将来揉めないよう父の相続の際に母に遺言書を作成して欲しい【将来の紛争防止のために遺産分割と併せて遺言書を作成してもらうケース】

亡父の遺産分割の条件として母に遺言書を書いて欲しい…

ご相談前の状況

お母様の遺言書作成についてのご相談。

先日亡くなられたお父様の遺産について、自宅不動産は居住中の兄が相続する代わりに、母所有のマンションは居住中のご相談者様が将来相続するという事で話がまとまったとのこと。

相続人である母、兄、妹(ご相談者様)の関係は良好だが、万が一にも揉めないように、お母様に遺言書を書いて欲しいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 子供たち二人で、母の相続についての遺産分割協議書や覚書を作成しても、相続が発生していない以上、法的拘束力は無い。
  • 母を含む3名で将来母から相続することを条件とする遺産分割協議書を作成しても、条件部分については無効とされる恐れがある。
  • 遺言書を作成するのであれば、なるべくコストは抑えつつ、将来の手続きの負担も少なくしたい。

当事務所からのご提案

両親のうちどちらかが亡くなった時の遺産分割協議で、子供の一人が多めに相続する代わりに、もう一人の親の相続の際には他の子供が多く相続するという内容で合意することはよくあります。

今回のように父所有の不動産と母所有の不動産に、子供たちがそれぞれ暮らしているケースはその典型例です。

このような場合、将来発生する相続について、相続人間であらかじめ遺産分割協議書や覚書等を作成しておけば大丈夫と考える方が多いのですが、実際にはこれらの書面に法的拘束力はありません。

発生していない相続についての関係者の合意は、どのような形式によっても無効です。

被相続人(今回で言うとお母様)を含めた三者間の合意でも、やはり無効とされる可能性があります。

※内容によっては死因贈与契約と解する余地はあるかもしれませんが、微妙なところです。

当事者の心理に影響を与えはするかもしれませんが、そもそも相続の順番が逆になる可能性もあり、確実に当事者が相続人になるとは限りません。

合意内容を確実に実現して欲しい場合、遺言書や死因贈与契約書の作成という方法が考えられます。

どちらも自分の死後に財産を特定の方に承継させるというものですが、遺言書は遺言者が単独で作成し、撤回も単独で可能です。

一方、死因贈与契約書は贈与者と受贈者の契約であり、書面を交わした場合は一方的な撤回はできないという違いがあります。

今回は、お母様が心変わりして撤回する可能性はまずない事、相続発生後の手続きについて遺言書の方が確実に履行しやすい事を考慮して、お母様に遺言書を作成していただくことを提案しました。

また、遺言書は公正証書で作成することで死後の手続きが大幅に簡略化されます。

本人の意思の担保のためにも当事務所では原則として公正証書での作成をおすすめしていますが、今回はできるだけ遺言書作成にかかるコストを抑えたいという希望がありました。(公正証書遺言の作成には公証人手数料が少なくとも数万円かかります。)

そこで今回は、コストを抑えつつ、相続発生後の手続き負担を軽減するために、「自筆証書遺言書の保管制度」を利用することを提案しました。

自筆証書遺言書の保管制度とは?

自筆証書遺言書の保管制度とは2020年7月に開始された制度で、大まかに言うと、自分で書いた遺言書を一定の手続きを踏んで法務局に預けると、半永久的に保管してくれる制度です。

制度を利用する場合、遺言者本人が法務局に出向いて遺言書の保管申請を行います。

本人の生存中は、相続人を含めて本人以外は誰も遺言書の有無や内容を確認することはできません。

預けられた遺言書は本人の死後も長期間保管されるため、紛失したため手続きができないという心配はありません。

さらに、保管制度を利用した遺言書は本来必要な「遺言書の検認」が不要という、手続き面でのメリットもあります。

今回は、この自筆証書遺言書保管制度を利用するために、当事務所で遺言書の案文作成、法務局に提出する保管申請書等の作成、作成当日等の同行等、全面的にサポートさせていただくことになりました。

このように解決しました

  • 財産状況や財産承継についてのご意向等を詳しく伺い、基本的にご希望通りの内容で遺言書の原案を作成しました。
  • 作成した原案をもとに自筆で遺言書を書いていただき、完成した遺言書に不備がないかチェックを行いました。
  • 保管申請書等の保管制度の利用に必要な書類の手配を行いました。
  • 法務局に保管申請の予約を行い、当日は法務局に同行してサポートしました。無事、保管手続きが完了しました。

担当者からのコメント

自筆証書遺言書の保管制度は、比較的新しい制度ですが、作成のためのコストが安く済み、保管時に遺言書の法的要件についても最低限のチェックがされるので、今後は利用する方も大きく増加すると思われます。

ただし、保管制度を利用しても、その遺言によって将来的にどのようなトラブルが予想されるかなどのチェックやアドバイスを受けることはできません。

今回のように遺産分割協議と併せて遺言書を作成する場合は、法的要件に不備がない事だけではなく、内容に問題がないかのチェックは必須でしょう。

遺言書に不備があったばかりにトラブルになってしまう事態は、遺言者はもちろん関係者の誰も望んでいないはずです。

家族全員が納得する円満相続を実現するためにも、自筆証書遺言書の保管制度を利用する際は、相続に精通した司法書士などの専門家のサポートを受けて作成することを強くお勧めします。

当事務所では、残されたご家族が円満相続を迎えるための遺言書作成や生前対策について数多くのサポートの実績がございます。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

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※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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