相続専門司法書士が教える!親が亡くなる前と後にやることすべて【全160項目チェックリスト付】

「お父さんが緊急入院することになった。医者からは一応心構えはしておくように言われている。できればすぐに来てほしい。」

ある日突然、身内からこのような連絡があったとき、あなたは冷静に対処できるでしょうか?

あまり考えたくないことかもしれませんが、親の死はいつか来る避けられない現実です。

そして、親が亡くなるとその直後から悲しむ暇もなく様々な手続きに対応しなければなりません。

そのすべてについて完璧に対応することは難しいですが、事前に知識を得ておけば、いざその時が来ても必要以上に慌てずに済むでしょう。

本記事では、これまで1,000人以上の相続に関わった相続専門の司法書士が、親が亡くなる“少し前”から亡くなった後にやることについて網羅的に解説します。

身近な人が亡くなった後に必要な手続き全160項目をまとめたチェックリストも用意したので、ぜひダウンロードしてお役立てください。

司法書士田中暢夫

私のこれまでの知識と経験を余すことなく伝えようとした結果、60,000文字を超える記事になってしまいました…
いざというときのためにブックマークしておいていただき、折に触れて読み返していただければと思います。

今まさに親の死に直面している方、「いつか」のために読んでおこうという方、境遇は様々でしょうが、本記事が少しでも皆様の不安や負担を軽くし、平穏な日常に戻ることができる助けになれば幸いです。

目次

親が亡くなる前にやっておくこと

まず、親が亡くなる少し前に「やっておくべきこと」「できればやっておくといいこと」について解説します。

本記事では、親の緊急入院や危篤の知らせを受けてから動き出すことを想定しているので、基本的に亡くなる数日前、長くても1週間程度の期間でできることに限定しています。

重要度はそれぞれ異なりますが、限られた時間でできることとして下記の8つが挙げられます。

以下、それぞれについてくわしく解説します。

勤務先に連絡しておく

会社勤めの方であれば、できるだけ早く勤務先には状況を伝えておきましょう。

親の緊急時に冷静でいられないことは当然なので、簡潔に伝えれば十分です。

【勤務時間中に親が危篤との連絡を受けた場合】

お疲れ様です。〇〇です。

先ほど父が危篤との連絡があり、これから病院に向かいます。

申し訳ありませんが本日は退勤させてください。(休ませてください)

状況は追ってご報告いたします。

連絡の際は下記のことを心がけましょう。

  • 連絡は直属の上司へ
  • 基本は電話連絡(早朝・深夜の場合はメール等で)
  • 親の容態(危篤状態か否か)は伝える(具体的な病名や病状等は不要)
  • 退勤する・休むことを伝える
  • 重要な引継ぎがあれば引継ぎ方法について確認する

なお、入院や危篤の知らせを受けてから亡くなるまでの間の休みについては、有給休暇として処理されることが一般的です。

有給休暇が残っていない場合は、通常の欠勤扱いとなり、給与は支給されません。

忌引き休暇は、親族が亡くなった際に付与されるものなので、危篤の段階では使えません。

司法書士田中暢夫

亡くなるまでの間の休みについて、会社によっては特別休暇制度を設けている場合もあるので、確認してみましょう。

スマホやオンラインアカウント等のデジタル資産の情報・パスワードを聞いておく

デジタル資産(デジタル遺品)の情報
デジタル資産(デジタル遺品)の情報

デジタル資産*は、「どんなものがあるか」「アクセスするために必要な情報(パスワードなど)」についてできる限り生前に聞き出しておきましょう。

*スマホ・パソコン等のデジタル機器内のデータや、メール・SNSその他のオンラインサービスのアカウントなど

スマホやパソコンには、財産状況や交友関係等についての重要な情報が含まれている可能性が高く、また、写真等の家族にとっての思い出となるデータが保存されていることも少なくありません。

しかし、パスワード等の入力を一定回数以上間違うとロックされたり、最悪の場合データが初期化され復元できなくなったりします。

また、本人が亡くなった後は、スマホを携帯ショップに持ち込んでも基本的にデータの復旧や転送には応じてくれません。

専門の業者に頼めばデータを復旧・転送できる可能性はありますが、費用と期間がかなりかかるため、よほどの確信があるケースでなければ現実的ではありません。

また、メールやSNSのアカウントにログインできると、生前のやり取りから、各種サービスの利用有無や連絡すべき知人を把握しやすいです。

その他の各種オンラインサービスについても生前にできるだけ把握しておけば、死後に速やかに解約等ができるので、余計な手間を取ることもなく、無駄な支出を防ぐことができます。

各種オンラインサービスの例

メール(Gmailなど)チャットツール(LINEなど)SNS(X, Facebookなど)
EC・ショッピング(Amazonなど)動画配信(Netflixなど)音楽配信(Apple Musicなど)
電子書籍(Kindleなど)クラウドストレージ(Google Driveなど)オンライン決済・送金(PayPayなど)
ネットバンク(楽天銀行など)ネット保険(ほけんの窓口など)ブログ(noteなど)
オンライン会議(Zoomなど)書類作成(Microsoft 365など)オンライン会議(Zoomなど)
各種オンラインサービスの例

故人のデジタル資産(デジタル遺品)の対応については、今後ますます重要性が高まると思われますが、本記事執筆時点(2025年12月)ではまだまだ方法が確立されておらず、パスワード等がわからなければお手上げとなるケースが少なくありません。

本記事で解説する中でも唯一、通常の相続手続きでは対応できない可能性が大きい部分なので、最優先で確認しておきましょう。

とはいえ、家族にも知られたくない情報はあるもので、中には教えたがらない方もいるかもしれません。

そのような場合も、「必要な情報以外は絶対に見ない」「決められた人以外は見ない」「確認したら後は削除する」と約束するなどして何とか聞き出しておきましょう。

エンディングノートやメモを探す・場所を聞いておく

エンディングノートやそれに類するメモの有無の確認は、できるだけ生前にやっておきましょう。

エンディングノートには、一般的に終活に関する希望や、財産・契約に関する情報等を記載することが多く、これからの手続きに非常に役立ちます。

特に延命治療や葬儀、お墓の希望については、後から知っても叶えられないことがあるので真っ先に確認しましょう。

また、先述したデジタル資産の情報・パスワードが記載されていることもあるので、あわせて確認するといいでしょう。

司法書士田中暢夫

エンディングノートがある場合は、事前に中身を確認しておくのがベストですが、難しい状況であれば、本人にどこにあるかだけでも聞いておきましょう。

連絡先リストを作成しておく

亡くなった直後には親戚や知人への連絡が必要になるので、できれば連絡先リストを作成しておきましょう。

親の危篤の知らせや訃報を誰に伝えればいいかは悩ましい問題です。

親の交友関係をある程度把握していても、連絡してほしい・してほしくない人が誰なのかは、本人以外わからないことも多いです。

特に知人の場合、言われなければ存在すら知らないという事もあり得るので、できるだけ本人に確認しておきましょう。

連絡すべき人を把握していたとしても、死の直後は気が動転して連絡漏れする可能性があるので、優先順位等を整理して連絡先リストを作成しておくと安心です。

司法書士田中暢夫

連絡先はエンディングノートやメモに書かれていることもよくあります。

葬儀(遺体搬送・安置)について確認・打ち合わせしておく

遺体搬送・安置・葬儀は亡くなった直後に対応が必要なため、事前に確認・打ち合わせを行っておくと安心です。

病院で亡くなった場合、病院の霊安室に安置できるのはせいぜい2~3時間なので、その間に自宅や葬儀社などの他の安置場所に遺体を搬送しなければなりません。

遺体搬送自体は葬儀社が行いますが、時間的制約が一番厳しいところなので、事前に見積もりや段取りを確認しておくだけでも心に余裕ができます。

また、葬儀については葬儀社への確認・打ち合わせの他、親本人の希望についても聞けそうであれば聞いておくといいでしょう。

直接聞くのが難しい場合、エンディングノートやメモなどで確認できることもあります。

司法書士田中暢夫

見積もりを聞く際は、「遺体搬送のみの依頼」と「葬儀までまとめての依頼」のどちらも聞いておくとより良いです。

生前契約や互助会に注意!

親が葬儀社との間で生前契約を結んでいる場合や、葬儀社の運営する互助会の会員だった場合、そちらを利用して葬儀等を行うのが本人の希望と考えられます。

生前契約等の有無については本人に聞くのが確実ですが、聞けない場合や覚えていない場合は、エンディングノートやメモのほか、葬儀社の書類(生前契約書や生前契約カード、パンフレットなど)で確認できることがあります。

なお、別の葬儀社に依頼して葬儀が完了した後で、生前契約や互助会加入の事実に気づいた場合は、申請をすれば支払い済みの葬儀代金や積立金の一部は返金されます。

返金されたお金は相続財産として取り扱われます。

参考

家探し(やさがし)をして必要なもの不要なものを整理しておく

他の兄弟と交代で付き添う場合などで、一時的に実家(親の自宅)に戻れるなら、今のうちに家探し(やさがし)をしておくといいでしょう。

相続財産調査のための本格的な捜索は、相続開始後落ち着いてからでも大丈夫なので、ここではおおまかに今後必要になりそうなもの、不要なものを整理しておくだけでも十分です。

特に下記のような亡くなった直後に必要になりそうなものは、一か所に集めておくと後で慌てずに済みます。

【亡くなった直後に必要になる可能性があるもの】

  • エンディングノートやメモ
  • 財布(現金)
  • 通帳、キャッシュカード
  • 保険証(資格確認書・被保険者証)
  • マイナンバーカード
  • 年金手帳
  • 数珠
  • 写真・アルバム(遺影用)
  • 棺に入れる思い出の品(副葬品)

※印鑑証明書(印鑑カード)や実印は本人の死後は基本的に必要になることはありません。

司法書士田中暢夫

明らかに不要なものであっても、少なくとも親が生きている間は処分するのはやめておきましょう。

預金口座や証券口座を確認・把握しておく

今後相続手続きで必要になるので、親の預金口座や証券口座は何があるかを確認・把握しておくと後々楽になります。

先述の家探しの際に通帳やキャッシュカードの現物を見つけておくと確実ですが、紛失している可能性もあるので、本人にも確認しておきましょう。

親の口座のお金で葬儀費用等を支払うつもりであれば、暗証番号も忘れずに聞いておきましょう。

本人に聞けない場合は、エンディングノートやメモなどが手掛かりになるかもしれません。

司法書士田中暢夫

預金口座等は本人が忘れていることも多く、実際のところ相続開始後に調査を始めても問題ないため、緊急の支払い等の差し迫った事情がなければ、優先度は低いです。

遺言書の有無を確認しておく

もし親本人に聞けるようであれば、念のため遺言書の有無は確認しておくといいです。

遺言書がある場合は、基本的にその内容どおりに相続することになるので、相続手続きにあたり最初に遺言書の有無や内容の確認が必要になるからです。

とはいえ、亡くなった後でも調査する方法はあるので、心情的に本人に確認するのが難しければ無理に聞き出す必要はありません。

本人に聞ける場合、遺言の内容までは聞かなくても大丈夫ですが、保管している場所は必ず確認しておきましょう。

司法書士田中暢夫

自筆の遺言書の場合、原本が見つからなければ相続手続きができない可能性があるため、気を付けてください。

■今からでも遺言書を作成すべき?

親が危篤やそれに近い状態であれば、基本的に遺言書を作ることはできません。

少なくともはっきりと意思表示できる状態でなければ遺言書は作成できませんし、仮に無理やり作ったとしても、後で無効となる可能性が高いです。

ただし下記のような事情がある場合は、一時的にでも容態が安定して意思表示が可能な状態になれば作成すべきです。

  • 本人の強い要望がある場合(特定の人に相続させたい・させたくないなど)
  • 相続関係が特殊・複雑な場合(面識のない相続人がいるなど)

病床で作成する場合、下記のいずれかの方法によることになります。

  1. 自筆証書遺言
  2. 公正証書遺言
  3. 危急時遺言

①については、原則として全文の自書が必要なため、できるだけシンプルな内容にすることが望ましいです。

書くことが難しければ②の方法が望ましいですが、公証人に加えて利害関係のない証人2名に来てもらう必要があるため、時間的制約がある中では難しいかもしれません。

③は生命の危機が迫っている状況下で使える緊急手段ですが、証人3名の立ち合いが必要など、厳格な要件があるため、可能な限り司法書士等の専門家に相談することをおすすめします。

親が亡くなる前にやってはいけないこと

上記とは逆に、親が亡くなる前に「やってはいけないこと」「やらない方がいいこと」というのもあります。

代表的なものとしては下記2つが挙げられます。

以下、それぞれについて解説します。

遺言書の中身を確認する

先述のとおり、遺言書の有無や保管場所についてはできるだけ生前に確認しておくべきですが、もし遺言書を見つけてもすぐに中身を確認するのはやめておきましょう。

遺言書は本来死後に確認すべきものであり、生前に勝手に中身を見てしまうと、改ざんや隠匿の疑いを持たれるなど、相続人間のトラブルの原因になり得ます。

そうでなくても、もし内容が自分にとって不本意なものであった場合、複雑な思いを抱えながら親を看取ることになってしまうかもしれません。

また、自筆の遺言で封がされている場合、検認手続き前に開封すると最大5万円の過料が科されることもあるので、やめておきましょう。(実際に過料が科されたケースを聞いたことはありませんが…)

銀行口座からまとまったお金を引き出す

親が亡くなる前に銀行の口座からまとまったお金を引きだすことはやめておきましょう。

葬儀費用や入院費用の支払いで必要になるからという事で、親の口座からまとまったお金を引き出す方は少なくありません。

生前に親が指示しているケースもあるので、一概にやってはいけないということはありませんが、揉める原因になる上、相続税申告の際に処理が面倒なので、緊急の支払い等の差し迫った事情がなければやめておきましょう。

生前に引き出す方が多い背景としては、「死亡するとすぐに銀行口座が凍結されて引き出せなくなるので、事前に引き出しておいた方がいい」という言説が広く信じられているためと考えられます。

しかし後述のとおり口座の名義人が死亡しても直ちに凍結されることはないので、死後に葬儀費用等が確定してからの対応でも問題ありません。

■生前に引き出しておけば税務署にはばれない?

