お金がない!遺産分割前に相続預金を受け取る事はできる?【相続預貯金の仮払い制度を利用するケース】

故人の口座から葬儀費用を払うつもりだったのに凍結されてしまった!

ご相談前の状況

お母様が亡くなられた方からのご相談。

相続人はご相談者様と代襲相続人である孫の二人。

故人の口座から葬儀費用等の支払いをするつもりで金融機関に死亡事実を伝えたところ、口座が凍結されてしまったとのこと。

とりあえず葬儀費用は立替て支払ったものの、手元資金に余裕がないのでなんとか早急に預貯金を受け取る事はできないかと相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 被相続人の口座凍結を解除するためには、原則として相続人全員の同意のもと手続きを行う必要がある。
  • 後からトラブルにならないように、財産調査をしっかり行い、全容を確認した上で遺産分割を行う必要がある。
  • 相続人同士が疎遠な関係のため、遺産分割協議書等の必要書類の手配に時間がかかる。
  • 手続きの負担の偏りや公平性の面で後から不満が出ないように、財産の分配も含めて公平な第三者に任せたい。

当事務所からのご提案

亡くなった方の預貯金口座は、金融機関が口座名義人死亡の事実を確認した時点で凍結されてしまいます。

凍結後は家族であっても原則として引き出すことはできません。葬儀費用支払いのためという理由であっても同様です。

凍結を解除して口座のお金を使うためには、戸籍謄本等の必要書類をそろえ、相続人全員の同意のもと、相続(解約)手続きを行うのが原則です。

遺言執行者が選任されているなどの事情があれば別ですが、このケースでは通常の相続手続きが必要でした。

預貯金の相続手続きは書類提出から1~2週間程度で完了することがほとんどなので、相続人全員が親しい関係であればすぐに書類をそろえて提出すれば済む話です。

しかしこのケースでは相続人同士は相続発生までほとんど交流が無い間柄でした。

連絡が取れないというわけではなく、すでに遺産は半分ずつ分ける事で合意はしていたものの、遺産分割協議書への署名捺印については、財産調査をしっかりと行い納得した上で行いたいとお互いに希望していました。

また、手続きの負担がどちらかに偏ったり、公平性の面で疑問が生じたりしないように、相続手続きや財産の分配は公平な第三者に任せたいと希望されていました。

戸籍収集や財産調査が完了し遺産分割協議が成立するまでには少なくとも2か月はかかるため、上記の希望を優先すると早期に解約して財産を分配するのは難しい状況でした。

このような場合、「相続預貯金の仮払い制度」を利用することで、早期に預貯金の払い戻しを受けることが可能です。

遺産分割前の払い戻しが可能に!相続預貯金の仮払い制度とは?

「相続預貯金の仮払い制度」とは、その名のとおり亡くなった方の預貯金の一部について払い戻し(仮払い)を受けることができるという仕組みです。

払い戻しを受けるためには相続関係を証明する戸籍謄本等を提出する必要がありますが、相続人全員の同意は不要で、相続人の一人から請求が可能です。

払い戻し可能な金額には制限*がありますが、今回のように葬儀費用の支払いのためのお金であればよほど高額でない限り賄えるでしょう。

*一つの金融機関につき、「死亡時の残高×法定相続分×3分の1」又は「150万円」のいずれか低い方。

今回は遺産は半分ずつ分ける事で合意は取れており、葬儀費用についても遺産分割の際に清算するという事で話がまとまっていました。

そこで、当事務所で戸籍謄本等の必要書類を早急に集め、相続預貯金の仮払い制度利用の手続きを行う事になりました。

このように解決しました

  • 「相続預貯金の仮払い制度」利用のため、相続関係を証明する戸籍謄本を取得し、その他の必要書類と一緒に金融機関に提出を行いました。
  • 金融機関への書類提出後、2週間程度で指定の口座への払い戻しが行われました。
  • その後、不動産や預貯金などの相続財産について漏れなく調査を行い、財産目録を作成して相続人の皆様に開示しました。
  • 財産目録を確認した上で、改めて合意が取れたため、遺産分割協議書を作成し、それぞれの署名捺印をいただきました。
  • 相続預金の解約及び分配についても代行させていただき、どちらかに負担が偏ることなく、公平かつ迅速に手続きを完了させました。

担当者からのコメント

「相続預貯金の仮払い制度」は、民法改正により2019年7月1日から開始された比較的新しい制度ですが、他の相続人の関与なく払い戻しが可能なので、今回のように相続人同士の関係性が微妙な場合などには効力を発揮するでしょう。

ただし、他の相続人の関与が不要という事は、裏を返せば本来貰えないはずの方が勝手に請求する事も出来てしまうという事です。

例えば、遺言書で特定の相続人が金融資産を引き継ぐと定められているケースでは、他の相続人は仮払いを受ける権利はありません。

しかし遺言書の存在を知らなければ(あるいは知った上でわざと)仮払い請求がされてしまう可能性があります。

払い戻しがされた後は金融機関に異議を唱えても意味がなく、相続人同士で解決するしかありません。

任意に返却に応じてくれなければ取り戻すために裁判などが必要になってしまいます。

相続人間で余計なトラブルを抱えないためにも、仮払い制度を利用する際は、事前に他の相続人へ説明しておいた方が無難ですが、一般の方が制度についてきちんと説明するのは難しいでしょう。

疎遠な間柄であればなおさらです。

相続預貯金の仮払い制度の利用を検討している方は、本当に利用が必要かどうかも含めて、相続手続きに精通した専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、面倒な相続手続きをすべておまかせいただける「相続まるごとおまかせプラン」をご提供しており、相続預貯金の仮払い制度についても数多くのサポート実績がございます。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

相続まるごとおまかせプランについてくわしくはこちら

疎遠な相続人がいる場合の相続手続きの進め方についてはこちらの記事をご覧ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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