賃貸物件で同居家族が死亡した時に相続放棄する場合の注意点は?【賃貸アパートで同居していた父について相続放棄するケース】

賃貸アパートで同居していた父の相続を放棄したい。

ご相談前の状況

お父様が亡くなられた方からのご相談。

相続人は奥様とお子様1人。

故人にはカーローンの残債があるほか、信販会社数社から督促状が届いているため相続放棄を検討しているとのこと。

家族3人で賃貸アパートに住んでいたため、父名義の賃貸借契約の解約の他、室内の整理や家財の処分についてどこまで対応していいかわからないという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 経済的価値のあるものを処分してしまった場合、相続を承認したものとして相続放棄できなくなる可能性がある。
  • 未払いの公共料金や賃料等については、相続放棄をしても日常家事債務の連帯責任として、配偶者が負担しなければならない可能性がある。
  • 賃貸借契約の解約の際には、敷金の取り扱いについて気を付ける必要がある。

当事務所からのご提案

相続放棄をする場合、亡くなった方の持ち物の処分については十分に気を付ける必要があります。

銀行の預貯金の引き出しや、経済的価値のある動産(自動車や貴金属など)の換金行為があると、いわゆる処分行為として「法定単純承認事由(民法第921条)」に該当し、原則として相続放棄ができなくなってしまうためです。

また、このケースのようにアパート等の賃貸物件で同居中の家族が亡くなった場合、賃貸借契約の解約や未払賃料や公共料金の支払いには注意が必要です。

相続放棄した方は、はじめから相続人ではなかったとみなされるため(民法第939条)、故人名義の契約の解約や未払債務の支払いについては、本来応じる必要はありません。

しかし配偶者については、法律上「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方はこれによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。(後略)」と定められているため(民法第761条)、同居していたアパートの家賃や公共料金については、相続放棄をしてもなお支払い義務を負うものと考えられます。

また、やむを得ず相続人が賃貸借契約を解約する場合、以下の2点については気を付ける必要があります。

  • 未払賃料や原状回復費用を支払う場合、故人の預貯金や現金から支払ってはいけない。
    ※自動的に引き落とされた分は問題ありません
  • 敷金や火災保険の返戻金が戻ってくる場合も、受け取ってはいけない。

特に2については、少しでも家財の処分費用等に充てたいと思われるかもしれませんが、敷金返戻金は本来契約者本人が受け取るべきものであり、相続財産となるため、相続放棄する場合は受け取ることはできません。

今回、ご相談者様方は現在の住まいを退去して引っ越しされる予定でしたので、上記の点に気を付けていただくようご説明しました。

その上で、当事務所で戸籍収集、申述書等の作成および提出代行、照会書の回答支援、申述受理後の債権者への通知等、相続放棄に関する手続きを一貫してサポートさせていただくことになりました。

このように解決しました

  • 手続きに必要な戸籍等を収集し、申述書と一緒に裁判所に提出しました。
  • 申述書提出後に、裁判所から届く照会書(回答書)について回答のサポートをさせていただきました。その結果、無事相続放棄は認められました。
  • 相続放棄が認められた後、相続放棄申述受理証明書の取得及び大家への通知もサポートさせていただきました。

担当者からのコメント

相続放棄をするにあたり、亡くなった方の残した家財等の処分に悩まれる方は多いです。

特に賃貸物件に同居していた場合、どこまでが故人の財産かの判断が難しい上、退去する場合は家主や管理会社から早期の室内整理を求められることになるでしょう。

このケースでは、幸いにも経済的価値のありそうな動産等はほぼなかったため、夫婦の日常家事債務の連帯責任を果たすため、賃貸借契約を解約し、室内整理を行う事になりました。

しかし、相続時の状況によっては、故人の持ち物には一切手を付けず、賃貸借契約の解約や室内整理も一切行わないという選択肢もあり得ます。

とは言え、どの行為が相続放棄に影響を与えるかの判断は、知識のない方には難しいでしょう。

自己判断で行動した結果、取り返しのつかない事態を招くことの無いように、相続放棄を検討中の方は、相続放棄に精通した専門家に相談の上で実行しましょう。

当事務所では、賃貸物件で亡くなった方の相続放棄について数多くのご相談・サポートの実績がございます。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

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※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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