まれに、「生前にお金を引き出して口座を空にしておけば税務署にはわからないので、相続税を減らすことができる」と信じて、何回にも分けて多額のお金を引き出す方がいらっしゃいます。(親の指示で行う方もいます。)

しかし、税務署は日本国内すべての口座について、必要に応じて調査する権限があるため、そのような行為は確実にばれます。

むしろ、「課税逃れをする要注意人物」としてマークされるでしょうから全くの逆効果です。

そもそも、引き出した多額の現金の保管場所にも困るでしょうから絶対にやめましょう。

司法書士田中暢夫

筆者が実際に聞いたケースでは、1億円近くもの現金を引き出して自宅に置いているという方がいましたが、どう考えても危ないですよね…

亡くなる直前にできることは少ない

ここまで、親が亡くなるまえにやっておくことについて解説しましたが、亡くなった後にやることに比べて、亡くなる前にできることは圧倒的に少ないです。

逆に言えばほとんどのことは亡くなった後でも十分対応可能という事ですので、必要以上に気にする必要はありません。

何よりも大切なのは、「後悔しないように親の最期に素直に向き合うこと」です。

自分の想いや感謝の言葉を伝えられればより良いでしょうが、何も言わずにそばにいるだけでも、最後の時を安らかに過ごせるでしょう。

それはきっと親だけでなく自分のためにもなるはずです。

親が亡くなった後にやること

事前に準備ができたにせよ、できなかったにせよ、親の死亡直後からは悲しみに浸る暇もなく様々なことに対応しなくてはなりません。

まずは死亡直後~四十九日までに行う手続きの全体像について把握しておきましょう。

■死亡直後~四十九日までに行う手続き

死亡直後~四十九日までに行う手続き
死亡直後~四十九日までに行う手続き

本記事では、親が亡くなった後1週間から2週間、長くても2か月程度の期間でできることを中心に解説します。

その後の相続手続きについても概要は解説しているので、詳しく知りたい方はリンク先の個別記事を参考にしてください。

手続きを進めるにあたっては、大まかな目安として以下のようにイメージしておくといいでしょう。

  • 死亡直後は葬儀・法要の手配や、関係者への連絡等を中心に行う。
  • 葬儀が終わってから、役所への届出や年金関係の手続き、公共料金など各種契約の解約・名義変更手続きを行う。
  • その後、少し落ち着いてから戸籍収集や財産調査などの遺産相続手続きに取りかかり始める。

もちろんあくまで目安なので、個々の事情によって優先順位や期間は異なる場合もあります。

手続きの進め方について不安な方や、お急ぎの方は専門家へのご相談をおすすめします。

以下、それぞれの手続き・やることについてくわしく解説します。

【1日目】亡くなった当日にやること

亡くなった当日とはいえ、下記については早急に対応が必要です。

■亡くなった当日にやること

手続きの名前時期・期限手続き先・確認先主な必要書類
近親者・関係者等への連絡すみやかに近親者、関係者、勤務先などなし
死亡診断書(死体検案書)の取得すみやかに医師(警察)なし
遺体の搬送・退院手続きすみやかに葬儀社、病院なし
通夜・葬儀の手配すみやかに葬儀社なし
亡くなった当日にやること

以下、それぞれについてくわしく解説します。

近親者へ連絡する

危篤状態の連絡を受けた段階で、家族や関係の近い親戚には連絡をしておきましょう。

急を要するので、連絡方法はメールやLINEよりも電話の方が確実です。

内容が内容なので夜中や早朝であっても失礼には当たりません。

この段階では危篤や死亡の事実のみ伝えておけば大丈夫ですが、すでに通夜や葬儀の日程が決まっていればあわせて伝えておきましょう。

まだ決まっていなければ、決まり次第改めて伝えれば大丈夫です。

死亡診断書(死体検案書)を取得する

病院で亡くなった場合は、すぐに医師から死亡診断書を受取っておきましょう。

死亡診断書(死体検案書)は、A3用紙で下図のように死亡届と一体になっており、右側の「死亡診断書(死体検案書)」部分が記入された状態のものを受け取ります。

■死亡診断書(死亡届)の見本

死亡診断書(死亡届)の見本
死亡診断書(死亡届)(法務局HPより引用)

病院以外で亡くなった場合は下記のとおり対応しましょう。

■医師の管理のもと、在宅医療を受けている方が自宅で亡くなった場合

かかりつけの医師に来てもらい、死亡診断書を書いてもらいましょう。

■持病等の無い方が、自宅等で突然亡くなった場合

何も触れずに警察に連絡をしましょう。この場合は死亡診断書ではなく「死体検案書」が作成されることになります。

死亡診断書の発行手数料は3,000円〜1万円程度、死体検案書の発行手数料は3万円〜10万円程度です。

家族、親族であれば受け取ることができるので、配偶者かお子様の代表者が受け取っておき、必要に応じて他の方にコピーを共有してあげてください。

死亡診断書は死亡届提出の際に必要になるほか、死亡保険金の請求など複数の手続で必要になります。

死亡届提出の際に原本を提出すると戻ってこないので、必ずコピーを複数枚取り、準備しておきましょう。

司法書士田中暢夫

死亡診断書(死亡届)は後の手続きで使うので、必ずコピーを10枚程度とっておきましょう。

葬儀社に連絡して葬儀の手配を始める

葬儀者に連絡をして、通夜・葬儀等の手配を始めます。

できれば事前に決めておくのが望ましいですが、死亡後にはじめてコンタクトを取る場合は、費用についてしっかりと説明してくれるところを選びましょう。

葬儀社を選ぶ際には下記の点を考慮して決めましょう。

  1. 故人の希望(生前契約や互助会加入の有無等)
  2. 葬儀のプラン(家族葬か一般葬か等)
  3. オプション(遺体の搬送、死亡届の提出、火葬、法要等)
  4. 価格(追加費用がかかる場合はあるのか等)

なお、葬儀社は病院が紹介してくれることもありますが、病院の提携葬儀社は費用が高額になる傾向があります。

予想以上に高額の請求が来てトラブルにならないように、必ず費用と内容を確認し、納得の上で契約しましょう。

まだ亡くなったばかりで気持ちの整理がつかない、という方もいらっしゃると思います。

そのような場合は「遺体搬送のみ」を葬儀社に依頼し、葬儀については後でしっかり検討した上で依頼するというのも一つの手です。

遺体搬送のみを葬儀社に依頼した場合の費用相場は、50kmまでであれば2~4万円程度です。

依頼する際は「遺体搬送のみの依頼」であることを明確に伝えましょう。

遺体の搬送・退院手続きを行う

病院で亡くなった場合でも、霊安室に遺体を安置できるのは通常2~3時間程度で、その後は遺体を搬送する必要があります。

葬儀社と打ち合わせの上、自宅や葬儀社の安置施設等の搬送先を決め、退院手続きを行い、搬送を行いましょう。

葬儀等を行わず、直接火葬する場合(直葬と言います)でも、死後24時間以内の火葬は法律で禁止されているため、必ず遺体を搬送し、安置する必要があります。

死亡退院の場合は、入院費等は後日まとめて支払うのが一般的です。

もし、退院手続きの際に入院費用等の清算も同時に行う場合、故人のお金から支払うか、遺族の誰かが立替えて支払うことになります。

いずれの場合も、トラブル防止のために明細書や領収書はしっかり残しておき、「誰が」「いつ」「いくら」支払ったのかがわかるようにしておきましょう。

葬儀について葬儀社と打ち合わせをする

遺体の搬送が終わったら、葬儀社の担当者と打ち合わせを行い、喪主や受付などの役割や段取りを決めておきましょう。

なお、通夜・葬儀は法律上の義務ではないので、葬儀を行わず直葬することも可能です。

その場合でも、死亡直後のわずかな時間で遺体の搬送や安置、死亡届の提出や火葬許可証の申請などを自分たちだけで行う事は難しいので、葬儀社に依頼した方がいいでしょう。

関係者・勤務先に連絡する

通夜・葬儀の日程が決まったら、危篤時に連絡をしていない親族や知人、会社関係者などに連絡をしましょう。

亡くなったことだけ伝えた方がいれば、日程が決まり次第忘れずに案内しておきましょう。

葬儀を身内だけの家族葬で行う場合は、知人や関係者への連絡は葬儀の後でも大丈夫です。

一般葬の場合、どこまで声をかけるべきか悩まれる方が多く、葬儀が終わった後に「葬儀に参列したかった」と言われてしまうケースもあります。

故人の意向を尊重する意味でも、出来れば生前に相談をしておき、連絡先リスト等を作成しておきましょう。

司法書士田中暢夫

連絡すべき人が頭に入っていても、亡くなった直後の動揺から連絡を忘れてしまうことがあります。
連絡先リストを一つ一つチェックして、漏れのないように連絡しましょう。

■勤務先への連絡について

会社勤めの方は、勤務先には必ず亡くなったことを伝えておきましょう。

危篤時の連絡と同様に、直属の上司に電話連絡が基本ですが、電話がつながらない場合は先にメール等で連絡しておき、後ほど改めて電話をかける形でも大丈夫です。

連絡の際は下記のことを伝えましょう。

  • 葬儀の形式(家族葬か一般葬か)
  • 葬儀会場(参列を辞退する場合は不要)
  • 会社関係者の参列の可否
  • 香典や弔電の受け入れ(辞退する場合はその旨伝える)
  • 〇月〇日まで休むこと(忌引き休暇を申請する)
  • 重要な引継ぎがあれば引継ぎ方法

※葬儀については未定であれば決まり次第の連絡で大丈夫です。また、伝え漏れがあっても必要に応じて会社から確認してくれるので、あまり気負わなくて大丈夫です。

忌引き休暇の日数は会社の規則によりますが、親が亡くなった場合は土日含めて1週間くらいが一般的です。

上司への連絡の際や忌引き休暇申請の際に確認しておきましょう。

忌引き休暇明けに出勤する際は、休み中にフォローしてくれた上司や同僚などにお詫びやお礼をしておきましょう。

忌引き休暇明けには職場にお菓子を持参するのがマナーとされていますが、「いつも必ず皆が持ってくる」という職場でなければ、どちらでも構わないでしょう。

迷う場合は持参した方が無難ですが、職場の雰囲気などを踏まえて柔軟に対応しましょう。

■学生の場合

大学生等の場合は、通っている大学などへの連絡を自分で行う必要があります。

連絡する内容は勤務先への連絡と基本的には同様です。

  • 連絡先は大学事務室(事務局)の担当部署。(学生課や教務課)
  • 担当教員には可能な限り個別に忌引きで休むことを伝える。(メールでOK)
  • レポート提出や試験期間と重なる場合は、教授に相談し対応について確認する。
  • 忌引き休暇の日数は大学の規則によるが、親が亡くなった場合は土日含めて1週間が一般的。
  • 忌引き申請の際に、証明するものの提出が必要。(会葬礼状や葬儀証明書など)

【2日目】亡くなってから2日目にやること

亡くなった翌日は主に下記3つの対応が必要になります。

■亡くなってから2日目にやること

手続きの名前時期・期限手続き先・確認先主な必要書類
死亡届の提出
※葬儀社が代行可
7日以内次のいずれかの市区町村役場
・故人の死亡地
・故人の本籍地
・届出人の所在地
死亡診断書(死体検案書)
火葬許可証の取得
※葬儀社が代行可
7日以内(死亡届と同時)同上・死亡届
・火葬許可申請書
お通夜すみやかに葬儀社、親族などなし
亡くなってから2日目にやること

なお上記のうち、死亡届の提出、火葬許可証の取得については、葬儀社に依頼すれば代行してくれることがほとんどです。

また、お通夜についても葬儀社を介して実施すること多いため、事前に葬儀社に確認しておきましょう。

以下、それぞれについて解説します。

死亡届を提出する

死亡届は、死亡の事実を知ったときから7日以内(国外で死亡した場合は3か月以内)に市区町村役場に提出する必要があります。

■死亡診断書(死亡届)の見本

死亡届の見本
死亡届(法務局HPより引用)

死亡届は、上図のように死亡診断書(死体検案書)と一体になっており、記入済みの「死亡診断書(死体検案書)」の左側の部分に、遺族が必要事項を記入します。

書き方がわからない部分は役所の窓口で教えてもらえるので、空欄のまま持参しましょう。

司法書士田中暢夫

死亡届の届出人(通常は親族)と提出者は異なっていても問題ないので、記入は親族が行った上で、提出は葬儀社が代行するのが一般的です。

本籍の記載について

本籍とはその方の戸籍の所在地であり、住所とは異なります。

ほとんどの場合、現在の住所や以前住んでいた住所の所在地を本籍としていますが、本籍は住所と関係なく日本国内のどこにでも自由に設定できるため、まったく関係ない場所を本籍としているケースもあります。

また自治体により表示方法が異なるため、事実上同じ所在地であっても微妙に表記が異なることが良くあります。

例えば東京23区では、住所が「東京都渋谷区渋谷1丁目1番地1号」だとすると、まったく同じ場所に本籍を置いていても、戸籍には「東京都渋谷区渋谷1丁目1番」までしか表示されません。

死亡届を記入する際に本籍や戸籍筆頭者がわからないというのはよくあることです。

その場合は本籍の欄を空欄のまま提出すれば、役所の窓口で調べてもらえます。(死亡届提出の状況によっては調べてもらえないこともあります。)

故人の本籍地がどこかは、後の相続手続きのために戸籍を取得する際に必ず必要になるので、この機会にきちんと把握しておきましょう。

火葬許可証を取得する

通常、葬儀の後はそのまま火葬することになりますが、そのためには事前に火葬許可証を取得しておく必要があります。

死亡届を提出しなければ火葬許可が下りないので、死亡届提出の際に、一緒に火葬許可証を取得します。

自治体により、死亡届の提出のみで火葬許可証を発行してくれる所と、下図のような火葬許可申請書の記入が必要な所があります。

■死亡診断書(死亡届)の見本

死体埋火葬許可申請書記入例
死体埋火葬許可申請書記入例(川崎市HPより引用)
司法書士田中暢夫

火葬許可証の取得についても死亡届の提出と同時に葬儀社が代行するのが一般的です。

お通夜

お通夜は、葬儀の前夜に行われる儀式であり、家族、親等の近い親戚、特に親しい知人などが参列します。

地域、宗派によって違いはあるものの、僧侶の読経、参列者による焼香、僧侶の法話などの後で、通夜振る舞い(参列者に飲食を振る舞い、もてなすこと)が行われることが一般的です。

お通夜は通常亡くなった翌日の夜に行いますが、深夜や早朝に亡くなった場合は死亡当日に行う事もあります。

また、年末年始などで火葬場の予約が取れない場合は、火葬の日に合わせてお通夜・葬儀の日を決めることになります。

本来通夜は「死者を葬る前に遺体を夜通しで守ること」を意味し、親族・知人が故人に付き添い一夜を明かすという風習でしたが、近年では時代の変化に伴い儀式化され、2~3時間ほどで終了する「半通夜」が行われることが多くなっています。

直葬や一日葬の場合を除き、葬儀社に依頼すれば通常はお通夜もサポートしてくれます。

会場の準備や参列者の案内などは基本的に任せることができるので、家族として対応するのは参列者の出迎えや見送りなどが主になります。

また、喪主になる人は、挨拶などについて葬儀社と打ち合わせをして備えましょう。

司法書士田中暢夫

通夜~葬儀~火葬までの一連の流れは、基本的には葬儀社が主導してくれるので、それほど気負わずとも大丈夫です。

■通夜・葬儀の服装について

通夜・葬儀の際の服装については、親族であれば喪服が一般的です。

ただ最近では、正式な喪服(モーニングスーツや紋付羽織袴)を着用することはほとんどなく、男女ともに通夜・葬儀を通していわゆるブラックフォーマルを着用することがほとんどです。

  • 男性の服装…光沢のない黒のスーツ、黒いネクタイ
  • 女性の服装…光沢のない黒のスーツ・ワンピース・アンサンブル
  • 子供(高校生以下)の服装…制服が基本、制服が無い場合や派手な色合いの場合は黒や紺、グレーなどの地味な色合いの服装

喪服が準備できなかった場合は、オンラインの喪服レンタルサービス等を利用するほか、親族であれば葬儀社に相談して喪服をレンタルすることも可能です。

【3日目】亡くなってから3日目にやること

亡くなってから3日目は、葬儀や火葬を行います。

■亡くなってから3日目にやること

手続きの名前時期・期限手続き先・確認先主な必要書類
葬儀・告別式すみやかに葬儀社、親族などなし
出棺・火葬すみやかに葬儀社、火葬場火葬許可証
亡くなってから3日目にやること

以下、それぞれについて解説します。

葬儀・告別式

葬儀と告別式は本来別のものですが、現在では両者を明確に区別せず、まとめて「お葬式」として執り行うことが一般的です。

葬儀・告別式では、喪主が中心となり参列者や僧侶に対応します。

喪主を誰が務めるかについて明確な決まりはありませんが、親が亡くなった場合、配偶者が存命であれば配偶者が、配偶者がいない・高齢や病気のため喪主を務めるのが困難なときは、長男や長女が喪主を務めるのが一般的です。

喪主には表向き葬儀を取り仕切るという重要な役割があるので、心構えをしておきましょう。

司法書士田中暢夫

通夜~葬儀~火葬までの一連の流れは、基本的には葬儀社が主導してくれるので、それほど気負わずとも大丈夫です。

■喪主のやることとは

通夜~葬儀~火葬の一連の流れで喪主(遺族代表)が対応することは、一般的には下記になります。

【通夜】

  • 席次、焼香順、供花の配置の確認
  • 返礼品や会葬礼状の確認
  • 僧侶への対応(挨拶、お布施のお渡し、見送り)
  • 喪主挨拶

【葬儀・告別式】

  • 弔辞・弔電の確認
  • 喪主挨拶
  • 火葬場へ同行する親族の確認

最も苦手と感じる方が多いのが喪主挨拶ですが、葬儀社に相談すれば挨拶の原稿などは用意してくれると思います。

インターネット等で例文を探して参考にするのもいいでしょう。

挨拶は長すぎてもよくないので2~3分程度(文字数にして600~1000字程度))にまとめましょう。手控えを見ながらの挨拶でも大丈夫です。

■親の葬儀で子供は香典を包むべき?

