故人が連帯保証人になっている債務、どう処理すればいい?【連帯保証債務について、相続を機に解消するケース】

夫の財産を相続したら、連帯保証人も引き受けなければならない?

ご相談前の状況

ご主人様が亡くなられた方からのご相談。

ご夫妻には子供がいなかったため、相続人は妻と母の2名。

遺産として不動産や預貯金等のプラスの財産があるほか、故人の母が主債務者で故人が連帯保証人になっているアパートローンがあり、どう処理するのがいいか相談したいという事でいらっしゃいました。

問題点

  • 連帯保証債務について現在の債務残高と権利関係を把握する必要がある。
  • 現在も債務が残っている場合、他の相続人と交渉して連帯保証債務を引き受けてもらう必要がある。
  • 債務の免責的引受については、債権者である金融機関の承諾を得る必要がある。
  • 万が一金融機関が承諾しない場合に備え、相続人間で保証債務が履行された場合について取り決めをし、書面を交わしておく必要がある。
  • 債務以外にも、不動産や金融資産などについて話し合いを取りまとめ、遺産分割協議書を作成する必要がある。
  • 公平性の担保のためには、相続人以外の第三者に相続手続き全般を任せるのが望ましい。

当事務所からのご提案

相続によって引き継ぐのはプラスの財産だけではありません。

故人に借金などの負の遺産があるときは、それを含めてすべての財産を引き継がなければなりません。

ただし、相続人間で遺産分割協議を行い、特定の方が債務を引き継ぐ旨の合意(免責的債務引受)をして、債権者がそれを承諾すれば、債務承継者以外の方は負担を免れることができます。

ただ、このケースでは故人は母が所有するアパートローンの連帯保証人になっていました。

法定通りであれば相続発生によって妻と母が連帯保証人の地位を引き継ぐことになります。

一方、合意により母のみが連帯保証人の地位を引き継ぐ場合、主債務者と連帯保証人が完全に同一人物になってしまうため、実質的に連帯保証契約が意味のないものになってしまいます。

通常であれば、このような債権者にとって不利になる変更について金融機関が承諾する可能性は低いです。

ただし、残債の額やこれまでの返済状況、他の連帯保証人の有無、不動産の担保価値等を総合的に判断した結果、問題がないと判断されれば、承諾がもらえる可能性はあります。

また、債権者の承諾がもらえない場合も当事者間の合意としては有効です。

今回は、親→子の順番で亡くなる事を想定していずれアパートを引き継ぐ予定の子供を連帯保証人にされていたのですが、残念ながら相続発生の順番が逆になってしまったため、母から死亡した子供にアパートが引き継がれることは無くなりました。

そうなると当然死亡した子供の配偶者に引き継がれることもありません。

たまたま相続発生の順番が逆になったばかりに、自分と関係ない債務の連帯保証人にならなくてはいけないというのは、さすがに酷な話です。

そこで、まずは当事務所で義母様に連絡を取り、現在の返済状況等について確認を行う事を提案しました。

そして、すぐに完済の予定が無ければ連帯保証人から外してもらう旨の同意を取り付け、遺産分割協議書とともに、合意内容について別途書面を取り交わす事を提案しました。

また、話し合いの前提として不動産や金融資産について財産調査を行い、財産目録を作成・開示して、公平な形で話し合いができるようサポートさせていただくことになりました。

このように解決しました

  • 義母様に連絡を取り、現在の返済状況等について確認を行い、連帯保証人の処理について説明いたしました。
  • 金融機関や不動産について漏れなく調査を行い、財産目録を作成して相続人の皆様に開示しました。
  • 話し合いの結果、法定相続ベースで財産を分けるとともに、連帯保証債務については義母様が引き受ける事で話がまとまりました。
  • 協議内容をもとに遺産分割協議書を作成し、署名捺印をいただきました。
  • 債務引受について金融機関が承諾しない場合に備え、相続人間での約束を取りまとめた書面を作成し、義母様の署名捺印をいただきました。
  • 協議成立後、金融資産の解約・分配や不動産の名義変更等も代行させていただき、公平な形で相続手続き全般を完了させることができました。
  • その後、義母様の方から債権者に連絡を取っていただき、承諾が得られたため、正式にご相談者様は連帯保証人から外れることになりました。

担当者からのコメント

被相続人の債務の中でも取り扱いが難しいのが保証債務です。

主債務者の返済が滞らなければ連帯保証人に請求が来ることはないため、その存在に気付きづらいのですが、返済が滞ってしまうと債権者からの請求を拒むことはできません。

通常の債務であれば、債務を引き継ぐ人がその分多くの財産を引き継ぐなどして調整する事ができますが、保証債務については将来履行が確実とは言えないため、悩ましいところです。

結局は、主債務者と連絡を取り、返済状況等を把握したうえで、個別に判断するしかないのですが、知識のない方が適切に取り計らう事はなかなか難しいでしょう。

後になって債権者から請求が来て大きなトラブルになることの無いように、故人が連帯保証人になっていた場合は、相続の専門家に相談の上、適切に処理する事をおすすめします。

当事務所では、面倒な相続手続きをまるごとおまかせいただける「相続まるごとおまかせプラン」をはじめとしたサービスを提供しており、相続債務の承継や債務引受についても数多くのサポート実績がございます。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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