自分で作成した遺産分割協議書、登記に使用できる?【自作の遺産分割協議書の記載不備のため改めて作成が必要なケース】

自分で作成した遺産分割協議書、完璧だと思ったのに不備があった!

ご相談前の状況

ご両親が亡くなられた方からのご相談。

お母様の相続人はお子様二人。

数年前に亡くなったお父様名義の建物について名義変更を行っていなかったため、この度お母様名義の土地と一緒に行なう事にしたとのこと。

お父様の相続人としてはご相談者様きょうだいと亡くなったお母様の他、前妻との間にお子様が一人いるが、すでに連絡を取り合意は取れている。

署名捺印済みの遺産分割協議書と印鑑証明書もそろっているので、登記をお願いしたいという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 遺産分割協議書の記載上、不動産の特定が不十分な場合、そのままでは登記申請に使用できない可能性がある。
  • 私道等の非課税物件は課税明細に記載されないため、協議書の記載から漏れている可能性がある。
  • 遺産分割協議書を再度作成する場合、相続人全員から実印で押印してもらう必要がある。

当事務所からのご提案

亡くなった方の不動産の名義変更(相続登記)をするにあたり、特定の相続人の名義に変更するためには、原則として相続人全員が署名捺印した遺産分割協議書を添付する必要があります。

遺産分割協議書には法定の様式はありませんが、登記申請で使用する協議書については、少なくとも以下の記載が必要になります。

  • 被相続人(亡くなった方)の情報
  • 不動産の情報
  • 遺産分割を行った旨と不動産の取得者(取得割合)
  • 協議成立の日付
  • 相続人全員の署名(記名でも可)及び実印での押印

遺産分割協議書は誰が作成したものでも問題は無く、相続人の代表者が作成した書面に全員で署名捺印したものであっても登記申請は可能です。

ただし、上記の情報に記載不備があるとそのままでは登記に使えない可能性があります。

特に司法書士等の専門家以外が作成した場合、②の不動産の情報が不正確な事がよくあります。

このケースでも、建物について家屋番号ではなく住所が記載されているなど不動産の特定が不十分と思われる箇所がいくつかありました。

幸い、前妻のお子様含め相続人全員から再度協力して貰う事は可能とのことだったので、当事務所で改めて登記申請用の遺産分割協議書を作成することを提案しました。

また、自分で作成した遺産分割協議書の場合、登記すべき不動産の記載漏れがあることが少なくありません。

特に私道(公衆用道路)は非課税のため、課税明細(固定資産税の納付書)に記載されておらず、漏らしてしまうケースが多いです。

不動産の記載漏れを防ぐためにはいくつかの方法がありますが、確実なのは管轄の役所に「名寄帳」(土地家屋名寄帳)を請求する方法です。

名寄帳には固定資産課税台帳に記載されている請求対象者名義の不動産がすべて記載されています。

そのため同一行政区域内の不動産については名寄帳を取得すればほぼ確実に把握することができます。(共有名義の不動産は個別に請求する必要があります。)

今回は名寄帳の取得等の調査は行っていないとのことでしたが、持参された権利証等の資料を見る限り協議書に記載のない私道が存在しているものと思われました。

そこで、不動産の記載漏れのない正確な遺産分割協議書を作成するために、当事務所で名寄帳の請求を行う事になりました。

このように解決しました

  • 父母両方について名寄帳の請求を行い、漏れのないように調査を行いました。
  • 調査の結果、隣地と共有になっている母名義の不動産が判明しました。
  • 新たに判明した不動産含めて正確に記載した遺産分割協議書を作成し、相続人の皆様から署名捺印をいただきました。
  • 戸籍謄本等の必要書類と一緒に協議書を提出し、登記を申請しました。その後父母両方について、無事名義変更が完了しました。

担当者からのコメント

登記は本人申請を原則としているので、ご自身で申請される方も一定数いらっしゃいます。

最近ではインターネットで自分で登記する方法を公開している事務所もあるので(当事務所でも公開しています)、頑張れば自分一人で完了させることも不可能ではないでしょう。

しかし、相続登記については、戸籍を集め読み解く必要があるため、慣れない方には相当な労力を伴う作業となります。

また、今回のように遺産分割協議書に不備があり相続人全員から印鑑を貰いなおすことになれば、自分だけではなく他の方にも迷惑がかかります。

さらに、抵当権や仮登記の消し忘れ等相続登記と一緒に申請しておくべき登記についても確認しておくべきですが、一般の方が登記簿を見て正確な情報を読み取るのは難しいでしょう。

確かに自分で申請すれば司法書士の報酬はかかりませんが、インターネットで調べたり、法務局に何度も相談しに行ったりする手間と時間を考えると、司法書士に依頼した方がよほど経済的とも考えられます。

また、法務局では申請書類がそろっているかは確認してくれますが、遺産分割協議書の記載方法や不動産の漏れや他に必要な登記があるかまでは教えてくれません。

当事務所のご依頼者でも、最初は自分で申請しようとしたが結局は司法書士に依頼することにしたという方は多くいらっしゃいます。

よほど時間が有り余っていて、経験のためにも自分でやってみたいという方以外は、登記の専門家である司法書士に相談することをおすすめします。

当事務所では、自作の遺産分割協議書を使用しての相続登記についても、数多くのご相談・サポートの実績があります。

ご依頼を検討中の方のご相談は無料です。

※遺産分割協議書や登記添付書類のチェックは、登記申請のご依頼をいただいた場合のみ対応しております。無料チェックは行っておりません。

相続登記サポートについてくわしくはこちら

遺産分割協議書の作成方法やひな型についてはこちらの記事をご覧ください。

相続登記を自分でやる方法についてはこちらの記事をご覧ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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