大きな差が出るので、実務経験の豊富な専門家に相談することが重要です。
司法書士田中暢夫行方不明の相続人がいるようなケースの経験が豊富な専門家は意外と少ないので、ホームページで実際の事例を公開している場合は参考にするといいでしょう。
相続で司法書士法人東京横浜事務所が選ばれる理由はこちら

よくある質問
ここからは、行方不明の相続人がいる相続のご相談の際によく受ける質問を、Q&A形式で解説します。
まとめ
行方不明の相続人がいる場合は、不在者財産管理人選任の申立てか失踪宣告の申立てを経た上で、遺産分割協議を行う必要があります。
相続の事情や行方不明の事情に応じた適切な方法の選択が必要なうえ、複雑な手続きとなるため、相続に精通した専門家に依頼するのも賢明な選択肢と言えるでしょう。
すでに相続が発生していて、行方不明の相続人のために手続きが難航している方は、一度専門家へ相談されることをおすすめします。
また、「相続は発生していないけれど現在親族の中に音信不通の方や行方不明者がいる」という場合は、残される家族のためにも生前に遺言書を作成して対策しておきましょう。
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