実の親の葬儀であっても、喪主以外の子供は香典を包むのが一般的とされています。(未成年の子供は除く)

香典の相場は、親の葬儀では10万円が目安とされています。

ただし、喪主が香典不要とされているのは、喪主が葬儀費用を支払う主催者(=香典を受け取る者)という前提あっての話です。

実際のところ、喪主と言っても名目上のものであり、葬儀費用は親の遺産から支払う(=家族全員が負担する)、というケースは少なくありません。

そういったケースでは、喪主だけが香典不要とすると不公平感があるかもしれません。(名目上とはいえ、喪主の負担は少なくないのですが…)

むしろ子供たち全員が香典を包まない、あるいは喪主含めて全員が同額の香典を包むとする方が面倒なく済むかもしれません。

この辺りは実の親子・兄弟間のことなので、率直に話し合って決めればいいでしょう。

出棺・火葬

故人との最後のお別れを終えたら、遺族の男性等で棺を霊柩車に運び、火葬場へ向かいます。

遺族の代表者が霊柩車に同乗し、他の人は自家用車やバス・タクシーなどで火葬場に向かいます。

一般的には、遺族以外で火葬に同行するのは、故人と特に関係が深かった人だけです。

火葬場に到着したら、担当者や僧侶の指示に従って、最後のお別れをします。

火葬には1時間~2時間ほどかかるため、控室に移動して待ちます。

このとき参列者に出すお茶菓子や軽食についても忘れずに手配をしておきましょう。

火葬が終わったら、全員で収骨室に向かい、ご遺骨を骨壺に納める「骨上げ」の儀式を行います。

最後に骨壺と火葬済印が押された火葬許可証(埋葬許可証)を受け取って、火葬場を後にします。

押印済の火葬許可証(埋葬許可証)は、埋葬(納骨)のときに墓地や霊園に提出します。

万が一紛失してしまった場合は、役所で再発行の手続きを行いましょう。

その後は地域の慣習にもよりますが、自宅に戻り遺骨法要と初七日法要、精進落としなどを行うことが多いです。

司法書士田中暢夫

通夜~葬儀~火葬までの一連の流れは、基本的には葬儀社が主導してくれるので、それほど気負わずとも大丈夫です。

火葬場に向かう際、火葬許可証がどこにあるかは必ず確認しましょう。

火葬許可証が無ければ火葬はできません。

火葬許可証の取得を葬儀社が代行した場合はそのまま預かっていることが多いですが、担当者の勘違いや遺族が受け取っている可能性もあるので、念のため確認しておきましょう。

【7日目まで】亡くなってから7日目までにやること

亡くなってから3~7日目までにやることは、初七日法要や葬儀代の支払いなどです。

実際には、初七日法要は葬儀と同日に執り行われることが多いです。

■亡くなってから7日目までにやること

手続きの名前時期・期限手続き先・確認先主な必要書類
初七日法要7日以内葬儀社、親族などなし
葬儀費用の支払い領収書の受取り葬儀終了後すみやかに葬儀社なし
亡くなってから7日目までにやること

以下、それぞれについて解説します。

初七日法要

初七日法要は、名前のとおり、本来は亡くなってから七日目に執り行う儀式です。

しかし、現在では遠方に住む方の日程調整が難しい等の事情もあり、葬儀と同日に初七日法要を行う事も一般化しています。

葬儀と同日に初七日法要を行う場合、火葬後に行う「繰り上げ法要」と、葬儀の式中に繰り込む「繰り込み法要」のどちらかで行います。

どちらで行うかは地域の風習や宗派によっても異なるので、お寺や周りの方に相談しましょう。

また、本来は四十九日の忌明けの際に行う「精進落とし」についても、時代の変化に伴い、葬儀、初七日法要の後に行われることが多くなっています。

司法書士田中暢夫

初七日法要についても、葬儀社がまとめて対応してくれるケースも多いようです。
特にこだわりがなければ、先に葬儀社に確認しておき、任せてしまってもいいでしょう。

葬儀費用の支払い

葬儀社から葬儀費用の請求書を受け取ったら速やかに支払います。

支払期限は通常、請求書が届いてから1週間または10日以内です。

なお、葬儀費用は後日払いが一般的ですが、葬儀社や葬儀プランによっては、当日払いのケースや一部を前金として先払いするケースもあるので、事前にしっかり確認しておきましょう。

支払方法は葬儀社指定の銀行口座への振り込み払いが一般的ですが、最近ではクレジットカード払いやコンビニ払いに対応している葬儀社も増えています。

一括での支払いが難しい方は、葬儀ローンを利用するという選択肢もあります。

■故人の口座から葬儀費用を支払う場合

葬儀費用は高額なため、亡くなった親の口座から支払いたいという方は多いです。

その場合、下記の点には気を付けましょう。

  1. 金融機関に死亡したことを伝えると、口座が凍結され引き出しできなくなる。
  2. 後々トラブルにならないように、引き出しについて他の相続人の了承を得ておく。
  3. 必要以上の金額を引き出さない
  4. 引き出した金額と葬儀費用がわかる明細はとっておく。

領収書の受取り

葬儀費用を支払ったら、必ず領収書を受け取っておきましょう。

領収書が必要な理由は主に下記の2つです。

  1. 葬祭費の支給申請に必要なため
  2. 相続税の申告の際に必要なため

葬祭費は、故人が国民健康保険加入者だった場合に自治体から支給されるお金です。

支給申請の際には葬儀費用の領収書の提出が必要なので、必ずコピーを取っておきましょう。

また、領収書の宛名は必ず喪主個人宛にしてもらいましょう。

“○○家”“○○様ご遺族”等の記載だと葬祭費の支給申請に支障が出るため注意しましょう。

また、相続税申告の際には、プラスの遺産額から葬儀費用を控除することができます。

そこで控除できる額を確認・証明するために領収証書のコピーの提出が必要になります。

相続税申告の際は領収書の他に、葬儀費用の内訳がわかるもの(明細書、見積書など)が必要になることが多いので、あわせて保管しておきましょう。

■領収書がないお布施はどうなる?

相続税申告の際に控除できる葬儀費用には、お寺(僧侶)に支払うお布施も含まれます。

しかし、お布施に対して領収書を発行することは一般的ではありません。

そこで、お布施については、領収書の代わりに相続人が作成したメモを提出することができます。

具体的には下記のような内容のメモです。

「〇月〇日支払い ○○寺 お布施として 30万円」

メモは手書きでも、エクセルやワードで作成したものでも構いません。

なお、最近ではお布施に対して領収書を発行してくれるお寺もあるようです。

【14日目まで】14日目までにやること①(役所関係の手続き)

葬儀・法要関係が一段落したら、徐々に各種の届出や手続きを行って行きましょう。

手続きの順番は特に決まっていませんが、手続きに戸籍謄本が必要になる関係で、まず役所に足を運ぶことが多いので、役所関係の手続きはまとめて行っておくといいでしょう。

親が亡くなった後に必要な役所関係の主な手続きは以下のとおりです。

■14日目までにやること①(役所関係の手続き)

手続きの名前時期・期限手続き先・確認先主な必要書類
健康保険・介護保険の資格喪失手続き14日以内市区町村役場等保険証等
葬祭費・埋葬料の請求すみやかに(2年で時効)市区町村役場等領収書、保険証等
国民健康保険・国民年金の加入手続き14日以内市区町村役場健康保険資格喪失証明書等
世帯主の変更届14日以内市区町村役場身分証等
戸籍の請求(窓口請求)
※戸籍に死亡が反映されるまで1~2週間程度かかる
死亡届の提出から1週間経過後市区町村役場等身分証等
14日目までにやること①(役所関係の手続き)

役所関係の手続きは、ほとんどが役所の窓口に書類を出すだけで完了することが多く、早ければ葬儀終了後数日以内に終わらせることも可能です。

ただし、戸籍に死亡の記載がされるまでは死亡届の提出後1~2週間程度かかるので注意しましょう。

一応、14日以内が期限とされている手続きがあるので、14日目までに終わらせることを目安としましょう。

以下、それぞれについて解説します。

健康保険・介護保険の資格喪失手続き

亡くなった親が加入していた健康保険や介護保険について、資格喪失届の提出と保険証等(資格確認書・被保険者証)の返却を行います。

国民健康保険および介護保険に加入していた場合は、亡くなってから14日以内に故人の住所地の市区町村役場に連絡をします。

自治体によっては下記の対応となる場合があるので、事前にホームページや電話で確認することをおすすめします。

  • 死亡届の提出のみでOK
  • 保険証の提出のみでOK
  • 電話で申し出るだけでOK
  • 保険証等の返却は不要(自分で処分してOK)

    一方、社会保険に加入していた場合は各健康保険組合での手続きとなりますが、基本的には勤務先で手続きすることになるので確認しましょう。

    司法書士田中暢夫

    会社員の方が亡くなった場合、会社関係の手続きは勤務先でまとめて対応してくれることが多いので、まず勤務先に確認しましょう。

    資格喪失手続きは遅れても罰則はなく、期限後でも手続き自体は可能です。

    ただし、手続きをせずに放置すると保険料を払い過ぎ(納め過ぎ)となってしまう可能性があります。

    納め過ぎた保険料は手続きをすれば後で遺族に返金(還付)されます。

    ■公的保険の資格喪失手続き

    加入していた保険手続きの期限手続き先
    国民健康保険亡くなった日から14日以内市区町村役場
    社会保険亡くなった日から5日以内勤務先または健康保険組合
    介護保険亡くなった日から14日以内市区町村役場
    公的保険の資格喪失手続き
    司法書士田中暢夫

    亡くなった方が社会保険加入者で、家族が扶養に入っていた場合、国民健康保険の加入手続き等が必要になります。詳しくは後述します。

    マイナンバーカード、パスポート、運転免許証などはどうすればいい?

    保険証以外の身分証明書(マイナンバーカード、パスポート、運転免許証など)についても、返却が必要なのでしょうか?

    この点、マイナンバーカードは死亡届の提出により無効化されるため、返却は不要とされています。

    相続手続きで故人のマイナンバーが必要になることがあるため、しばらくは持っておき、すべての手続きが完了した段階でハサミを入れるなどして破棄するのがいいでしょう。

    他方、パスポートや運転免許証(運転経歴証明書)については、一般的には本人死亡後は遺族が返納するものとされています。

    ただし、実際には返納しなくても罰則はないため、マイナンバーカードと同様に自分で破棄するか、たまたまパスポートセンターや警察署に出向いたときに返納するかでいいでしょう。

    思い出の品として持っておくなら、悪用されないように保管方法には気を付けましょう。

    葬祭費・埋葬料の請求

    葬祭費・埋葬料は、手続きをするとお金がもらえるので必ず行っておきましょう。

    葬祭費・埋葬料とは、故人が加入していた健康保険から、喪主や遺族に対して支給される給付金のことです。

    国民健康保険(後期高齢者医療制度)加入者が亡くなった場合は、市区町村役場で手続きをすれば、3~8万円*の葬祭費が申請人(喪主)に対して支給されます。

    *支給金額は自治体により異なる。

    葬祭費の支給申請には葬儀費用の領収書が必要になります。

    領収書の宛名が喪主個人宛になっているものでないと受け付けられないので、確認しておきましょう。

    支給申請の際に保険証(資格確認証、被保険者証)の提出が必要な場合がありますが、すでに保険証を返却している場合は提出不要です。

    一方、社会保険加入者が亡くなった場合は、一定の遺族に対して一律5万円の埋葬料(埋葬費)が支給されます。

    こちらは各健康保険組合に申請しますが、基本的には勤務先で他の手続きと一緒に対応してくれることが多いので確認しましょう。

    司法書士田中暢夫

    会社員の方が亡くなった場合、会社関係の手続きは勤務先でまとめて対応してくれることが多いので、まず勤務先に確認しましょう。

    葬祭費・埋葬料の請求手続きの期限は、死亡日又は葬儀を行った日の翌日から2年以内です。

    期限を過ぎると時効により権利が消滅してしまうので、葬儀費用を支払い、領収書を受け取ったらすぐに役所に出向いて手続きを行いましょう。

    葬祭費埋葬料(埋葬費)の請求手続き

    葬祭費 埋葬料(埋葬費)
    保険の種類国民健康保険
    または
    後期高齢者医療制度
    社会保険
    申請期限葬儀の翌日から2年死亡日の翌日から2年
    申請できる人葬儀を行った方(喪主)一定の遺族
    申請先市区町村役場健康保険組合
    支給額3~8万円(自治体による)5万円(一律)
    主な必要書類
    ※自治体や請求の状況によって異なるので要確認
    1.葬儀費用の領収書等(宛名が申請人になっているもの)
    2.故人の保険証(資格確認証、被保険者証)
    3.申請人の預金口座番号がわかるもの(預金通帳等)
    4.申請人の身分証明書(運転免許証等)
    5.葬祭費支給申請書(役所の窓口で貰えます)
    1.亡くなった方の健康保険証(在職中に亡くなった場合は事業主より返却)
    2.死亡診断書・埋葬許可証・火葬許可証等の写し(申請書に事業主の証明があれば不要)
    3.生計維持を確認できる書類(住民票等、被扶養者による申請の場合は不要)
    4.埋葬料(費)支給申請書(各組合の窓口や郵送で貰えます)
    葬祭費・埋葬料(埋葬費)の請求手続き

