司法書士が教える相続手続きの流れと効率よく進めるためのコツ【図表豊富でわかりやすい】

著者情報

司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫
年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
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司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫
年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
「相続が起こったら、どんな手続きが必要?何から始めたらいいの?」
「相続手続きを効率よく進めるためにはどんな順番で進めればいい?」
初めて身近な方が亡くなったときには、誰もがこのような不安を抱きます。
相続で必要な手続きは複雑なうえに種類も多いため、まず「相続手続きの流れ」を理解することが何よりも大切です。
相続の全体像を把握して、自分のケースで必要な手続きがわかれば、あとは順番に手続きを進めていけばよいからです。
この記事では、相続手続きの一般的な流れをや手続きをスムーズに進めるためのポイントを、図表やイラストを交えながらどこよりも「わかりやすく」「くわしく」解説します。
司法書士田中暢夫一般的な知識の解説にとどまらず、現役の司法書士である筆者の経験に基づく具体的なアドバイスも掲載しているので参考にされてください。
今まさに相続手続きを行おうとしている方はもちろん、将来のために知っておきたいという方も、本記事をお読みいただき、円滑な相続手続きの実行にお役立ていただければ幸いです。

相続手続き全体の流れ
身近な人が亡くなったときは、様々な手続きを並行して進める必要があります。
まずは、以下の図で相続手続き全体の流れを把握しましょう。

相続手続き全体の期間の目安
相続をめぐる事情は人によって異なり、必要な手続きもそれぞれ異なるため、相続の開始から相続手続き全体の完了までにかかる期間もそれぞれに異なります。
ただし、一般的には下記が目安となるでしょう。
- 相続放棄をする人:3か月
- 相続税申告の必要がある人:10か月
- 相続税申告の必要がない人:6~8か月
相続放棄や相続税の申告には法定の期限があるので、期限内に手続きを行う必要があります。
一方、相続放棄をせず、相続税申告も必要ない場合は、明確な期限はありません。
とはいえ、手続きを先延ばしにすると様々なデメリットが生じます。
相続税申告がない分スムーズに手続きを終わらせることができるため、6~8か月以内に完了させることを目安として進めましょう。
個別の相続手続きの期限や期限を過ぎた場合のデメリットについてくわしくはこちら

遺産相続手続き以外にも死後に必要な手続きはある
遺産相続手続きとは、相続財産の調査や不動産の名義変更など、故人の財産を相続人が引き継ぐための手続きのことです。
相続というと遺産相続手続きをイメージされる方が多いですが、身近な人が亡くなると、実際には役所への届出や年金関係の手続き、公共料金や各種民間サービスの解約・名義変更など、公的な手続きや日常生活に関する手続きも必要になります。
司法書士田中暢夫これら遺産相続以外の手続きは比較的簡単なものが多いので、四十九日までを目安に終わらせ、その後に遺産相続手続きを進めていきましょう。
身近な人が亡くなった直後から四十九日までに行う手続きについてくわしくはこちらをご覧ください。

各種相続手続きの概要とスムーズに進めるためのポイント
下記の表は、身近な人の死後に必要な手続きのうち、代表的な手続きの一覧です。
時系列順に手続きの種類と手続き先をまとめたので、参考にされてください。
■身近な人の死後に必要な代表的手続きの一覧

