遺言執行者の通知義務、音信不通の兄弟への連絡は必要?【遺言執行者が指定されているが相続人の一人が音信不通のケース】

この事件の担当者

司法書士法人東京横浜事務所 代表/司法書士 田中 暢夫
開業以来相続一筋。これまでに担当した事件は1000件を超える。
この事件の担当者

司法書士法人東京横浜事務所 代表/司法書士 田中 暢夫
開業以来相続一筋。これまでに担当した事件は1000件を超える。
ご相談前の状況
お母様が亡くなられた方からのご相談。
相続人は子供3人。
故人は公正証書遺言を遺しており、長女(相談者)と二女にすべて相続させる内容で、遺言執行者として長女が指定されているとのこと。
もう一人の相続人である長男は、30年以上音信不通で、昔長男が作った借金を母が代わりに支払ったということもあり、相続させない旨が遺言書に明記されている。
遺言執行者として何をすればいいか、特に音信不通の長男への連絡が必要かどうかわからないという事で相談にいらっしゃいました。
問題点

- 公正証書遺言の中で遺言執行者が指定されているが、遺言執行者の義務や職務をどのように果たせばいいかわからない。
- 相続人である長男は長年音信不通で、現在の正確な住所や連絡先がわからない。
- 長男への連絡が必要な場合、出来れば直接連絡を取ることは避けたい。
- 仕事が忙しいため、自分で遺言執行を行うだけの時間を確保するのは難しい。
- 相続税の申告が必要なため、遺言書に記載のある財産だけでなく、他の財産についても漏れがないように調査を行う必要がある。
当事務所からのご提案
亡くなった方が遺言書を遺していた場合、基本的にはその内容に沿って相続手続きを行うことになります。
また、遺言の中で遺言執行者が指定されている場合は、他の相続人の同意なく、遺言執行者が単独で手続きを行うことができます。
ただし、遺言執行者には法定の義務があり、また、明文の規定は無いものの当然に行うべきとされている職務があります。
義務を怠った場合、相続人や受遺者から責任を追及され、最悪の場合損害賠償責任を負う可能性があります。
今回、相続人の一人である長男は、昔事業に失敗して多額の借金を抱え、母や他の家族に迷惑をかけた負い目から、30年以上音信不通ということでした。
遺言書には長男に相続させる財産は無いと明記されており、正確な住所や連絡先もわからないことから連絡を取る必要はないのではとお考えでした。
しかし、遺言執行者には相続人への通知義務(民法1007条)と相続財産目録の交付義務(民法1001条)が定められています。
遺言書で財産を貰わないとされた相続人にも遺留分はあるため、遺留分を請求するかどうか判断する機会を与えるためにも、これらの義務は果たす必要があります。
■遺留分とは
法律上最低限保証された相続人の取り分。遺言により遺留分を侵害された相続人は、多く財産を貰った人に対して遺留分の請求(遺留分侵害額請求)を行うことができる。
そこで、ご相談者様に遺言執行者の立場から委任をいただき、相続人への通知や財産目録の作成・交付の他、戸籍収集、相続預金の解約・分配手続きなど遺言執行者の職務全般を代行させていただくことを提案しました。
また、今回は遺産の額が高額で相続税の申告が必要なため、後で税務署から指摘を受けないように、漏れなく財産調査を行う必要がありました。
遺言書には不動産や金融機関などが個別に明記されていましたが、「その他一切の財産」との記載もあり、明記されたもの以外に財産がないかを調べる必要がありました。
そこで当事務所で、把握している以外の財産がないかも含めて、財産調査を行うことになりました。
このように解決しました

- 金融機関への連絡・残高証明書の請求や、名寄帳の請求など、相続財産の調査を行いました。
- 把握している以外の財産がないか確認するために、ほふりの調査も行いました。
- ほふり調査の結果、把握していない証券口座の存在が判明したため、個別に残高証明書や取引明細等の請求を行い、漏れのないように調査を行いました。
- 調査結果をもとに、相続財産目録を作成しました。
- 音信不通の相続人の戸籍の附票を取得し、現在の住所を確認しました。
- 遺言執行者の代理人として、相続人への通知と相続財産目録の交付を行いました。
- 音信不通の相続人への郵送物の配達状況を確認したところ、「お届け済」となったものの、その後「保管期間経過」により返送されてきました。
- 取得した証明書類は税理士に共有し、無事相続税の申告も完了しました。
- 相続預金の解約・分配や不動産の名義変更等も遺言執行者の代わりに行い、ご依頼者様の負担なく、全ての遺言執行・相続手続きが完了しました。
担当者からのコメント
遺産分割協議や相続手続きは相続人全員の同意が必要なため、音信不通の相続人がいる場合でも除外して進めるわけにはいきません。
なんとか所在を調査して連絡を試み、それでも反応がない場合は、遺産分割調停・審判などの裁判所での手続きを検討する必要があります。
ただし、本件のように有効な遺言書があれば、相続人全員で遺産分割協議を行う必要はありません。
また、遺言執行者が指定されていれば、音信不通の相続人の同意や協力がなくても相続手続き進めることができます。
遺言執行者には通知義務や相続財産目録の交付義務がありますが、これらは基本的には住民登録上の住所に対して行えばよく、相手方が確実に受領することや内容を確認することまでは求められません。
遺言執行者に特定の資格は不要で、本件のように相続人の一人を指定することもできますが、知識のない一般の方が滞りなく職務を行うのは難しく、責任も重いのであまりおすすめできません。
また、せっかく遺言書を作成したにもかかわらず、内容に不備があったために手続きに使用できず、他の相続人の協力が必要になってしまったというケースはたまにあります。
遺言書の不備は、本件の様に音信不通の相続人がいるようなケースでは致命的なミスとなりえます。
いざ相続が発生した際に、大切な家族に過大な負担をかけてしまうことを避けるためにも、遺言書作成の際は、遺言執行及び相続実務に精通した専門家に相談の上、必要に応じて専門家を遺言執行者に指定しておくことをおすすめします。
当事務所では、遺言執行者として、または遺言執行者の代理人としてこれまでに多数の遺言執行・執行サポートの実績があり、音信不通の相続人がいる場合の遺言執行手続きについても数多くのご相談・ご依頼をいただいております。
ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。
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