    葬祭費・埋葬料の請求についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

    国民健康保険・国民年金の加入手続き

    亡くなった方が社会保険の被保険者(会社員など)で、家族が扶養に入っていた場合、遺族(被扶養者)は、下記いずれかで新たに健康保険等に加入する必要があります。

    • 国民健康保険に加入する。
    • 職場の社会保険に加入する。
    • 他の家族の扶養に入る。(社会保険の被扶養者になる)

    多くのケースは①に該当すると思います。この場合、国民健康保険は世帯単位で加入することになります。

    ②については、勤務状況によっては勤務先の社会保険に加入できる場合があります。上司や人事・総務担当者に確認してみましょう。

    一定の条件を満たす場合は、③(親が子の扶養に入るなど)が可能な場合もあるので確認してみてください。

    また、亡くなった方が会社員等の場合、厚生年金の加入者(第2号被保険者)でもあることが多いですが、この場合、被扶養者の人は国民年金の「第3号被保険者」に該当します。

    健康保険と同様にこの場合も、職場の厚生年金や他の家族の扶養に入るか、国民年金の加入手続き(第3号被保険者から第1号被保険者への種別変更の手続き)が必要になります。

    国民健康保険や国民年金に加入する場合は、故人の勤務先から「健康保険資格喪失証明書」を発行してもらい、市区町村役場で手続きを行いましょう。

    手続きの期限は、退職日(死亡日)の翌日から14日以内です。

    職場の社会保険・厚生年金に加入する場合や、家族の扶養に入る場合は勤務先の事業所を通じて手続きをすることになります。

    下記のホームページも参考にしてください。

    国民年金に加入するための手続き|日本年金機構

    司法書士田中暢夫

    会社員の方が亡くなった場合、会社関係の手続きは基本的に勤務先で対応してくれますが、国保・国民年金の加入手続きは自分で行う必要があるので気を付けましょう。

    世帯主の変更届

    下記に該当する場合、世帯主変更の届出をする必要があります。

    • 住民票上の世帯主が死亡した
    • 世帯主の死亡後、世帯に15歳以上の人が2人以上残っている。
    世帯主の変更が必要な場合・不要な場合
    司法書士田中暢夫

    世帯に誰も残っていない場合は当然届出不要ですが、世帯に残っている15歳以上が一人だけの場合も、その人が自動的に世帯主となるため届出は不要です。

    届出が必要な場合は、亡くなってから14日以内に新しい世帯主を決めて、市区町村役場に「世帯主変更届」を提出します。

    期限を過ぎても手続き自体は可能ですが、届出の際に遅れた理由を記載した「提出期間経過通知書」の提出が必要になります。

    戸籍の請求(窓口請求)

    ほとんどの相続手続きでは、相続関係の証明のために戸籍謄本が必要になるため、役所に出向いた際に請求・取得しておくと後で楽です。

    親の相続手続きの際に必要になる戸籍謄本には下記のような種類があります。

    1. 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
    2. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等(①を含む)
    3. 相続員全員の現在戸籍謄本

    ※相続関係によってはこれ以外の戸籍が必要な場合もあります。

    ■相続手続きに必要な戸籍

    相続手続きに必要な戸籍
    相続手続きに必要な戸籍

    上記のうち、被相続人(亡くなった人)の本籍地の市区町村役場に行けば、「①被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本」は確実に取得できます。

    年金の手続きや保険金の請求など、使用する機会が多いので3~5通ほど取得しておくといいでしょう。

    また、「②被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等」についても、同じ役所である程度揃うケースがあるので、あるだけ請求しておきましょう。

    「③相続人全員の現在戸籍謄本」については、故人の配偶者及び未婚の子供は「①被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本」の中に記載されているので重複しての取得は不要です。

    なお、本籍地と住所地は必ずしも一致しないので、本籍地が遠方の場合は郵送請求や後述する「戸籍の広域交付制度」の利用をおすすめします。

    司法書士田中暢夫

    窓口で請求する際は、担当者に「親が亡くなったので相続手続きで必要な戸籍をここで取れるだけ全てください。死亡の記載のある戸籍は多めに(3~5通)ください。」と伝えれば大丈夫です。

    ■戸籍に死亡の旨が記載されるのはいつ?

    亡くなった人の戸籍に「死亡」の記載がされるのは、死亡届を提出してから1~2週間後です。

    死亡届を提出したのが故人の本籍地の役所であれば、1週間程度で記載されますが、本籍地以外の役所の場合は2週間程度かかることもあります。

    死亡の記載がされる前の戸籍を取得しても相続手続きで使えないので、葬儀から間もなく戸籍を請求する場合は気を付けてください。

    戸籍の種類や請求方法についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

    【14日目まで】亡くなってから14日目までにやること②(年金関係の手続き)

    亡くなった方が年金受給者だった場合、遺族の方が未支給年金や遺族年金などを受けられる可能性があるので、必ず手続きを行いましょう。

    また、年金受給前でも一定の条件に該当する場合は、遺族が死亡一時金や遺族年金などを受給できる場合があります。

    親が亡くなった後に必要な公的年金関係の主な手続きは以下のとおりです。

    亡くなってから14日目までにやること②(年金関係の手続き)

    手続きの名前時期・期限手続き先・確認先 主な必要書類
    年金受給停止手続き
    ※原則対応不要
    14日以内(10日以内)年金事務所等基礎年金番号がわかるもの(年金証書等)
    未支給年金の請求5年で時効年金事務所等戸籍謄本等
    遺族基礎年金の請求5年で時効市区町村役場、年金事務所等戸籍謄本等
    遺族厚生年金の請求5年で時効年金事務所等戸籍謄本等
    死亡一時金の請求2年で時効市区町村役場、年金事務所等戸籍謄本等
    亡くなってから14日目までにやること②(年金関係の手続き)

    受給のためには請求書や戸籍謄本を提出する必要があるので、詳しくはお近くの年金事務所や街角の年金相談センター等でご相談ください。

    年金関係の手続きについては、年金事務所(又は街角の年金相談センター)にまとめて相談することができます。

    どの年金を請求できるかわからなくても、年金事務所で確認してくれます。

    年金事務所(又は街角の年金相談センター)での相談は原則として予約優先なので、事前に電話で予約してから行きましょう。

    参考

    全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

    ■年金請求用の戸籍謄本について

    未支給年金や遺族年金等の請求の際には、原則として亡くなった方と請求者の関係がわかる戸籍謄本が必要になります。

    この戸籍については、請求する方が亡くなった方の配偶者または子の場合、年金請求書にマイナンバーを記入することで添付を省略できます。

    また、マイナンバーを記載せず、戸籍謄本の現物を添付する場合も、公的年金請求用の戸籍謄本については無料で発行してもらえます*。

    請求する際には「公的年金請求用」であることを明確に伝えましょう。

    なお、年金請求用の戸籍謄本にはその旨が明記されるため、他の相続手続き(預貯金や不動産の手続き)には使用できません。

    *市区町村によって運用に若干の違いがあるため、無料にならないケースもあるようです。詳しくは役所に確認してください。

    以下、それぞれについてくわしく解説します。

    年金受給停止手続き

    亡くなった方のマイナンバーが日本年金機構に登録(収録)されている場合は、年金受給停止手続き(受給権者死亡届の提出)は不要です。

    この場合、役所に死亡届を提出すると日本年金機構に情報が連携され、自動的に年金の支給が停止されます。

    日本年金機構におけるマイナンバーの登録率(基礎年金番号との紐付け率)は、令和7年3月末時点で99.82%に達しています*。

    *厚生労働省「日本年金機構の令和6年度業務実績の評価」より

    司法書士田中暢夫

    つまり、ほとんどの方は役所に死亡届さえ出せば、受給停止の手続きは不要という事になります。

    ただし、後述する未支給年金の請求遺族年金の請求は自動的には行われず、別途手続きが必要です。

    結局のところ、年金受給者が亡くなったら一度年金事務所で相談して、必要な手続きを確認するのがいいでしょう。

    もし未支給年金も遺族年金も確実に請求できない場合は、ねんきんダイヤルまたは金事務所に電話して、「受給停止の手続きは不要か(故人のマイナンバーが登録されているか)」を確認しておきましょう。

    参考

    Q. マイナンバーが収録されている場合に省略できる届出は何ですか。|日本年金機構

    もし何らかの理由で故人のマイナンバーが登録されていない場合は、年金受給停止の手続きをする必要があります。

    国民年金は亡くなった日から14日以内、厚生年金は10日以内に年金事務所に連絡し、「受給権者死亡届」を提出しましょう。郵送での提出も可能です。

    期限に遅れても意図的でない限り罰則はありませんが、もし死亡後もしばらく停止せずに過払いの状態になってしまった場合は、後日多く受け取った分を返還する必要があります。

    司法書士田中暢夫

    受給停止手続きが不要な方も、未支給年金など何らかの請求ができる可能性があるので、一度年金事務所で相談して、必要な手続きを確認しておきましょう。

    未支給年金の請求

    亡くなった方が年金受給者だった場合、一定の要件を満たす遺族は未支給年金を請求できます。

    未支給年金とは、年金受給者が受取る前に亡くなったことで、まだ支払われずにいる年金のことです。

    日本の公的年金は原則として後払い(偶数月の15日に前月・前々月分を支給)のため、受給者が亡くなると、死亡した月までの年金が未支給分として発生します。

    未支給年金は、受給者と生計を同一にしていた遺族が請求します。

    同居親族がいれば確実に請求可能ですが、同居者がいない場合でも請求できる可能性があるので、誰がどのように請求できるか含めて、一度お近くの年金事務所(又は街角の年金相談センター)で相談してみましょう。

    参考

    全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

    年金事務所(又は街角の年金相談センター)での相談は原則として予約優先なので、事前に電話で予約してから行きましょう。

    受給者が亡くなった日の翌日から5年以内に請求しないと時効で権利が消滅するので、請求できる場合は早めに手続きしておきましょう。

    【請求できる人】

    亡くなった方と生計を同じくしていた下記の方優先順位もこの順番*)

    (1)配偶者 (2)(3)父母 (4)(5)祖父母 (6)兄弟姉妹

    (7)その他(1)から(6)以外の3親等内の親族

    *先順位者がいない場合に限り後順位者が請求可能。同順位者が2名以上いる場合は、そのうち1名が代表して請求する。

    【必要書類】

    必要書類補足説明
    未支給年金請求書日本年金機構HPよりダウンロード可能
    亡くなった方の年金証書紛失している場合は不要
    請求者のマイナンバーが確認できる書類マイナンバーカード、通知カード、マイナンバー入り住民票など
    戸籍謄本
    (又は法定相続情報一覧図)
    亡くなった方と請求者の続柄が確認できる戸籍謄本等
    請求者の世帯全員の住民票・死亡日以降に発行されたもの
    ・亡くなった方と請求者が住民票上、同住所同世帯の場合は原則不要
    ・請求者のマイナンバーを請求書に記入した場合は不要
    生計同一関係に関する申立書亡くなった方と請求者が住民票上、同住所の場合は不要
    日本年金機構HPよりダウンロード可能
    未支給年金の振込先口座がわかるもの預金通帳のコピーなど(金融機関名、支店名、口座名義人氏名フリガナ、預金種別、口座番号の確認ができるページ)
    未支給年金請求の必要書類

    請求書の記入方法や提出方法等については下記の日本年金機構のホームページを参考にしてください。

    年金を受けている方が亡くなったとき|日本年金機構

    ■請求書の記載方法案内動画

    YouTube厚生労働省チャンネルに、請求書の記載方法の説明動画が掲載されています。

     ≫年金受給権者死亡届兼未支給年金・未支払給付金請求書の記入方法について|日本年金機構

    ■生計同一について

    請求者の要件である「亡くなった方と生計を同じくしていた」とは、以下のいずれかに該当する場合を言います。

    1. 亡くなった方と住民票上の同一世帯であった
    2. 住民票上は別世帯だったが、住民票上の住所が同一であった
    3. 住民票上は別世帯(別住所)だったが、実際は同居していた
    4. 住民票上は別世帯(別住所)だったが、経済的な援助及び定期的な音信訪問があった(請求者が配偶者または子の場合)
    5. 住民票上は別世帯(別住所)だったが、生活費、療養費などについて経済的な援助があった(請求者が配偶者・子以外の場合)

    上記のうち、①②に該当する場合は「生計同一関係に関する申立書」は提出不要です。

    ③④⑤に該当する場合は、「生計同一関係に関する申立書」に記入の上、生計同一関係証明書類を添付するか、生計同一関係に関する申立書の「第三者による証明欄」を第三者に記入してもらう必要があります。

    生計同一関係に関する申立書は下図のような書類です。

    日本年金機構のホームページからダウンロードできます。

    生計同一関係・事実婚関係に関する申立をするとき|日本年金機構

    ■生計同一関係に関する申立書(第三者による証明欄)

    生計同一関係に関する申立書(第三者による証明欄・記入時の注意)
    生計同一関係に関する申立書(日本年金機構HPより引用)

    生計同一関係証明書類を添付できる場合は、第三者による証明は不要です。

    生計同一証明書類については日本年金機構の案内を参考にしてください

    生計同一関係証明書類等について(PDF)|日本年金機構

    第三者に証明してもらう場合、「民法上の三親等内の親族に該当しない」第三者に記入してもらう必要があります。

    三親等内の親族でなく、亡くなった方と請求者の生活・交流状況を知っている人であれば誰でも大丈夫です。法人(会社、病院、施設)や個人商店による証明も可能です。

    知人、近所の人、町内会長、民生委員、ケアマネージャー、病院や施設の関係者、大家など、頼めそうな人にお願いしましょう。

    ■同居していない場合の生計同一の判定は厳しい?