相続手続きをスムーズに進めるためのポイントは下記の3つです。
以下、くわしく解説します。
必要書類を複数取得しておく
相続手続きを同時進行してスムーズに終わらせるために、下記を目安に必要書類は複数取得しておきましょう。
- 戸籍謄本・・・2、3通ずつ
- 印鑑証明書・・・相続人1人あたり2、3通ずつ
■戸籍謄本
預貯金の解約や相続登記等の相続手続きでは戸籍謄本一式の提出が必要になるため、金融機関が複数ある場合、戸籍謄本一式を複数取得しておくことで手続きがスムーズに進みます。
戸籍謄本一式が1セットしかなければ、提出した書類が返却されるのを待ち、返却されたら別の所へ提出するということを繰り返すことになります*。
*金融機関の窓口で直接提出する場合はその場で返却してくれることもあります。
一方、戸籍謄本一式が複数セットあれば、複数の金融機関や法務局に同時に提出することができるので、時間の短縮につながります。
司法書士田中暢夫なお、後述の法定相続情報一覧図を取得しておけば、取得する戸籍は1通ずつで済みます。
金融機関の数が多い場合(おおむね3社以上)は法定相続情報一覧図の利用を検討しましょう。
■印鑑証明書
戸籍謄本と同様の理由で、各相続人の印鑑証明書も、1人あたり2、3通ずつ取得しておくことで手続きがスムーズに進みます。
司法書士田中暢夫解約や名義変更手続きの際に、印鑑証明書は遺産分割協議書とセットで提出するため、当事務所では、印鑑証明書は「相続人の人数分(=遺産分割協議書の数)」ご準備いただくことが多いです。
法定相続情報一覧図を利用する
手続きの必要な金融機関が多数ある場合は、「法定相続情報一覧図(の写し)」があると同時並行で進めることができるので便利です。
法定相続情報一覧図は、戸籍の代わりに亡くなった方の相続関係を証明する家系図のような書面です。
戸籍一式を揃え、法定相続人が法務局に申請することで取得できます。
■法定相続情報一覧図の見本

法定相続情報一覧図があれば、手続きのたびにいちいち戸籍の束を提出せずに済みます。
戸籍一式を数通ずつ取得すると発行手数料がかさみますが、法定相続情報一覧図は何通取得しても無料です。
提出先の確認作業が大幅に短縮できるというメリットもあるので、手続き先が複数あり、効率よく手続きを行いたい場合は取得することをおすすめします。
■法定相続情報一覧図の便利な仕組み

司法書士田中暢夫口座解約等の必要書類の案内で「法定相続情報一覧図(無い場合は戸籍一式でも可)」と記載されていることも多く、金融機関としてもできれば法定相続情報一覧図を提出して欲しいと考えているようです。
同時に進められる手続きは並行して進める
相続財産や債務の調査は、必要書類さえあれば複数の調査を同時並行で進めることができます。
また、遺産分割協議が完了した後の、預貯金の解約手続きや法務局での不動産登記も複数の手続き先で同時に行うことができます。
ここまで解説したとおり、戸籍謄本(又は法定相続情報一覧図)や印鑑証明書を複数準備する必要はありますが、同時並行で手続きを進めることで、完了までの時間を大幅に短縮することができます。
■同時に進められない手続き
「遺産分割協議と相続登記」や「遺産分割協議と相続税申告」は同時に進められません。
遺産分割協議で遺産の分け方が決まらないと、原則として相続財産の名義変更や相続税申告は行うことができないからです。

遺産相続手続きの流れ(一般的に必要な手続き)
ここからは、遺産相続手続きの流れとそれぞれの手続きの概要について解説します。
一般的な遺産相続手続きの流れは下記のとおりです。
司法書士田中暢夫上記のうち、STEP2と3、STEP7、8、9は同時並行で行うことが可能です。
以下、それぞれについてくわしく解説します。
STEP1 遺言書の有無を確認する
相続手続きを進める最初の段階で必ず遺言書の有無を確認しておきましょう。
有効な遺言書ある場合は、基本的にその内容に従って相続することになるので、後の手続きの進め方に大きな影響があるためです。
遺言書は作成形式により調査・探索方法が異なります。
生前に遺言書の保管場所を聞いていなかった場合は、念のため公正証書遺言と自筆証書遺言の両方とも探しましょう。
■遺言書の種類と探索方法
| 遺言書の種類 | 調査・探索先 | 調査・探索する方法 |
| 自筆証書遺言 | ・故人の自宅 ・金融機関の貸金庫など | ・故人宅の金庫や引き出し等を探す ・故人の取引先の金融機関に確認する |
| 自筆証書遺言 (保管制度利用) | 全国の法務局 | 「遺言書情報証明書」又は「遺言書保管事実証明書」の交付請求を行う |
| 公正証書遺言 | 全国の公証役場 | 遺言検索システムを利用する |
司法書士田中暢夫自筆証書遺言(遺言書保管制度を利用していないもの)の場合、相続手続きを進めるにあたり、家庭裁判所での遺言書の検認が必要になります。
遺言書の調査・探索方法についてくわしくはこちらをご覧ください

