新型コロナウイルスの影響で相続放棄がしたくてもできなかった・・・【相続放棄を検討したが、3か月以内にできなかったケース】

新型コロナウイルス蔓延のため手続きができず、3か月以上経ってしまった!

ご相談前の状況

伯母様が亡くなられた方からのご相談。

伯母様に子供はいないと聞いており、親もすでに亡くなっているため、兄弟姉妹や甥姪数人が相続人になるはずとのこと。(ご相談者様方は甥姪)

伯母とはそれほど親しい関係ではなかったため、財産は他の相続人が受け取るものと思っており、また、家族の介護や仕事でそれぞれ忙しく、相続手続きに煩わされたくないという思いもあり、相続放棄を検討していたとのことでした。

ところが検討している間に新型コロナウイルスが蔓延してしまったため、それどころではなくなり、情勢が落ち着いたころにはすでに3か月が過ぎてしまっていたとのこと。

その後、故人の家の整理をしていた際に督促状が見つかったため、不安になり、今からでも相続放棄できないかという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 相続放棄は、基本的に3か月以内に裁判所に申し出る必要があるが、相談時点ですでに相続開始から3か月以上が経過していた。
  • 故人とはそれほど親しかったわけではないため、財産や債務の状況について不明。
  • 新型コロナウイルスの感染拡大もあり財産・債務状況を調査するだけの余裕もない。
  • 仕事や介護で忙しく、自分たちで相続放棄手続きを行うことが難しい。

当事務所からのご提案

相続放棄は通常、借金を引き継がないために行われることがほとんどです。

ただ、プラスの財産が多い場合にも、故人と疎遠だったので関わりたくない、他の相続人が貰うべき、相続手続きに煩わされたくない、等の理由で行われることがあります。

放棄の理由がどのようなものであっても、期限内に裁判所に申し立てを行えば、基本的に相続放棄は認められます。

しかし、相続放棄の期限である相続発生日から(又は死亡の事実を知ってから)3か月を過ぎてしまうと、相続を承認したとみなされるため、原則として放棄は認められません。

今回のケースも、亡くなったこと自体は相続発生から数日後に知っていたため、当初は相続放棄は難しいように思われました。

しかし、お話をよく伺ってみると、以下のような状況であったことがわかりました。

  • 伯母の相続関係についてはっきりと確認したことはなく、戸籍を調査したこともないため、もしかして先順位の相続人(子供など)がいるかもしれない。
  • 戸籍を調査しようとしたところ、新型コロナウイルスの感染拡大により非常事態宣言が発令されたため、中断せざるを得なかった。
  • 伯母とは多少交流はあったものの、そこまで親しいわけではなかったので、財産・債務の状況については知らなかった。
  • 督促状を発見するまでは債務があることを知らなかった。
  • プラスの財産についてはすべて他の親しい相続人が相続すると思っており、ご相談者様方はまったく受け取っていない。

上記のような状況だったため、期限内に相続放棄ができなかったとしても仕方がないものと思われました。

相続放棄の期限は原則として相続発生を知った日から3か月以内となっていますが、実は期限内に相続放棄をしなかったことについて相当な理由がある場合は、3か月以上が経過していても放棄が認められることがあります。

そこで、当事務所で上記のような事情を説明し、相当な理由があったことを認めてもらうための上申書(事情説明書)を作成し、相続放棄の申述書と一緒に提出させていただくことを提案しました。

また、仕事や介護で忙しく、自分たちで手続きを行うことが難しいとのことでしたので、当事務所で戸籍収集、裁判所から届く照会書の回答支援等、相続放棄に関する手続きを一貫してサポートさせていただくことを提案しました。

このように解決しました

  • まず、ご相談者様方が相続人であることを確かめるために戸籍調査を行いました。
  • 戸籍調査の結果、先順位の相続人がいないことが確認できたため、ご相談者様方が確かに法定相続人であることがわかりました。
  • 期限内に相続放棄をしなかったことにつき相当な理由があったことを裁判所に認めてもらうための上申書を作成しました。
  • 相続放棄手続きに必要な戸籍等の収集や申述書の作成も代行し、上申書と一緒に裁判所に提出しました。
  • 申述書提出後に、裁判所から届く照会書(回答書)について回答のサポートをしました。その結果、無事相続放棄は認められました。

担当者からのコメント

このケースのように、3か月以内に相続放棄を行うことを検討していたものの、諸事情によって期限内に申し立てできなかったという方はたまにいらっしゃいます。

期限内に財産・債務の調査が終わらない場合は、相続放棄の熟慮期間伸長の申立てを行って、3か月の期間を延ばしてもらうという方法もあります。

しかしこのケースのようにそもそも戸籍調査自体ができない状況では、それも難しいでしょう。(熟慮期間伸長の申立ての際には戸籍謄本や住民票除票等が必要です。)

今回のように、3か月の期限内に相続放棄ができなかったことにつき、相当な理由がある場合には例外的に3か月経過後の放棄が認められる可能性があります。

しかし単に仕事が忙しかったといった理由だけでは、相当な理由があったとは認められないため、相続放棄をあきらめてしまう方もいらっしゃいます。

また、弁護士や司法書士などの専門家であっても、それほど相続放棄に詳しくない方に相談すると、今回のようなケースでは放棄できないと言われることもあるかもしれません。

実際には裁判所に丁寧に事情を説明することで、相続放棄が認められる可能性があるにも関わらず、です。

もちろん事情を説明しても必ず相続放棄が認められるとは限りませんが、少なくともプラスの財産を一切受け取っていないという事であればチャレンジしてみる価値はあります。

ただ、一般の方はもちろん、専門家であっても相続放棄の実務経験が乏しければ、裁判所を納得させるだけの書面を作成することは難しいでしょう。

相続放棄手続きは、一度却下されてしまうと再度のチャレンジはできないので、3か月を過ぎてしまっているけれど相続放棄をしたい、という方は、相続放棄の実務経験豊富な司法書士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

当事務所ではこれまでに3か月経過後の相続放棄について、数多くのサポート実績があり、そのほとんどが受理されております。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

スピーディに相続放棄をお手伝い!くわしくはこちら

3か月経過後の相続放棄についてはこちらの記事もご参照ください。

※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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