    亡くなった方と同居していない場合の生計同一要件である「経済的な援助及び定期的な音信訪問」について、明確な基準は公開されていません。

    経済的援助は請求者(子)から年金受給者(親)に対する援助だけでなく、年金受給者(親)から請求者(子)に対する援助でも問題ありません。

    現金による援助だけでなく、衣料・食事・住宅・介護・日用品等の現物による援助も含まれます。

    音信訪問については、「毎週病院に通って身の回りの世話をしていた」「毎週電話(又はメール)で健康状態などを確認していた」等であれば問題なく満たすものと思われますが、もう少し軽い関係性であっても大丈夫なようです。

    具体的には下記のような事例でも認められるようです。

    • 年に数回自宅に行き、外で一緒に食事をしていた。
    • 数か月に一度、入居施設に行く際に、自費で日用品を購入して持参していた。
    • 月に一度電話で近況を報告し、親から生活費として○○円仕送りしてもらっていた。

    なお、上記は当事務所の依頼者又は年金事務所の職員から聞いた話ですが、実際にどのようなケースで生計同一が認められるかについては年金事務所等で相談・確認してください。

    遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)の請求

    亡くなった方の公的年金の加入状況によって、配偶者など一定の要件を満たす遺族は遺族年金を請求できます。

    遺族年金とは、家計を維持していた人が死亡した場合に遺族が受給できる年金のことです。

    遺族年金には、故人が加入していた年金により「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の二種類があります。

    【遺族年金の請求手続き】

    加入していた年金請求(受給)できる人手続き先
    遺族基礎年金国民年金(第1号被保険者、第3号被保険者)故人によって生計維持されていた
    1.子*のいる配偶者
    2.子*

    *当年度末時点で18歳以下の子又は重い障害がある場合は20歳未満の子
    市区町村役場、年金事務所等
    遺族厚生年金厚生年金(第2号被保険者)故人によって生計維持されていた
    1.子のいる配偶者
    2.子*
    3.子のいない配偶者
    4.父母
    5.孫*
    6.祖父母

    *当年度末時点で18歳以下の子(孫)又は重い障害がある場合は20歳未満の子(孫)
    年金事務所等
    遺族年金の請求手続き

    どちらの遺族年金かわからない場合は大まかに下記のとおりと考えてください。

    • 故人が会社員や公務員だった期間がそれなりにあれば遺族厚生年金(+遺族基礎年金)
    • 故人がずっと自営業だった場合は遺族基礎年金のみ

    どちらかわからない場合でも、年金事務所で相談すれば確認してくれます。

    未支給年金の請求も含めて、とりあえず年金事務所(又は街角の年金相談センター)でまとめて相談することをおすすめします。

    いずれも、受給者が亡くなった日の翌日から5年以内に請求しないと時効で権利が消滅するので、請求できる場合は早めに手続きしておきましょう。

    ■遺族基礎年金の請求

    亡くなった方が、国民年金の加入者だった場合、請求できるのは「遺族基礎年金」です。

    自営業者の方が亡くなった場合などが該当します。

    【請求できる場合】

    国民年金の被保険者または被保険者だった方が亡くなったとき

    【請求できる人】

    亡くなった方に生計を維持されていた下記の方優先順位もこの順番 ※1

    1. 子のいる配偶者 ※2
    2. ※2

    ※1 先順位者がいない場合に限り後順位者が請求可能。同順位者が2名以上いる場合は全員が請求(受給)できる。

    ※2 ここでいう「子」とは下記いずれかに該当する亡くなった方の子供のこと

    ・18歳になった年度の3月31日までにある方(当年度末時点で18歳以下の方)

    ・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方(20歳未満の重い障害がある方)

      わかりやすく言うと、「亡くなった方に高校生以下の子供がいる場合は、配偶者(いない場合は子供)が遺族基礎年金を請求(受給)できる可能性がある。」という事です。

      自分や家族が請求できるかわからない方は、年金事務所(又は街角の年金相談センター)に相談すれば、必要書類や請求方法含めて詳しく案内してくれます。

      未支給年金の請求とあわせて相談するといいでしょう。

      下記の日本年金機構のホームページも参考にしてください。

      司法書士田中暢夫

      年金事務所では遺族基礎年金についての相談も受け付けてくれるので、相談してみましょう。

      ■遺族厚生年金の請求

      亡くなった方が、厚生年金の加入者だった場合、請求できるのは「遺族厚生年金」です。

      会社員や公務員の方が亡くなった場合などが該当します。

      【請求できる場合】

      厚生年金の被保険者または被保険者だった方が亡くなったとき

      【請求できる人】

      亡くなった方に生計を維持されていた下記の方優先順位もこの順番 ※1

      • 子のいる配偶者
      • ※2
      • 子のいない配偶者 ※3
      • 父母 ※4
      • ※2
      • 祖父母 ※4

      ※1 先順位者がいない場合に限り後順位者が請求可能。同順位者が2名以上いる場合は全員が請求(受給)できる。

      ※2 ここでいう「子」(孫)とは下記いずれかに該当する亡くなった方の子供(孫)のこと

      18歳になった年度の3月31日までにある方(当年度末時点で18歳以下の方)

      20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方(20歳未満の重い障害がある方)

      ※3 受給できる年齢、年数等に制限有り

      ※4 受給できる年齢に制限有り

      本記事の趣旨(親が亡くなった場合)に合わせてわかりやすく言うと、「亡くなった方の配偶者(配偶者がいない場合は高校生以下の子供)は、遺族厚生年金を請求(受給)できる可能性がある。」という事です。

      なお、配偶者や子が遺族基礎年金の受給要件を満たしている場合は、遺族厚生年金とあわせて受給(併給)できます。

      両方請求できる場合でも手続きは年金事務所でまとめて行うことができます。

      自分や家族が請求できるかわからない方は、年金事務所(又は街角の年金相談センター)に相談すれば、必要書類や請求方法含めて詳しく案内してくれます。

      未支給年金の請求とあわせて相談するといいでしょう。

      下記の日本年金機構のホームページも参考にしてください。

      死亡一時金の請求

      国民年金の加入者(第1号被保険者)が年金受給開始前に亡くなったときに、遺族基礎年金の受給要件を満たさない場合、一定の遺族は死亡一時金を請求できます。

      【請求できる場合】

      国民年金の第1号被保険者*が亡くなったときに下記の要件を満たす場合

      *配偶者の社会保険の被扶養者ではない国民年金加入者

      • 故人が年金保険料を36か月以上納付している
      • 故人が老齢基礎年金・障害基礎年金を受け取っていない
      • 遺族基礎年金の受給要件を満たす遺族がいない

      【請求できる人】

      亡くなった方と生計を同じくしていた下記の方優先順位もこの順番*)

      (1)配偶者 (2) (3)父母 (4) (5)祖父母 (6)兄弟姉妹

      *先順位者がいない場合に限り後順位者が請求可能。同順位者が2名以上いる場合は、そのうち1名が代表して請求する。

      【必要書類】

      必要書類補足説明
      国民年金死亡一時金請求書日本年金機構HPよりダウンロード可能
      亡くなった方の年金証書紛失している場合は不要
      請求者のマイナンバーが確認できる書類マイナンバーカード、通知カード、マイナンバー入り住民票など
      戸籍謄本
      (又は法定相続情報一覧図)
      亡くなった方と請求者の続柄が確認できる戸籍謄本等
      請求者の世帯全員の住民票・死亡日以降に発行されたもの
      ・亡くなった方と請求者が住民票上、同住所同世帯の場合は原則不要
      ・請求者のマイナンバーを請求書に記入した場合は不要
      生計同一関係に関する申立書・亡くなった方と請求者が住民票上、同住所の場合は不要
      日本年金機構HPよりダウンロード可能
      死亡一時金の振込先口座がわかるもの預金通帳のコピーなど(金融機関名、支店名、口座名義人氏名フリガナ、預金種別、口座番号の確認ができるページ)
      死亡一時金請求の必要書類

      死亡一時金の金額は、保険料を納めた月数に応じて12~32万円で、1回限り支給されます。

      未支給年金と同様に、「生計が同じ」(生計同一)であればよく、「生計を維持されていたこと」(生計維持)は要件とされていません。

      なお、遺族が遺族厚生年金の受給要件を満たしている場合は、死亡一時金とあわせて受給(併給)できる可能性があります。

      両方請求できる場合でも手続きは年金事務所でまとめて行うことができます。

      死亡一時金は、未支給年金や遺族年金と異なり請求期限が2年と短く、受け取れることに気づかないことも多いので注意しましょう。

      自分や家族が請求できるかわからない方は、年金事務所(又は街角の年金相談センター)に相談すれば、必要書類や請求方法含めて詳しく案内してくれます。

      下記の日本年金機構のホームページも参考にしてください。

      死亡一時金を受けるとき(必要書類・提出先等)|日本年金機構

      司法書士田中暢夫

      年金事務所に相談すれば、死亡一時金が請求可能かどうかも確認してくれます。

      【14日目まで】亡くなってから14日目までにやること③(公共・民間サービスの解約・名義変更等)

      公共サービスや民間サービス等は、今後使用しないものは解約し、使用を継続するものは名義変更や引落し口座の変更手続き等を行いましょう。

      特に有料のサービスについては、解約しない限り料金が発生し続けるので、使用しないのであればすみやかに解約しておきましょう。

      死亡後に必要な公共・民間サービスの解約・名義変更等の主な手続きは以下の通りです。

      亡くなってから14日目までにやること③(公共・民間サービスの解約・名義変更等)

      手続きの名前時期・期限手続き先・確認先 主な必要書類
      介護施設等の退去手続(入居一時金・保証金等があれば返戻手続が必要)すみやかに各施設・事業所等施設等に問い合わせ
      訪問介護等高齢者福祉サービスの停止・解約すみやかに各事業者,ケアマネージャー,地域包括支援センター等医療受給者証等
      シルバーパスの返還すみやかに発行元シルバーパス等
      公共料金(電気・ガス・水道)の解約・名義変更すみやかに各事業者振替依頼書(口座変更時)
      NHKの解約・名義変更すみやかにNHK振替依頼書(口座変更時)
      インターネット回線・プロバイダの解約・名義変更すみやかに各事業者振替依頼書(口座変更時)
      固定電話の解約・名義変更すみやかにNTT等各事業者事業者に問い合わせ
      携帯電話の解約・名義変更すみやかに各事業者事業者に問い合わせ
      クレジットカードの解約すみやかに各事業者事業者に問い合わせ
      オンラインの有料定期利用サービス(サブスク)の解約すみやかに各事業者事業者に問い合わせ
      メール・SNS等オンラインアカウントの削除・退会手続すみやかに各事業者事業者に問い合わせ
      駐車場の解約・名義変更すみやかに管理会社,地主等管理会社等に問い合わせ
      CS/BSチャンネル・ケーブルテレビ・USEN等の解約・名義変更すみやかに各事業者事業者に問い合わせ
      新聞の解約・名義変更すみやかに各販売業者販売店に問い合わせ
      週刊誌・月刊誌・季刊誌等の定期購読の解約すみやかに各販売業者販売業者等に問い合わせ
      日用品等の定期購入の解約・名義変更すみやかに各販売業者販売業者等に問い合わせ
      フィットネスクラブ・スポーツジムなどの退会手続すみやかに各店舗店舗に問い合わせ
      百貨店友の会等の退会手続(積立金があれば返戻手続が必要)すみやかに各店舗店舗に問い合わせ
      旅行積立の解約・名義変更すみやかに各旅行代理店等事業者に問い合わせ
      JAFの退会手続すみやかにJAFJAFに問い合わせ
      競馬専用口座(JRA・PAT)の解約すみやかにJRAJRAに問い合わせ
      リース契約・レンタル契約の解約・名義変更すみやかに各事業者事業者に問い合わせ
      亡くなってから14日目までにやること③(公共・民間サービスの解約・名義変更等)

      介護施設の退去を除き、電話やオンラインで完了することが多く、書類の提出が必要な場合でも代表者が単独で記入すれば済むことがほとんどなので、順次手続きを行いましょう。

      手続きの明確な期限はありませんが、一応亡くなってから14日~1か月ぐらいで終わらせることを目安としましょう。

      以下、それぞれについて解説します。

      介護施設等の退去手続き

      亡くなった方が老人ホーム等の介護施設に入居していた場合、故人の荷物を引き上げ、退去する必要があります。

      いつまでに退去すればいいかは施設の規約によりますが、亡くなってから数日間~1か月程度としていることが多いようです。

      退去の際に未払いの利用料等がある場合は清算が必要になります。施設に確認の上、すみやかに退去を完了させましょう。

      施設に入居する際に、入居一時金や敷金・保証金等を支払っている場合、退去に伴いお金が戻ってくることがあります。

      この返戻金はもともと故人が支払ったお金なので、相続財産として遺産分割や相続税の対象になります。

      とりあえず代表者の口座に振り込んでもらい、後で必要に応じて相続人間での精算等を行いましょう。

      また、相続税の申告の際に未払金や返戻金の金額がわかる資料が必要なので必ず貰っておきましょう。

      司法書士田中暢夫

      入居していたのがサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の場合、同居していた配偶者は期限内に申し出れば継続して住むことが可能です。

      訪問介護等高齢者福祉サービスの停止・解約

      亡くなった方が訪問介護等の高齢者福祉サービスを利用していた場合、すみやかに停止・解約の手続きを行いましょう。

      未払いの利用料等があれば清算する必要があります。

      複数のサービスを利用していることも多いので、どのような契約をしていたかを含めて事業者やケアマネージャーに確認しましょう。

      連絡先が分からない場合は、地域包括支援センターや市区町村役場の高齢者福祉担当窓口に問い合わせてみましょう。

      【代表的な高齢者福祉サービス】

      • 訪問介護
      • 通所介護(デイサービス)
      • 安否確認・見守りサービス
      • 緊急通報システム
      • 配食サービス

      ■シルバーパス(高齢者向け公共交通利用助成制度)について

      シルバーパス等の高齢者向け公共交通利用助成制度を利用していた場合、故人の持っていたシルバーパス等は発行元に返還しましょう。

      返還しなくても罰則はありませんが、自治体によっては申込時に支払った負担金の一部が戻ってくるケースもあるので、確認した方がいいでしょう。

      公共料金(電気・ガス・水道)の解約・名義変更

      電気・ガス・水道等の公共料金については、亡くなった方が契約者だった場合、引き続き利用する場合は新契約者への名義変更を、利用しない場合は解約を行う必要があります。

      電力会社、ガス会社、水道局などの各事業者に電話して、解約(又は名義変更)したい旨を伝え、必要な手続きを行いましょう。

      問い合わせの際に契約番号(お客様番号)が必要になるので、利用明細等をお手元に準備しておくといいでしょう。

      解約する場合、電話のみで完結することがほとんどですが、未清算料金の支払い方法(請求書の送付先等)については確認しておきましょう。

      ■公共料金の解約のタイミングについて

      一人暮らしの親が亡くなり、誰もその不動産を利用する予定がない場合に、すぐに解約の手続きを行う事はおすすめしません。

      ガスはともかく、建物・敷地内の清掃や遺品整理の際に、電気や水道が使えないと色々と不便でしょう。

      また、今後不動産の売却を予定している場合には、不動産会社や購入希望者による室内確認・内見に対応しなければならないこともあります。

      特に電気は処分が決まるまで残しておいた方がいいでしょう。

      司法書士田中暢夫

      解約する順番は利用状況や気候等にもよりますが、一般的には、ガス→水道→電気の順番で行えばいいでしょう。

      ■新電力会社・新ガス会社を利用していた場合

      電気・ガスを同じ会社で契約している場合、解約のタイミングや、解約し忘れに注意しましょう。

      電気、ガスについては2016年以降の電力・ガス自由化に伴い、多くの事業者が新規参入しており、その中には電気とガスの両方を取り扱っている事業者も多くいます。

      電気とガスをまとめて同じ事業者で契約している場合、どちらかの窓口に死亡連絡をすると、もう一方の方についても案内・対応してくれることがほとんどです。

      ガスはすぐに止めてもいいが、電気はしばらく残しておきたいケースでは、まとめて解約してしまわないよう気を付けましょう。

      また、先にガスのみを解約した場合、同じ会社なので電気の方も解約した気になって連絡を忘れていた…という事の無いよう気を付けましょう。

      契約者死亡後の公共料金の名義変更・解約手続きについてくわしくはこちらをご覧ください。

      NHKの解約・名義変更

      亡くなった方がNHKと契約していた場合、引き続きテレビを利用する場合は新契約者への名義変更を、利用しない場合は解約を行う必要があります。

      NHK(NHKふれあいセンター)に電話して、解約(又は名義変更)したい旨を伝え、必要な手続きを行いましょう。

      名義変更手続きは、下記のNHKホームページからインターネット上でも手続きすることができます。

      受信料に関するお手続き・サポート・お問い合わせ|NHK

      問い合わせの際にお客様番号(契約番号)がわかるとスムーズに手続きが進むので、事前に領収書等をお手元に準備しておくことをおすすめします。(わからなくても手続きは可能です。)