STEP2 相続人を調査する(戸籍を収集する)
遺言書がない場合、遺産分割協議に法定相続人全員が参加する必要があるため、亡くなった人や相続人の戸籍謄本を集めて、誰が相続人になるかを確認しておく必要があります。
相続手続きの際に必要になる戸籍謄本には下記のような種類があります。
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等(①を含む)
- 相続員全員の現在戸籍謄本
※相続関係によってはこれ以外の戸籍が必要な場合もあります。

戸籍は本籍地の窓口で請求するほか、郵送請求も可能です。
また、直系血族の戸籍については、「戸籍の広域交付制度」を利用すれば、最寄りの市区町村役場窓口で一括取得することができます。
司法書士田中暢夫戸籍がすべて揃ったら、法定相続情報一覧図を取得することで後の手続きをスムーズに進めることができます。
戸籍の広域交付制度など、戸籍の集め方についてくわしくはこちらをご覧ください。

STEP3 相続財産を調査する
遺産分割協議の対象となる財産を確定するために、相続人の調査と並行して相続財産の調査を行います。
相続財産目録の作成や相続税申告の際に必要になるため、残高証明書等の財産の評価額を客観的に証明できる資料を取得しておきましょう。
主な財産の調査方法等は下記のとおりです。
■相続財産の調査方法
| 財産の種類 | 調査・探索先 | 収集・取得する資料 |
| 不動産 | 自宅、法務局、市区町村役場(東京23区は都税事務所) | 登記済権利証、登記事項全部証明書、固定資産税評価証明書、名寄帳等 |
| 預貯金 | 自宅、各金融機関 | 通帳、残高証明書、取引履歴等 |
| 株式、投資信託等の有価証券 | 自宅、各金融機関、証券保管振替機構 | 残高証明書、異動明細等 |
| 生命保険等の保険契約 | 自宅、各保険会社、生命保険協会 | 保険証書、契約内容の案内、相続評価額証明書等 |
なお、残高証明書等は必ず「相続開始日時点のもの」を取得してください。
司法書士田中暢夫故人に借金等の債務がありそうな場合は、念のため「信用情報調査」を行い、債務の有無や残高を確認しておきましょう。
STEP4 相続関係説明図と相続財産目録を作成する
相続人及び相続財産の調査が完了したら、調査結果をもとに相続関係説明図と相続財産目録を作成しましょう。
司法書士田中暢夫相続関係説明図や相続財産目録の作成は法律上の義務ではありませんが、相続人や相続財産の把握に役立つため、作成することをおすすめします。
■相続関係説明図の見本

相続関係説明図とは、亡くなった方の相続関係を家系図のような形でわかりやすく説明したものです。
法定相続情報一覧図とほぼ同一の内容なので、取得済みであればそちらで代用も可能です。
■相続財産目録の見本

相続財産目録は、相続財産の種類、数量、金額等を一覧表の形式でわかりやすくまとめたものです。
形式に決まりはありませんが、パソコン(エクセル等)で作成すると編集が容易です。
作成は義務ではありませんが、遺産分割協議にあたっての相続人間の認識共有や、相続税の申告が必要かどうかの判断に役立ちます。
相続財産目録のひな型や作成方法についてくわしくはこちらをご覧ください。


STEP5 相続人全員で遺産分割協議を行う
故人が遺言書をのこしていない場合は、「どの遺産を」「誰に」「どんな割合で」分けるかについて相続人全員での話し合い(遺産分割協議)を行います。
遺産の分け方は相続人全員の合意があれば自由に決めて構いませんが、基本的には法定相続分がベースになります。
なお、法定相続人が一人しかいない場合や、遺言書によりすべての財産の分け方が確定している場合は、遺産分割協議は不要です。
司法書士田中暢夫遺産分割協議には相続人全員の参加が必要なため、連絡が取れない相続人がいる場合でも、何とかして連絡をとる必要があります。
場合によっては家庭裁判所での手続きが必要になる事もあります。
遺産分割の方法と揉めないための注意点についてはこちらの記事をご覧ください。

