賃貸物件で孤独死した場合、相続放棄する際の注意点は?【賃貸アパートで孤独死した父について相続放棄するケース】

賃貸アパートで孤独死した父の相続を放棄したい。

ご相談前の状況

お父様が亡くなられた方からのご相談。

相続人はお子様3人。

故人は生前に自己破産済みで大きな借金等は無いと思うが、住んでいた賃貸アパートで亡くなっており、死亡から発見まで数日間の遅れがあったとのこと。

アパートの大家から、室内の残置物の処分の他、多額の原状回復費用の支払いを求められる可能性が高いので、相続放棄を考えているとのこと。

相続放棄するにあたり、室内の整理や大家への対応についてどのようにすべきか不安があるという事で相談にいらっしゃいました。

問題点

  • 経済的価値のあるものを処分してしまった場合、相続を承認したものとして相続放棄できなくなる可能性がある。
  • 室内の残置物について大家の方で処分していいか許可を求められた場合、対応に気を付ける必要がある。
  • 相続放棄は、死亡の事実を知ってから3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要がある。

当事務所からのご提案

相続放棄をする場合、亡くなった方の持ち物の処分については十分に気を付ける必要があります。

銀行の預貯金の引き出しや、経済的価値のある動産(自動車や貴金属など)の換金行為があると、いわゆる処分行為として「法定単純承認事由(民法第921条)」に該当し、原則として相続放棄ができなくなってしまうためです。

特に、一人暮らしの方がアパート等の賃貸物件で亡くなった場合、室内の荷物の処分には注意が必要です。

明らかに経済的価値のない家具や日用品は処分しても問題ありませんが、整理中に現金や時計などが出てきたら、どうすべきか判断に迷うかもしれません。

家主や管理会社からは、早急に残置物を撤去するよう言われるでしょうし、道義的にも「相続放棄はするけどせめて室内の整理ぐらいはしておきたい」と考える方は多いでしょう。

最適解は状況にもよって異なりますが、相続放棄をするのであれば、「故人の財産・持ち物には一切手を付けない」というのが最も安全な選択肢ではあります。

今回、ご相談者様方は故人の持ち物には一切手を付けていないとのことでした。

ご兄弟も交えて相談した結果、そのまま現状を維持し、相続放棄後に大家に放棄したことを通知するという方針で進めることになりました。

そこで当事務所で、戸籍収集、申述書等の作成および提出代行、照会書の回答支援、申述受理後の大家への通知等、相続放棄に関する手続きを一貫してサポートさせていただくことを提案しました。

大家から残置物を処分していいか確認された時の対応は?

賃貸物件では、相続放棄したことを伝えると、家主や管理会社から「室内の財産を処分していいか」と許可を求められることがあります。

「相続放棄をしたから関係ないので好きにしていい」と答えたいところですが、対応には気を付ける必要があります。

実は相続放棄をした方には、同順位や次順位の他の相続人が財産の管理を始めるまでの間は、財産の管理義務があるためです。(民法第940条1項)

他人が処分するのに同意することが、自らの処分行為に該当するかは微妙なところですが、万が一処分した残置物の中に経済的価値のあるものが含まれていた場合、相続放棄が否定される可能性はゼロとは言えません。

とは言え、後で責任を問われても困るので、勝手に処分するわけにもいかないという家主の立場も理解できますし、できれば穏便にすませたいところでしょう。

これに関しては正解というものはないのですが、「相続放棄をしているので処分していいと言える立場ではない」という事を明確にしたうえで、「そちらが(勝手に)処分したとしても自分としては異議を唱えるつもりはない(その立場にない)」と伝えるぐらいが、リスクを考慮すると精一杯かと思います。

処分についての同意書等への署名を求められることもありますが、それはできないと断り、後は家主側の判断に任せるしかないでしょう。

残置物を撤去できなければ家主側にも経済的損失が発生し続けるので、実務上は暗黙の了解のもと、内々で処理しているものと思われます。

このケースでも後々、大家から処分の許可を求められた場合は、上記のように対応するようご案内いたしました。

このように解決しました

  • 手続きに必要な戸籍等を収集し、申述書と一緒に裁判所に提出しました。
  • 申述書提出後に、裁判所から届く照会書(回答書)について回答をサポートしました。その結果、無事相続放棄は認められました。
  • 相続放棄が認められた後、相続放棄申述受理証明書の取得及び大家への通知もサポートさせていただきました。

担当者からのコメント

相続放棄をするにあたり、亡くなった方の残した家財等の処分に悩まれる方は多いです。

特に賃貸物件に一人暮らしだった場合、家主から早期の室内整理を求められることになるでしょう。「放棄はするけどできるだけ迷惑はかけたくないので整理ぐらいは…」という心情も理解できます。

このケースでは経済的価値の有無に関わらず一切手を付けないという結論になりましたが、やむを得ず整理する場合、経済的価値がありそうなものについては処分せずに保管するなど、対応には十分に気を付けましょう。

とは言え、どの行為が相続放棄に影響を及ぼすかを判断するのは普通の方には困難だと思います。

取り返しのつかない事態を避けるためにも、相続放棄を検討中の方は、相続放棄に精通した専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、賃貸物件で孤独死した方の相続放棄について数多くのご相談・サポートの実績がございます。

ご依頼をご検討中の方のご相談は無料です。

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※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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この記事の執筆者

司法書士法人東京横浜事務所
代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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