      司法書士田中暢夫

      故人がテレビを持っていなくても、インターネット配信サービスを利用している場合やテレビ視聴可能なカーナビを持っている場合は、NHKと受信契約を結んでいる可能性があるので注意しましょう。

      ■払い過ぎた受信料は返金してくれる

      NHK受信料は基本的に2・6・12か月払いのいずれかで先払いのため、支払済みの受信料のうち解約月以降に相当する分については、後日払い戻してくれます。

      また、一人暮らしの契約者の死亡に伴う解約の場合は、解約の連絡が遅れた場合でも、契約者死亡を証明する書類(戸籍や死亡診断書のコピーなど)を提出すれば、死亡月以降の利用料については返金するという対応を取っているようです*。

      *対応先が専門の窓口ではない場合(地方の営業窓口など)、よく知らないために案内されないこともあるようなので、問い合わせの際に案内されなければ専門の窓口に確認するようお願いしてみてください。

      契約者死亡後のNHKの名義変更・解約手続きについてくわしくはこちらをご覧ください。

      インターネット回線・プロバイダの解約・名義変更

      亡くなった方がインターネット回線・プロバイダを契約していた場合、引き続き利用する場合は新契約者への名義変更を、利用しない場合は解約を行う必要があります。

      インターネット関連の契約は、基本的に「インターネット回線の提供会社」と「プロバイダ」にそれぞれ連絡をして手続きを行う必要があります。

      ただし、最近ではインターネット回線とプロバイダ契約がセットになった契約(ソフトバンク光、NURO光など)が主流であり、その場合はまとめて手続きを行えます。

      連絡をする際は、お客様番号等(お客様ID、契約者番号など)がわかるとスムーズに手続きが進むので、事前に「開通のご案内」や「請求書」等を準備しておきましょう。(わからなくても手続きは可能です。)

      ■どの事業者と契約しているか調べる方法

      故人がどこのインターネット回線事業者・プロバイダと契約しているのかわからない場合、下記の方法で確認可能です。

      • 契約書
      • 事業者から届く請求書やその他の案内
      • 預金通帳、クレジットカードの利用明細(支払いや引き落としの履歴)
      • 事業者から提供された機器(モデムやルーターなど)に書いてある会社名

      契約者死亡後のインターネット回線・プロバイダの名義変更・解約手続きについてくわしくはこちらをご覧ください。

      固定電話の解約・名義変更

      固定電話の契約者が亡くなった場合、そのまま利用を継続する場合は新契約者への名義変更手続きを、利用しない場合は解約を行う必要があります。

      契約中の通信事業者(NTTなど)に電話して、解約(又は名義変更)したい旨を伝え、必要な手続きを行いましょう。

      契約している事業者や契約状況によってはインターネットでの手続きができる場合もあります。

      解約・名義変更の際には契約中の固定電話の電話番号が必要になるので、事前に確認しておきましょう。

      司法書士田中暢夫

      NTTでは固定電話機などの端末のレンタルサービスを行っています。
      解約の際、故人がレンタルサービスを利用していた場合は、忘れずに返却しましょう。

      契約者死亡後の固定電話の名義変更・解約手続きについてくわしくはこちらをご覧ください。

      携帯電話の解約・名義変更

      亡くなった方の携帯電話(スマートフォン)については、しかるべき時期に解約しましょう。

      なお、希望する方は少ないでしょうが、名義変更してそのまま利用を継続することもできます。(通信事業者によっては解約しかできない場合あり)

      こちらでも解説したとおり、スマホ内のデータには故人の財産や各種契約の状況(特にデジタル関係)などを知る重要な手がかりが含まれている可能性が高いです。

      故人の意向にもよりますが、画面ロックの解除が可能で中を確認しても問題ない場合は、必要な情報についてはスクリーンショットやデータの転送を行ってきましょう。

      パスワード等の入力を一定回数以上間違うと、最悪の場合データが初期化され復元できなくなるので注意しましょう。

      画面ロックを解除できないがどうしても中の確認が必要という場合は、高額(機種によるが相場は20万円~50万円)になりますが、専門の業者に依頼してロック解除やデータ復旧を試みましょう。

      なお、亡くなってから業者に持ち込むまで一度も電源が切れていない状態であれば、比較的短期間でデータを抜き出しできる可能性が高いので、当面は充電を切らさないようにしておきましょう。

      司法書士田中暢夫

      Apple IDやGoogleアカウントがわかれば、iCloudやGoogleドライブからバックアップを復元したり、「デバイスを探す」機能でロック解除を試みたりできます。

      故人の財産や契約状況(特にデジタル関係)の情報整理が済んだら、携帯電話を解約しましょう。

      手続き方法は通信事業者により異なりますが、3大大手キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)については、原則として直接店舗まで行く必要があります。

      手続きの際は事前に来店予約をしてから行きましょう。

      楽天モバイルや、いわゆる「格安スマホ(格安SIM)」事業者についてはインターネットや郵送等での手続きが可能な事業者がほとんどのようです。

      未払いの利用料金は解約の際に清算することになります。

      端末代金の残額が残っている場合、継続して分割で支払うか、一括で清算するかを選択することになります。

      ■電子マネー(○○ペイ)の取り扱いに注意!

      スマホはSuicaやPayPayなどのチャージ形式の電子マネー(○○ペイ)と紐づいていることも多いです。

      電子マネー(○○ペイ)の残高も基本的に相続の対象ですが、スマホを処分してしまうと情報がなく、手続きが難しくなる可能性があるので注意しましょう。

      電子マネー(○○ペイ)の相続手続きについてくわしくはこちら

      契約者死亡後の携帯電話の解約・名義変更手続きについてくわしくはこちらをご覧ください。

      クレジットカードの解約

      亡くなった方名義のクレジットカードは、すみやかに解約しましょう。

      契約者が死亡しても、解約をしない限り年会費は請求され続けます。

      また、クレジットカードと紐づいている定期契約サービス等についても、利用を停止しない限りカード会社からの請求は止まりません。

      さらにカードが利用できる状態のままだと、誰かに不正使用されてしまうリスクもあります。(現物が手元にあってもオンラインでの不正使用のリスクは残ります。)

      司法書士田中暢夫

      日常決済用にカードの利用を続けたいという方もいるかもしれませんが、たとえ家族であっても亡くなった方名義のカードを利用し続けることは規約違反に当たります。

      クレジットカードの解約は、カード会社に連絡を取り、手続きを行うことになります。

      クレジットカードの現物や利用明細がある場合はもちろん、通帳の履歴からカード会社の名前らしきものを見つけたら、とりあえず問い合わせをしてみましょう。

      未払いの利用残高がなければ電話のみで解約できることも多いです。

      連絡した際にカード番号などを聞かれるので、クレジットカードその他の資料を手元に準備しておきましょう。

      未払いの利用残高がある場合は清算が必要になりますが、相続人の誰かが立替える場合は後で揉めないように請求書や明細書はとっておきましょう。(相続税申告の際の資料にもなります。)

      立替えるのが面倒なので故人の口座から支払いたいという場合は、最終の引き落とし日を確認して、引き落としがされた後に金融機関に死亡の連絡をした方がいいでしょう。

      ポイントは原則相続不可、マイルは相続の対象

      クレジットカードには利用金額に応じて各社独自のポイントが付くことも多いですが、このポイントも原則として相続の対象にはならず、契約者の死亡によって失効してしまいます。

      一方、航空会社のマイルが貯まるカードの場合、マイルは基本的に相続の対象となります。

      ただし相続するためには手続きが必要です。

      ANAのマイルは相続手続きの期限が死亡後6か月以内と短いので、すみやかに手続きを行いましょう。

      死亡後のポイントやマイルの取り扱いについて詳しくはこちらの記事をご覧下さい。

      カード会社がわからない場合の確認方法

      クレジットカードの現物や明細書等の手がかりが見つからない場合や、把握している以外の契約が無いか念のために確認したいという場合、信用情報調査(信用情報の開示請求)を行いましょう。

      信用情報の開示請求は、故人との関係性がわかる戸籍謄本等を信用情報機関(CIC、JICC、全銀協の3社)に提出して行います。

      信用情報機関の開示結果により、故人が契約しているカード会社や利用残高を確認することができます。

      特に相続放棄するかどうかの検討のために債務の調査が必要な場合は、できるだけすみやかに信用情報調査を行いましょう。

      信用情報の調査方法についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

      契約者死亡後のクレジットカードの解約手続きについてくわしくはこちらをご覧ください。

      オンラインの有料定期利用サービス(サブスク)の解約

      亡くなった方がサブスクリプションサービス(通称サブスク)を利用している場合、そのままにしておくと利用料金がかかり続けるので早めに解約しておきましょう。

      家族の方が同じサービスを継続利用したい場合は、自分の名義で入り直しましょう。(ファミリープランの管理者変更などで対応できる場合もあります。)

      サブスクはデジタルコンテンツと相性が良く、サービスの申し込み・利用、利用料金の支払いまですべてオンラインで完結することも多いです。

      スマホやPCの中を確認しないと契約の有無を把握できないケースも多いので先述のとおりできるだけ確認しましょう。

      オンラインの有料定期利用サービスは様々なものがありますが、代表的なものとして下記が挙げられます。

      【有料オンラインサービス(サブスク)の例】

      ■複合サービス系

      Amazonプライム、Apple One 、Google One、YouTube Premiumなど

      EC・ショッピング系

      Amazon(プライム会員・定期おトク便)、Yahoo(プレミアム会員)など

      動画配信系

      Netflix、Amazonプライムビデオ、U-NEXT、DMM TVなど

      音楽配信系

      Apple Music、Spotify、Amazon Music 、LINE MUSICなど

      クラウドストレージ系

      Googleドライブ、iCloud+、OneDrive、Dropbox、Boxなど

      ビジネスツール系

      Microsoft 365、Google Workspace、Zoom、Adobe、Chatwork、Slack 、freeeなど

      【サブスクの利用有無の確認方法】

      • スマホやPCのアプリ、ブラウザのブックマーク・利用履歴
      • メール(サービスについての案内、ログイン通知、請求書・領収書・利用明細など)
      • クレジットカードの利用明細
      • 預金口座の入出金明細(引き落とし履歴)

      サブスクの利用有無は、故人のスマホやPCで確認するのが一番ですが、難しい場合はクレジットカードの利用明細や預金口座の引き落とし履歴から確認できる可能性もあります。

      月払いではなく、年払いの場合もあるので最低1年分はさかのぼって確認するようにしましょう。

      解約方法は事業者により異なりますが、問い合わせはオンラインで行うケースが多いようです。

      その後の解約手続きについては、オンラインで完結する場合と書類等の郵送提出が必要な場合があります。

      ■解約しないままでいるとどうなる?

      オンラインで完結するサービスの場合、契約していることにまったく気づかない可能性もあります。

      その場合、故人のクレジットカード解約や預金口座凍結のタイミングで利用料金が引き落とせなくなります。

      利用料金が支払われない場合、自動的に停止・解約となるサービスもありますが、利用料金が未払いでもサービスはしばらく継続する(すぐに解約とならない)可能性もあります。

      その場合、亡くなった本人宛に請求書や督促状などが届けばそこで発覚することになります。

      できれば、後になって思いもよらない請求が来るのは避けたいところです。

      メール・SNS等オンラインアカウントの削除・退会手続き

      メールやSNSのアカウント作成・利用は無料であることがほとんどなので、基本的には放置しても問題ありません。

      ただし、長期間放置すると乗っ取りのリスクがあり、なりすましやスパム投稿、最悪の場合詐欺等に悪用される可能性があります。

      また、事情を知らない知人・関係者から連絡が届き続ける可能性もあるので、必要に応じて家族から事情を伝え、しばらくしたらアカウントの削除・退会手続きを行う方が良いでしょう。

      SNSアカウントは原則として本人限りのもの(一身専属権)であり、家族であっても相続・承継して利用を継続することはできません。

      ただしFacebookやInstagramのように、遺族からの申請により、故人を偲ぶ「追悼アカウント」として残すことができる場合もあります。

      本記事執筆時点(2025年12月)での、故人のアカウントに関する主要各社の対応状況は下記のとおりです。

      ■主要SNSの故人のアカウントに関する対応状況

      SNS遺族ができる対応
      X(旧Twitter)削除のみ可能
      Instagram削除のほか追悼アカウントへの移行が可能
      Facebook削除のほか追悼アカウントへの移行が可能
      LINE削除のみ可能
      TikTok削除のみ可能
      YouTube
      (Googleアカウント)
      削除のほか故人のアカウントからデータを取得することが可能
      主要SNSの故人のアカウントに関する対応状況
      司法書士田中暢夫

      今後利用規約が変更される可能性はありますが、現状ではほぼ「削除(閉鎖)」か「追悼アカウントへの移行」の2択と思われます。

      なお、YouTubeで公開されている動画についての著作権は原則として本人に帰属しており、こちらは相続の対象になります。(所属事務所等に権利を譲渡している場合は対象外)

      また、動画で得た広告収入は金銭債権なので、相続の対象になると考えられます。

      まだ収益が本人の口座に振り込まれていなければ、手続きをすることで遺族が受け取ることができます。

      参考

      故人のアカウントに関するリクエストを送信する|Googleアカウント ヘルプ

      突然亡くなった場合など、故人の財産や各種契約の状況、知人の連絡先がわからないときは、メールやSNSでのやり取りが手掛かりとなることもあります。

      家族とはいえあまりプライベートに踏み込むことは推奨されませんが、もしログインして確認できるのであれば、必要な情報については控えておきましょう。

      その他契約・サービスの解約

      その他にも、亡くなった方が契約していた可能性があるサービスとしては下記のようなものがあります。

      手続きについては基本的に各事業者に連絡して、必要な書類等を提出することになります。

      【解約等が必要な故人名義の契約・サービスの例】

      ■駐車場

      ■CS/BSチャンネル・ケーブルテレビ・USEN等

      ■新聞

      ■週刊誌・月刊誌・季刊誌等の定期購読

      ■日用品等の定期購入

      ■フィットネスクラブ・スポーツジム

      ■百貨店友の会等(積立金があれば返戻手続きが必要)

      ■旅行積立

      ■JAF

      ■競馬専用口座(JRA・PAT)

      ■リース契約・レンタル契約(事業用の機械や設備など)

      親が亡くなったら郵便局で手続きが必要か

      当事務所のご相談者様から、「親が亡くなったら郵便局での手続きは何か必要か」という質問を受けることがあります。

      結論として、積極的に手続きを行う義務はなく、むしろ(少なくとも当面は)郵便局には亡くなったことを伝えない方がいいです。

      郵便局に亡くなったことを伝えると、以後故人宛の郵便物は配達されることなく、差出人へ返還されます。

      (郵便物の還付)

      第四十条 受取人に交付することができない郵便物は、これを差出人に還付する。

      郵便法|e-Gov法令検索

      このことは郵便局のホームページにも明記されています。

      A.ご家族の方から転送のお申出があっても、亡くなられたご本人さまの郵便物等を転送することはできません。

      受取人ご本人さまが亡くなられた場合、ご本人さまあての郵便物等は差出人さまへ返還されます。

      死亡した受取人あての郵便物等を家族に転送してもらえますか?|郵便局

      しかし、現実的には亡くなった人の郵便物が届かなくなると困るケースが多いです。

      郵便物により、故人の財産状況や各種契約状況、交友関係などを把握できることは少なくありません

      借金などの負債がある場合、相続放棄を検討しなければなりませんが、債権者から本人宛の請求書や督促状が届かないと、負債の存在に気付くのが遅くなります。

      また、差出人にとっても、本人が死亡したのであれば家族が開封して代わりに対応してもらうか、せめて亡くなったことを連絡してもらいたいことの方が多いでしょう。

      一応、本人の許可なく開封すると親書開封罪(刑法第133条)に該当する可能性はありますが、同罪は親告罪であり、故人の家族が開封するのは「正当な理由」にあたると考えられるため、罪に問われる可能性はほぼないでしょう。

      よって、本人が亡くなった後もしばらくはそのまま郵便物は届くようにしておき、相続手続きが一通り終わりってから、死亡したことを伝えて郵便物を停止した方がいいでしょう。

      なお故人が一人暮らしだった場合、郵便物が溜まりすぎて郵便受けからはみ出していると、外からも空き家と認識されやすく、防犯上好ましくないので、郵便物は定期的に回収するようにしましょう。

      郵便局にはゆうちょ銀行の窓口が併設されていることが多く、ゆうちょ銀行の相続手続き(書類の提出)も行うことができます。

      しかし、ゆうちょ銀行の相続手続きの際に提出した戸籍で郵便局員が死亡を確認しても、それをきっかけに郵便物が停止されることはありません。

      なお、当社は、株式会社ゆうちょ銀行から銀行代理業務および金融商品仲介業務を、株式会社かんぽ生命保険、取扱生命保険会社および取扱損害保険会社から保険販売代理業務を受託していますが、お客さまのご同意がない限り、お客さまから取得した非公開情報は、受託業務相互間並びに受託業務と独自業務相互間において使用いたしません。

      郵便局窓口事業における個人情報のお取扱いについて|郵便局

      ■本人の代理人として転送届(転居届)を出すことは可能?