連絡が取れない相続人がいる場合の手続きの進め方についてはこちらをご覧ください。

STEP6 遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議がまとまったら、合意した内容を書面にまとめた「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書の記載内容に不備があると、相続手続きに使えず、訂正の手間もかかってしまいます。
名前や住所等は戸籍等を、不動産や預貯金は登記簿謄本や残高証明書等を確認して正確に記載しましょう。
■遺産分割協議書の記載例

作成した遺産分割協議書には、相続人全員が署名押印をします。
署名押印は必ずしも全員が集まって行う必要はなく、遠方の場合は郵送で順次協議書を回していく形でも大丈夫です。
相続人が遠方に住んでいる場合や人数が多い場合は、各自がそれぞれ単独で署名押印した書面をまとめて提出する方法(証明書形式)をおすすめします。
司法書士田中暢夫遺産分割協議書への押印は必ず実印で行います。
実印であることの確認のために印鑑証明書も必要になるので、遺産分割協議書と一緒に提供してもらいます。
遺産分割協議証明書のひな型や記載方法についてくわしくはこちらの記事をご覧ください

STEP7 預貯金や証券の解約や名義変更を行う
遺産分割協議書と印鑑証明書が揃ったら、預貯金口座や証券口座の解約・名義変更手続きを行っていきます。
金融機関では、発行後6か月以内(3か月以内の場合もあり)の印鑑証明書を求められることがほとんどなので、期限切れによる再取得の手間が生じないよう、速やかに手続きを終わらせましょう。
金融機関での相続手続きの際は、一般的に下記の書類を提出します。
■金融機関での一般的な相続手続きの必要書類
- 金融機関所定の相続手続依頼書
- 被相続人及び相続人の戸籍謄本一式(法定相続情報一覧図で代用可)
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
※遺言書がある場合など、相続の状況によって必要書類は異なります。
司法書士田中暢夫解約した預貯金について、代表者がまとめて払戻しを受け、後で分配する場合は、振込先の口座を忘れずに聞いておきましょう。
預貯金や証券などの相続手続きについては下記の記事を参考にしてください。



■株式等を相続する場合は相続人名義の証券口座が必要
故人名義の証券口座で保有する株式等を相続する場合は、原則として相続人名義の口座に株式等を移管する(振替える)必要があります。
移管のための口座はどの証券会社のものでもいいということはなく、基本的には故人の口座と同じ証券会社の口座にしか移管できません。
例:亡くなった方が大和證券の口座で保有していた株式
〇 相続人名義の大和證券の口座への移管
× 相続人名義の別の証券会社(野村證券など)の口座への移管
そのため、相続するためには、あらかじめ(又は相続手続きと同時に)、故人が口座を持っていたすべての証券会社で受け取る方名義の口座を開設しておく必要があります。(すでに口座をお持ちの場合は改めて開設する必要はありません。)
司法書士田中暢夫遺産分割の内容によっては、相続人代表者名義の売却専用口座を開設し、売却したお金を受け取ることもできます。
また、証券会社によっては他の証券会社の口座への移管が可能な場合もあります。
詳しくは各証券会社にお問い合わせください。
株式を相続するための口座開設の際の注意点についてはこちら

STEP8 不動産の名義変更(相続登記)を行う
亡くなった人が不動産を所有していた場合は、預貯金等の解約と併せて、不動産を新所有者の名義に変更する手続き(相続登記)を行います。
相続登記は、管轄の法務局へ申請書類一式を提出し、登録免許税を納付することによって行います。
一般的なケースで必要となる相続登記の申請書類は下記の通りです。
■一般的な相続登記の必要書類
- 登記申請書
- 被相続人及び相続人の戸籍謄本一式(法定相続情報一覧図で代用可)
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票(法定相続情報一覧図で代用可)*1
- 不動産を取得する相続人の住民票(法定相続情報一覧図で代用可)*2
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 固定資産税評価証明書(又は課税明細書)
*1 法定相続情報一覧図に被相続人の住所の記載がある場合は代用可
*2 法定相続情報一覧図に不動産取得者の住所の記載がある場合は代用可
※遺言書がある場合など、相続の状況によって必要書類は異なります。
相続登記の期限は、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内です。
期限内に行わなければ最大10万円の過料が科されます。
司法書士田中暢夫登記手続きを慣れない方が自分で行うことは難しいので、専門家である司法書士へ依頼される方がほとんどです。
司法書士への相続登記の依頼を検討される方は下記の記事も参考にしてください。



STEP9 (必要に応じて)相続税の申告・納付を行う

遺産総額が相続税の基礎控除額【3,000万円+(600万円×法定相続人数)】を超える場合は、相続税の申告・納付を行います。
申告・納付期限は故人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
申告だけでなく、納付も済ませる必要があることに注意しましょう。
相続税の申告についてくわしくはこちらをご覧ください。

■相続税申告が必要な場合の注意点
相続税申告が必要な場合、遺産分割協議も10か月以内に終わらせる必要があります。
相続税は各相続人が受け取った財産を基準として算出・課税されるところ、遺産分割協議が終わらなければ、各相続人が受け取る財産を確定できないためです。
10か月以内に遺産分割協議を終え、相続税の申告をしなければ、配偶者控除や小規模宅地等の特例等の税制上の優遇措置を受けられないため、すみやかに話し合いを行いましょう。
相続税の申告と遺産分割協議の期限の関係についてくわしくはこちら

その他の代表的な死後手続き・遺産相続手続き
前章で解説した一般的な遺産相続手続き以外にも、故人の財産状況によっては相続するための手続きが必要になります。
その中でも下記の手続きは、比較的多くの方に関係します。
以下、それぞれについて解説します。
死亡保険金の請求
亡くなった方が被保険者になっている生命保険契約(共済契約)がある場合は、死亡保険金(死亡共済金)等を請求しておきましょう。
死亡保険金は相続財産ではなく、受取人の固有財産とされているため、相続財産の調査や遺産分割協議の成立を待たずに請求して大丈夫です。
請求の際には死亡診断書のコピー等が必要になりますが、受取人が単独で請求できるので、早めに請求しておきましょう。
なお、死亡保険金とあわせて入院給付金や手術給付金等が請求できる場合や、未経過保険料が払い戻される場合がありますが、こちらは受取人の固有財産ではなく、相続財産として取り扱われます。
死亡保険金請求の際にまとめて受け取って問題ありませんが、遺産分割や相続税の対象となるため、他の相続人にきちんと情報共有しておきましょう。
また、相続放棄する場合、死亡保険金は固有財産のため受け取って問題ありませんが、入院給付金や未経過保険料は受け取らないよう注意しましょう。
司法書士田中暢夫死亡保険金は相続財産ではないものの、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となるため(ただし「500万円×相続人の数」の非課税枠あり)、気を付けましょう。
■生命保険契約の有無がわからない場合の調べ方
保険会社からのお知らせや保険証券などの資料が何もない場合や、把握している以外にも契約が無いか確かめたい場合は、「生命保険契約照会制度」を利用して調査しましょう。
生命保険契約照会制度は、相続人等からの申出により、一般社団法人生命保険協会を通じて、協会加盟の保険会社全社へ保険契約の有無を一括で照会できる制度です。
照会によって判明するのは「故人がどこの保険会社と契約しているか」までのため、その後個別に保険会社に対して調査・請求等は必要になりますが、照会によって国内の生命保険契約については、ほぼ確実に把握出来ます。
生命保険契約照会制度についてくわしくはこちら