      本人が長期入院等で郵便物を受けとれない場合、生前であれば家族が郵便局に転送届(転居届)を代わりに出して、郵便物がきちんと届くようにすることができます。

      しかし先述のとおり、本人の死後は家族であっても転送届を出すことはできません。

      もっとも、転送届は窓口の他、郵送(ポスト投函)やオンラインでも提出できるので、本人の体で家族が手続きすることは事実上できてしまうかもしれませんが…

      【49日目まで】亡くなってから49日目までにやること

      亡くなってから1~2週間の間にやることとしては、前章までで十分です。

      しかし、親が亡くなってからやることは他にもたくさんあり、むしろ手続きのボリュームや難易度的にはここからが本番と言えます。

      相続放棄や準確定申告などを除いて期限の短い手続きは少ないですが、効率よく相続を完了させるにはある程度の区切りをつけて進めた方がいいでしょう。

      また、たくさんの手続きがあるがゆえに、「いつまでに、どの手続きから手を付ければいいのか」について悩まれる方も多いと思います。

      そこでこの章では、優先順位や進めやすさを考慮して、2か月程度(四十九日前後)を目安としてやっておくべき手続きを解説します。

      司法書士田中暢夫

      遺産相続関連の手続きのうち早めに対応しておくこと」「他の相続人の関与なく進められる手続き」が中心になります。

      主な手続きは以下の通りです。

      亡くなってから49日目までにやること

      手続きの名前時期・期限手続き先・確認先 主な必要書類
      四十九日法要49日以内お寺,葬儀社,親族などお寺等に問い合わせ
      納骨火葬後しかるべき時期に墓地管理者(お寺,霊園など)押印済火葬許可証等
      お墓の名義変更すみやかに墓地管理者(お寺,霊園など)管理者に問い合わせ
      改葬・墓じまい必要に応じて墓地管理者(お寺,霊園など)受入証明書等
      戸籍の取得(郵送請求その他)すみやかに市区町村役場身分証等
      法定相続情報一覧図の取得必要に応じて法務局戸籍謄本等
      死亡保険金・共済金等の請求すみやかに各保険会社死亡診断書等
      生命保険契約の調査(生命保険契約照会制度)必要に応じて生命保険協会戸籍謄本等
      確定給付企業年金の遺族請求すみやかに(原則5年で時効)勤務先企業,委託先金融機関等戸籍謄本等
      企業型確定拠出年金(401K)の遺族請求すみやかに(5年経過で取扱変更)勤務先企業,委託先金融機関等戸籍謄本等
      個人型確定拠出年金(iDeCo)の遺族請求すみやかに(5年経過で取扱変更)加入先金融機関・保険会社等戸籍謄本等
      個人年金(個人年金保険)の遺族請求すみやかに(3年で時効)各保険会社戸籍謄本等
      国民年金基金・厚生年金基金の遺族請求すみやかに(5年で時効)各基金, 企業年金連合会戸籍謄本等
      年金払い退職給付の遺族請求すみやかに地方職員共済組合等戸籍謄本等
      財形年金貯蓄の遺族請求すみやかに勤務先企業,委託先金融機関等戸籍謄本等
      中小企業退職金共済制度の遺族請求すみやかに勤務先企業,中退共戸籍謄本等
      小規模企業共済制度の遺族請求すみやかに中小機構戸籍謄本等
      自社年金の遺族請求すみやかに勤務先企業勤務先に問い合わせ
      遺品整理(家探し)しかるべき時期に相続人・遺品整理業者等なし
      自筆の遺言書の調査・探索すみやかに法務局,自宅等法務局での調査の場合は戸籍謄本等
      公正証書・秘密証書遺言の検索すみやかに公証役場戸籍謄本等
      遺言書の検認すみやかに家庭裁判所戸籍謄本等
      賃貸物件(借家)に関する通知・届出・解約・清算等(借主)すみやかに管理会社・大家等各所に問い合わせ
      相続放棄3か月以内家庭裁判所戸籍謄本等
      債務の調査(信用情報調査)必要に応じて信用情報機関等戸籍謄本等
      準確定申告4か月以内税務署申告書等
      高額療養費の請求2年で時効市町村役場等申告書等
      亡くなってから49日目までにやること

      これらの手続きは、基本的に遺族や相続人の代表者が単独で進められるので、手分けをして順次進めましょう。

      代表者一人しか対応できない場合、手続きの負担をめぐる不公平感からトラブルになることもあるので、専門家へ依頼することも検討しましょう。

      以下、それぞれについて解説します。

      四十九日法要

      四十九日法要とは、故人が仏のもとに旅立つ最後の日に、故人のために僧侶を招いて遺族が祈るという儀式の事です。

      名前のとおり、本来は亡くなってから49日目に執り行うべきものですが(地域によっては亡くなる前日を1日目と数えることもあるようです。)、平日にあたり家族・親族が集まるのが難しい場合は、直近の土日等にずらすこともできます。

      ずらす場合は、正式な日よりも後にずらすのではなく、必ず前倒しにするようにしましょう。

      また、地域によっては、四十九日法要を繰り上げて、葬儀と同日に行うこともあります。

      納骨・お墓の名義変更等

      火葬後の遺骨は、しかるべき時期にお墓や納骨堂に納骨する必要があります。

      納骨のタイミングに決まりはなく、火葬後すぐに納骨する方のほか、百箇日法要・一周忌法要や新盆に合わせて納骨する方などもいます。

      一般的には四十九日法要に合わせて納骨することが多いようです。いつ行えばいいかわからなければ、親戚やお寺に相談してみましょう。

      納骨の際には、火葬場で受け取った押印済の火葬許可証(埋葬許可証、火葬証明書)が必要になります。

      万が一紛失してしまった場合は、役所で再発行の手続きを行いましょう。

      参考

      火葬済証明書を無くしてしまった際の手続き方法を教えてください。|渋谷区ポータル

      すでにお墓がある場合は、納骨前にお寺や霊園に問い合わせて「お墓の名義変更」(墓地使用者の名義変更手続き)を行っておきましょう。

      墓地や霊園によっては使用者死亡による名義変更手続きについて、「亡くなってから2年以内」などの期間制限を設けている場合もあるので、すみやかに手続きを行いましょう

      お墓を誰が承継するかについては、慣習に従うものとされていますが、一般的には家族で話し合って決めることがほとんどでしょう。(生前に承継者が指定されていればその人が承継します。)

      お墓がない場合は、新たに一般墓を購入する、納骨堂や永代供養墓に納めるなどの選択肢があります。

      司法書士田中暢夫

      一般墓は高額で管理の手間もかかるため、近年は納骨堂や永代供養墓を利用される方も多いようです。

      お墓の名義変更(承継)手続きについてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

      ■お墓の維持管理が難しい場合は改葬・墓じまいの手続きを

      先祖代々のお墓を引き継いだ場合、遠方のため管理が難しい、自分の代以降の承継者がいない、等の悩みが出てくるかもしれません。

      そのような場合は、改葬・墓じまいの手続きを行うことを検討しましょう。

      改葬とは、わかりやすく言うとお墓の引越しのことで、今のお墓に埋蔵されている遺骨を、別の墓地や納骨堂などに移すことを言います。

      改葬に伴い、現在のお墓については、墓じまいをして墓地管理者に返還することになります。

      改葬先としては、別の墓地や霊園に建てた一般墓のほか、管理の負担が少ない納骨堂や永代供養墓に移すという選択肢もあります。

      改葬や墓じまいの手続きには手間と費用がかかりますが、今後の負担を軽減したいという方は検討してみてください。

      お墓の改葬・墓じまいについてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

      戸籍の取得(郵送請求その他)

      先述のとおり、ほとんどの相続手続きでは、相続関係証明のために戸籍謄本が必要になります。

      相続手続きに必要な戸籍

      相続手続きに必要な戸籍
      相続手続きに必要な戸籍

      実家や自分の家の近くの役所ですべての戸籍が簡単に揃えばいいのですが、実際にはそうでないケースの方が多いです。

      戸籍がある役所の窓口に出向いて取得することができない場合、下記2つの方法により戸籍を請求することになります。

      ■本籍地の役所に郵送で請求する方法

      本籍地の役所に出向くことが難しい場合は、郵送で請求するのが一般的です。

      郵送請求は申請書に必要事項を記入し、発行手数料分の定額小為替及び返信用封筒と一緒に本籍地の役所に郵送します。

      申請書は自治体のホームページからダウンロードできます。送付先や発行手数料についてもホームページで確認しましょう。

      司法書士田中暢夫

      返信用封筒に切手を貼るのを忘れないようにしましょう。お急ぎの場合や戸籍が多くなりそうな場合は、レターパックの利用をおすすめします。

      相続手続きの場合、その役所で取得できる戸籍が何通になるかわからないことが多いので、定額小為替は多めに入れておいた方が安心です。3,000円もあれば大体足りるでしょう。

      余った場合、差額は定額小為替又は切手で返還してくれます。

      定額小為替が不足した場合、不足分を送れば発行してくれますが、その分返送までに時間がかかるのでお急ぎの方は注意してください。

      ■「戸籍の広域交付制度」を利用して最寄りの役所で請求する方法

      戸籍の広域交付制度」とは、最寄りの役所において、全国の戸籍を一括して取得することができる制度です

      2024年3月1日から始まったこちらの制度を利用すれば、相続手続きに必要な戸籍収集の手間を大幅に減らすことができます。

      戸籍の広域交付制度

      戸籍の広域交付制度
      戸籍の広域交付制度

      広域交付制度を利用する場合、事前に予約をする必要があります。(自治体によっては不要な場合もあります。)
      最寄りの自治体のホームページを確認し、事前予約が必要であれば専用フォームや電話で来庁予約をしましょう。

      その他、下記の点に注意してください。

      【広域交付制度の注意点】

      • 窓口の混雑状況よっては、戸籍の受取りまで数時間かかることがある。
      • 自治体によっては当日発行できず7営業日程かかる場合もある。(その場合も郵送受取りは出来ず、後日あらためて役所へ足を運ぶ必要がある。
      • 広域交付制度で請求できるのは、「本人」「配偶者」「直系尊属(父母、祖父母など)」「直系卑属(子、孫など)」の戸籍のみ。(兄弟姉妹や甥姪の戸籍は対象外
      • 相続人本人が直接窓口で請求しなくてはならない。(郵送請求・代理人による請求は不可
      • 戸籍の附票やコンピュータ化されていない戸籍など、広域交付制度で請求できない戸籍等がある。
      司法書士田中暢夫

      親の相続の場合は、基本的に広域交付制度ですべての必要な戸籍を揃えることができます。(他の相続人の現在戸籍は除く)
      ただし、相続登記で必要になることがある戸籍の附票は請求できないため、別途郵送請求等で取得する必要があります。

      戸籍の郵送請求や広域交付制度による請求についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

      ■戸籍謄本や印鑑証明書は何通ずつ必要?

      相続手続きに必要な戸籍謄本や印鑑証明書の取得数の目安は下記のとおりです。

      • 戸籍謄本・・・2、3通ずつ(法定相続情報一覧図を取得する場合は1通ずつ)
      • 印鑑証明書・・・相続人1人あたり2、3通ずつ

      相続手続きが必要な金融機関や不動産は複数あることが多いので、戸籍謄本一式や印鑑証明書を複数取得しておくとスムーズに手続きを進められます。

      ただし、戸籍謄本は1通450~750円の発行手数料がかかるため、必要な戸籍が多い場合に複数取得すると数千円~数万円のコストがかかってしまいます。

      必要な戸籍や相続手続きが多い場合には、後述する法定相続情報証明一覧図」を取得することをおすすめします。

      コンビニ交付サービスやオンライン請求を利用して戸籍を集めることはできる?