自動車の名義変更
故人名義の自動車は、新しい所有者が決まったら名義変更の手続き(移転登録の申請)が必要です。
預貯金の解約手続き等と手続きに必要な書類が共通しているため、遺産分割協議が終わったら、他の解約・名義変更手続きと並行して自動車の名義変更手続きも行っておくとよいでしょう。
手続先は車の種類によって異なります。
| 自動車の種類 | 手続き先 |
| 普通自動車 | 運輸支局(陸運局)または自動車検査登録事務所 |
| 軽自動車 | 軽自動車検査協会 |
普通自動車の場合、査定額が100万円以下であれば、遺産分割協議書(相続人全員の実印押印)の代わりに、「遺産分割協議成立申立書(押印するのは代表相続人のみ)」を使って簡易的に名義変更の手続きができます。
なお、相続人が乗り継ぐのではなく、相続を機に売却や廃車をする場合、中古車買取業者や廃車業者が相続による名義変更も含めてまとめて対応してくれることが多いです。
司法書士田中暢夫売却や廃車する予定の場合は、業者に見積もりを取る際に確認しておくと良いでしょう。
■カーローン返済中の場合の注意点
カーローン返済中の場合、ローンの返済が終わるまでは所有者は販売会社(ディーラー)や信販会社のままで使用者が購入者になっているケースがあります。(所有権留保と言います。)
この場合、ローンを引き継いだ相続人が残額の返済を行い、完済後に販売会社や信販会社から直接相続人(又は相続人から自動車を譲り受けた第三者)へ所有権が移転することになります。
また、相続人が使用を続けずに売却する場合は、ローン全額を一括返済して、所有権解除手続きを行う必要があります。
司法書士田中暢夫他の財産の状況によっては相続放棄も検討する必要があるため、まずはディーラーや信販会社に連絡をして債務残高や所有権の状態について把握しましょう。
カーローン返済中の自動車を相続し、売却した実際の事例はこちら


必要に応じて行う相続手続き
一般的には不要なことが多いですが、相続をめぐる事情によっては必要になる手続きもあります。
その中でも下記は、相続の方向性に大きな影響を与える手続き、期限が短く過ぎてしまった場合にデメリットが大きい手続きなので、すみやかに対応する必要があります。
以下、それぞれについて解説します。
遺言書の検認
故人が遺した遺言書が自筆証書遺言(遺言書保管制度を利用していないもの)であった場合、相続手続きを進めるにあたり、家庭裁判所で遺言書の検認手続きを行う必要があります。
遺言書の検認とは、遺言書の保管状態等を確認するための手続きです。
具体的には、戸籍謄本等の必要書類を揃え、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。
裁判所の混み具合によっては申立てから完了まで2か月以上かかる場合もあるため、自筆証書遺言を見つけた場合はなるべく早く手続きをしましょう。
司法書士田中暢夫なお、公正証書遺言の場合や、自筆の遺言書であっても法務局の保管制度を利用していた場合は、検認手続きは不要です。
遺言書の検認についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。
法務局の自筆証書遺言保管制度についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

相続放棄の申述
亡くなった人の財産や債務を相続したくない場合、亡くなったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に「相続放棄の申述」をする必要があります。
相続には下記3つの選択肢があります。
- 単純承認…プラス財産もマイナス財産もすべて相続する。
- 相続放棄…プラス財産もマイナス財産もすべて放棄する。(一切引き継がない)
- 限定承認…プラスの財産の範囲でマイナス財産を引き継ぐ*。
*プラスが上回れば上回った分を引き継ぐが、マイナスが上回った場合は上回った分は放棄する。

このうち相続放棄と限定承認をするには、3か月の期限内に手続きをしなければなりません。
具体的には、戸籍謄本等の必要書類を揃え、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
期限内に相続放棄しなかった場合や、故人の遺産(現預金など)を使ってしまった場合、債務も含めてすべて相続する「単純承認」をした扱いとなります。
単純承認をすると、債権者から借金を支払ってくれと言われたら拒むことができなくなるため、相続放棄する可能性があるうちは、故人の遺産には一切手を付けないように気を付けましょう。
司法書士田中暢夫なお、相続の3つの選択肢のうち「限定承認」は、手続き自体がかなり複雑で申立人の負担が大きいため、実際にはほとんど利用されることはありません。
相続放棄の期限についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

準確定申告
亡くなった人の準確定申告が必要な場合、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に税務署へ確定申告書を提出しなくてはなりません。
「準確定申告」とは、法定相続人が被相続人に代わって確定申告を行う制度です。申告は原則として相続人全員の連名で行います。
準確定申告の対象となる期間は亡くなった年の1月1日から死亡日までです。
対象期間において、亡くなった方が下記に該当する場合は準確定申告が必要になります。
■準確定申告が必要なケース
- 故人の事業所得・不動産所得が48万円以上あるケース
- 故人が年間400万円を超える年金を受給していたケース
- 故人が年収2,000万円を超える給与所得者だったケース
- 故人が2か所以上から給料をもらっていたケース
- 故人の副業所得等が20万円を超えるケース
- 故人が生前に一定額以上の満期保険金等を受け取っているケース
- 故人が生前に株式や不動産の売却を行い、譲渡所得が発生しているケース
準確定申告の期限を過ぎた場合、本税の他に罰則として「延滞税」「無申告加算税」が課されます。
故人の収入状況が不明な場合、4か月という短い間に申告を完了するのは難しいこともありますが、税理士等に相談の上、できるだけ期限内に申告を済ませるようにしましょう。
参考
≫納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁
司法書士田中暢夫上記の申告が必要なケースに該当しない場合でも、申告することで源泉徴収された税金等の還付を受けられるケース(還付申告)があります。
相続手続きの基本の必要書類
各相続手続きで共通して必要になる「基本の必要書類」は下表のとおりです。
相続をめぐる事情や手続きの内容によってはこの他にも書類が必要となるため、くわしくは各手続き先に確認しましょう。
■相続手続きの基本の必要書類一覧
| 誰の | 書類 | 取得先 | 備考 |
| 遺産分割協議をする場合(遺言書がない場合) | |||
| 亡くなった人の | 出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本,改製原戸籍) | 本籍地の市区町村役場 *広域交付制度利用の場合は最寄りの市区町村役場 | 法定相続情報一覧図で代用可能 |
| 住民票の除票 (又は戸籍の附票) | 最後の住所地の市区町村役場 *戸籍の附票は本籍地の市区町村役場 | 法定相続情報一覧図で代用可能 *一覧図に被相続人の住所の記載がある場合 | |
| 相続人全員の | 遺産分割協議書 | 相続人全員で作成(実印を押印) | 法定相続人が1人の場合は不要 |
| 戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | ・相続開始日以降に発行されたもの ・法定相続情報一覧図で代用可能 | |
| 印鑑証明書 | 住所地の市町村役場 | 金融機関の手続きでは発行から6か月(又は3か月)以内のもの | |
| 遺言書がある場合 | |||
| 亡くなった人の | 遺言公正証書(正本又は謄本) | 公証役場,自宅など *公証役場へ郵送請求も可能 | ①公正証書遺言の場合 |
| 遺言書情報証明書 | 法務局 *郵送請求も可能 | ②自筆証書遺言書保管制度利用の場合 | |
| 検認済遺言書(又は検認調書謄本) | 家庭裁判所,自宅など *検認調書謄本は家庭裁判所へ郵送請求も可能 | 上記①②以外の遺言書の場合 | |
| 戸籍謄本(死亡の記載があるもの) | 本籍地の市区町村役場 *広域交付制度利用の場合は最寄りの市区町村役場 | 法定相続情報一覧図で代用可能 | |
| 住民票の除票 (又は戸籍の附票) | 最後の住所地の市区町村役場 *戸籍の附票は本籍地の市区町村役場 | 法定相続情報一覧図で代用可能 *一覧図に被相続人の住所の記載がある場合 | |
| 財産をもらう人の | 戸籍謄本(遺言者との関係性がわかるもの) | 本籍地の市区町村役場 | ・相続開始日以降に発行されたもの ・法定相続情報一覧図で代用可能 |
| 遺言執行者の | 選任審判書謄本 | 家庭裁判所 | 遺言執行者がいる場合 *遺言で指定されている場合は不要 |

まとめ
本記事では、一般的な相続手続きの流れを時系列順に整理して解説しました。
本記事で相続手続きの全体像を把握し、ご自身のケースに当てはめていただければ、スムーズに手続きを進めることができると思います。
ただ、相続をめぐる事情は千差万別であり、イレギュラーな事態も普通に発生するため、ご自身ではどうしても難しくて立ち止まってしまうこともあります。
手続きの中には法定の期限が定められているものもあるため、ご自身で相続手続きを進めるのが難しいと思ったら、悩み過ぎずに早めに専門家に相談することをおすすめします。
記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。
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