      多くの自治体では戸籍等を含む証明書類のコンビニ交付サービスを提供しています。また、自治体によってはオンラインでの戸籍請求が可能です。

      コンビニ交付サービスやオンライン請求で取得した戸籍でも、相続手続きに利用することは可能です。

      しかし、コンビニ交付サービスやオンライン請求はマイナンバーカードを利用したサービスであり、取得できる戸籍は「利用者本人が記載されている現在戸籍」や「現在戸籍の附票」などに限られます*。

      *自治体によって取得できる戸籍等は異なります。

      本記事執筆時点(2025年12月)では、相続手続きに必要なすべての戸籍をコンビニ交付サービスやオンライン請求のみで集める事は難しいでしょう。

      コンビニ交付サービスやオンライン請求はとても便利なサービスなので、今後のサービス拡大が期待されます。

      法定相続情報一覧図の取得

      戸籍がすべて揃ったら、法定相続情報一覧図を取得することをおすすめします。

      法定相続情報一覧図は、亡くなった方の相続関係を証明する家系図のような書面です。

      ■法定相続情報一覧図の見本

      法定相続情報一覧図の見本
      法定相続情報一覧図の見本

      法定相続情報一覧図は、相続手続きの際に戸籍の代わりになる書類です。

      法定相続情報一覧図があれば、手続きのたびにいちいち戸籍の束を提出せずに済みます。

      戸籍一式を数通ずつ取得すると発行手数料がかさみますが、法定相続情報一覧図は何通取得しても無料です。

      提出先の確認作業が大幅に短縮できるため、手続きの完了が早くなるというメリットもあります。

      ■法定相続情報一覧図の便利な仕組み

      法定相続情報一覧図の便利な仕組み
      法定相続情報一覧図の便利な仕組み

      【法定相続情報一覧図を取得するメリット】

      • 複数の相続手続きを同時に進められる。
      • 法務局に複雑な相続関係を確認してもらえる。(法定相続人の把握ミス、必要な戸籍の漏れに対処できる)
      • 法務局で相続関係の確認が済んでいるため、手続き先の処理がスムーズになる。
      • 何通でも手数料無料で取得できる。
      • 戸籍等の紛失のリスクが無く、管理が楽になる。
      • 5年間は無料で再取得できる
      司法書士田中暢夫

      特に相続関係が複雑なケース、必要な手続きが多いケースでは法定相続情報一覧図を取得すると手続きが大幅に楽になります。

      法定相続情報一覧図を取得するためには、戸籍一式をそろえて、法務局に申請を行います。

      ■法定相続情報一覧図が不要なケース

      下記のようなケースでは法定相続情報一覧図を取得するメリットが少ないので、必ずしも取得する必要はありません。

      • 必要な相続手続きが少ない場合(不動産と金融機関2社程度までが目安)
      • 相続人が1人しかいない場合
      • 法定相続情報一覧図の取得期間(申請から完了まで約2週間~1か月)を待たずに相続手続きを行いたい場合

      死亡保険金・共済金等の請求

      亡くなった方が被保険者になっている生命保険契約(共済契約)がある場合は、死亡保険金(死亡共済金)等を請求しておきましょう。

      死亡保険金は相続財産ではなく、受取人の固有財産とされているため、遺産相続手続きとは関係なく請求して大丈夫です。

      請求の際には死亡診断書のコピー等が必要になりますが、受取人が単独で請求できるので、早めに請求しておきましょう。

      なお、死亡保険金とあわせて入院給付金や手術給付金等が請求できる場合や、未経過保険料が払い戻される場合がありますが、こちらは受取人の固有財産ではなく、相続財産として取り扱われます。

      死亡保険金請求の際にまとめて受け取って問題ありませんが、遺産分割や相続税の対象となるため、他の相続人にきちんと情報共有しておきましょう。

      司法書士田中暢夫

      死亡保険金は相続財産ではないものの、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となるため(ただし「500万円×相続人の数」の非課税枠あり)、気を付けましょう。

      ■生命保険契約の有無がわからない場合の調べ方

      保険会社からのお知らせや保険証券などの資料が何もない場合や、把握している以外にも契約が無いか確かめたい場合は、「生命保険契約照会制度」を利用して調査しましょう。

      生命保険契約照会制度は、相続人等からの申出により、一般社団法人生命保険協会を通じて、協会加盟の保険会社全社へ保険契約の有無を一括で照会できる制度です。

      照会によって判明するのは「故人がどこの保険会社と契約しているか」までのため、その後個別に保険会社に対して調査・請求等は必要になりますが、照会によって国内の生命保険契約については、ほぼ確実に把握出来ます。

      生命保険契約照会制度についてくわしくはこちら

      ■火災保険や自動車保険の解約・名義変更はいつ行えばいい?

      亡くなった方が契約していた火災保険や自動車保険はしかるべき時期に解約するか、相続人へ名義変更する必要があります。

      こちらは一応相続財産にあたるため、遺産分割協議で不動産や自動車等を誰が相続するか(どう処分するか)が決まってから対応すれば大丈夫です。

      なお、火災保険や自動車保険は、保険期間分の保険料全額を一括払いすることが多いので、解約すると未経過保険料の払い戻し(解約返戻金)が発生する場合があります。

      相続税の申告が必要な場合、原則として相続発生時点の解約返戻金を財産として計上する必要があります。

      例え解約せずに契約を引き継いだとしても「相続発生日に解約したと仮定して」計算した金額を計上する必要があるので注意しましょう。

      特に農協の「建物更生共済契約(通称:建更)」は、積立型の共済契約であるため解約返戻金が高額になることが多いです。(100万円を超えることもよくあります)

      故人が農協に口座をお持ちの場合は、建更についても確認して、解約・承継手続きや、解約返戻金相当額の証明書の発行を忘れずに行いましょう

      農協の建物更生共済(建更)の相続手続きについてくわしくはこちら

      私的年金(企業年金・確定拠出年金・個人年金等)・遺族給付の請求

      亡くなった方が公的年金の他に、企業年金、確定拠出年金、個人年金等の私的年金・退職金制度にも加入していた場合、手続きを行う事で遺族の方が一時金等を受けられるケースがあります。

      受け取れる方や受け取り方(一時金か年金形式か)は、加入していた制度や規約によって異なりますが、基本的に受取人が指定されていれば指定受取人が優先、指定されていなければ「配偶者→子」の順で優先となることが多いです。

      また、相続財産ではなく受取人の固有財産として扱われるものがほとんどですが、生命保険と同様に「みなし相続財産」として相続税の課税対象*となるものもあるので注意しましょう。

      *制度によっては非課税枠(500万円×相続人の数)が設けられているものもあります。

      請求期限は短いものでも3年ですが、基本的に受取人の方が単独で請求できるので、早めに手続きを行っておきましょう。

      請求の際には戸籍謄本等の提出が必要になります。必要書類は故人との関係性等により異なるので、手続き先に確認しましょう。

      【亡くなった後に遺族が請求可能な私的年金・退職金制度の例】

      ■確定給付企業年金

      ■企業型確定拠出年金(401K)

      ■個人型確定拠出年金(iDeCo)

      ■個人年金(個人年金保険)

      ■国民年金基金

      ■厚生年金基金

      ■年金払い退職給付

      ■財形年金貯蓄

      ■中小企業退職金共済制度

      ■小規模企業共済制度

      ■自社年金

      亡くなった後に必要な私的年金・遺族給付の手続きについてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

      亡くなった後に必要な個人型確定拠出年金(iDeCo)の手続きについてはこちらをご覧ください。

      本格的な家探し・遺品整理

      葬儀・法要や役所関係、年金関係等の亡くなった直後に行う手続きがひと段落したら、本格的な家探し(やさがし)と故人の遺品整理を行いましょう。

      生前と異なり、この段階では下記のような「今後の相続手続き等で必要なもの・重要な手がかりになるもの」を重点的に探しましょう。

      もちろん形見や思い出の品は別にとっておきましょう。

      【相続手続き等で必要なもの・重要な手がかりになるもの】

      分類代表的なもの
      遺言書関係・遺言書(自筆証書、公正証書)
      ・遺言書の保管証(法務局発行のもの)
      ・エンディングノートやメモ
      不動産関係・権利書(登記済権利証、登記識別情報通知)
      ・売買契約書
      ・固定資産税納税通知書(課税明細書)
      ・固定資産税の領収書
      ・登記簿謄本(登記全部事項証明書)
      ・土地賃貸借契約書(借地の場合)
      金融資産関係(預貯金、証券等)・通帳、キャッシュカード
      ・貸金庫のカード・鍵
      ・証券会社からの郵送物(取引残高報告書など)
      ・配当金領収書
      ・株主総会招集通知(議決権行使書)
      保険関係(生命保険、損害保険)・保険会社からの郵送物(契約状況のお知らせなど)
      ・保険証券
      ・契約書、申込書
      その他財産関係・自動車の鍵、車検証
      ・ゴルフ会員権の証書
      ・貴金属・宝石類(宝飾品、金地金など)
      ・高級時計
      ・カメラ
      ・骨董品(陶磁器、漆器、刀剣など)
      ・美術品(著名な画家、彫刻家、書道家等の作品)
      負債(債務)関係・住宅ローンの申込書や返済計画表
      ・クレジットカード関係(現物、利用明細、申込書など)
      ・金銭消費貸借契約書
      ・借用書(覚書)
      ・ATMの明細(消費者金融の入出金記録のあるもの)
      ・債権者からの書面(督促状、催告書など)
      ・裁判所からの書面(訴状、支払督促、期日呼出状など)
      準確定申告関係・確定申告書の控え
      ・源泉徴収票
      ・医療費控除明細書、医療費の領収書
      ・生命保険料控除証明書
      ・特定口座年間取引報告書
      ・建物賃貸借契約書
      ・不動産収支報告書(送金明細書)
      相続税申告関係・贈与契約書
      ・贈与税申告書の控え
      ・相続時精算課税選択届出書の控え
      ・公共料金の請求書や領収書、利用明細書
      ・相続税申告書の控え(故人が相続人として申告したもの)
      その他必要になるもの・手がかりになるもの・マイナンバーカード
      ・パソコン、スマートフォン
      ・過去の遺産分割協議書(故人が相続人として記載されているもの)
      ※印鑑証明書(印鑑カード)や実印は本人の死後は基本的に必要になることはありません。
      相続手続き等で必要なもの・重要な手がかりになるもの

      この段階では明らかに不要なものは処分しても大丈夫ですが、一見不要と思えるものでも他の家族にとっては思い出の品だったりすることもあります。

      一緒に整理を行わない方には写真を撮って送るなどして念のために確認した方がいいでしょう。

      また、一人暮らしの高齢者が亡くなると、いわゆる「ごみ屋敷」の状態であることや、そこまで行かなくても物が溢れて整理が進まない状況になることがよくあります。

      自分たちで根気よく片付けてもいいですが、なかなか時間が取れないのであれば、遺品整理業者や清掃業者に依頼することも検討しましょう。

      ■先祖の位牌や仏壇はどうすればいい?

      親が住んでいた実家を処分するにあたって、先祖代々の位牌や仏壇の処理に困るという話はよく聞きます。

      できることなら家族の誰かが引き取るべきですが、住宅事情などでそうもいかないこともあるでしょう。

      位牌や仏壇・仏具については、宗派にもよりますが、お寺で「閉眼供養(魂抜き)」という儀式を行い、処分(お焚き上げ)してもらうのが一般的です。

      閉眼供養を済ませれば位牌や仏壇・仏具はただの「モノ」に戻るとされています。

      菩提寺や近くのお寺(神道の場合は神社)で、法要の日程等とあわせて相談してみるのがいいでしょう。

      また、仏壇仏具店や遺品整理業者でも対応してくれる場合もあります。お寺での閉眼供養についても対応してくれることもあるので確認してみましょう。

      なお、位牌や仏壇は一般ごみや粗大ごみとして自分で処分することも可能です。

      ですが、やはり気が引ける・抵抗があるという方が多いと思うので、せめて閉眼供養は済ませた方がいいでしょう。

      遺言書の有無の確認

      相続手続きを進めるにあたり、遺言書の有無は早めに確認しておくべきです

      遺言書がある場合は基本的にその内容に従って相続することになるので、遺言書の有無や内容によりその後の手続きの進め方が大きく異なってくるためです。

      生前に遺言書の保管場所を聞いていなかった場合は、遺言書を探す必要があります。

      遺言書の調査・探索の方法は、遺言の種類によって異なります。

      遺言の種類と調査・探索方法

      遺言の種類場所方法
      公正証書遺言公証役場遺言検索システムを利用
      自筆証書遺言法務局
      (保管制度を利用していた場合)
      ①    法務局からの「遺言の保管に関する通知」の確認
      ②    法務局に対する証明書の請求
      故人の自宅など①    自宅の金庫やタンス等の探索
      ②    取引先金融機関の貸金庫の確認
      ③    司法書士等の専門家や金融機関への問い合わせ
      ④    故人の親しい友人等への聴取
      遺言の種類と調査・探索方法

      遺言書の調査・探索方法について、くわしくはこちらをご覧ください。

      ■自筆証書遺言の場合は検認が必要

      故人の残した遺言が自筆の遺言だった場合、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要があります。

      検認は遺言書の保管状態等を確認するための手続きです。

      検認を経なければ、遺言書を使用して相続手続きを行うことはできません。

      検認は相続人の一人から家庭裁判所に申立てをして手続きを行います。申立ての際には戸籍一式等が必要になります。

      なお、自筆の遺言書であっても法務局の保管制度を利用していた場合は、検認手続きは不要です。

      検認手続きについてくわしくはこちら

      法務局の自筆証書遺言保管制度についてくわしくはこちら

      賃貸住宅の手続き

      亡くなった方が賃貸住宅暮らしだった場合、同居者が住み続ける場合は契約者の変更手続きを、一人暮らしだった場合等は退去手続きを行う必要があります。

      賃貸借契約の変更や解約手続きについては、管理会社や家主に連絡を取り、必要な書類を提出して行います。

      特に退去する場合は、退去するまで家賃がかかり続けるので、すみやかに家探しや遺品整理を行い、不要なものは処分して明け渡しましょう。

      司法書士田中暢夫

      解約して退去する際に敷金や火災保険の返戻金が戻ってくる場合がありますが、こちらは故人の遺産であり、遺産分割や相続税の対象なので、他の相続人としっかり情報共有しておきましょう。

      ■相続放棄する場合の注意点

      相続放棄する場合、未払い家賃の支払いや賃貸借契約の合意解除に応じる必要はありません。

      やむを得ず相続人が解約する場合でも、敷金や火災保険の返戻金は受け取らないようにしましょう。

      なお、同居の配偶者については、相続放棄した場合でも「日常家事債務の連帯責任(民法第761条)」として家賃の支払い義務が生じる可能性があります。

      相続放棄(借金がある場合)

      亡くなった親に借金があり、預貯金や不動産などのプラスの財産を上回る場合は、すみやかに相続放棄を行うべきです。

      相続放棄とは、「亡くなった人(被相続人)のプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しない」ということです。

      不動産や預貯金などのプラスの遺産だけ相続して、借金などの債務だけを放棄するということはできません。

      相続放棄する場合は故人の遺産には一切手を付けないように気を付けましょう。

      司法書士田中暢夫

      相続放棄しても、死亡保険金や未支給年金は受取人等の固有財産なので受け取ることができます。
      また、葬儀費用については遺産から支払っても基本的に問題ありません。

      相続放棄する場合、亡くなったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申立てをする必要があります。

      具体的には、戸籍謄本や申述書等の必要書類を揃え、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する必要があります。

      期限内に相続放棄しなかった場合や、故人の遺産(現預金など)を使ってしまった場合、債務も含めてすべて相続した扱いとなるため、債権者から借金を支払ってくれと言われたら拒むことができなくなります。

      相続放棄する際の注意点についてくわしくはこちらの記事をご覧ください

      司法書士田中暢夫

      親と疎遠だったため、借金等があるかどうかわからない場合は、「信用情報調査」を行うことでクレジットカードの利用状況や金融機関・消費者金融からの借り入れの状況を把握することができます。

      故人の借金の調査方法についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

      準確定申告

      亡くなった人の準確定申告が必要な場合、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に税務署へ準確定申告書を提出しなくてはなりません。

      「準確定申告」とは、法定相続人が被相続人に代わって確定申告を行う制度です。

      準確定申告の対象となる期間は亡くなった年の1月1日から死亡日までです。

      対象期間において、亡くなった方が下記に該当する場合は準確定申告が必要になります。

      【準確定申告が必要なケース

      • 故人の事業所得・不動産所得が48万円以上あるケース
      • 故人が年間400万円を超える年金を受給していたケース
      • 故人が年収2,000万円を超える給与所得者だったケース
      • 故人が2か所以上から給料をもらっていたケース
      • 故人の副業所得等が20万円を超えるケース
      • 故人が生前に一定額以上の満期保険金等を受け取っているケース
      • 故人が生前に株式や不動産の売却を行い、譲渡所得が発生しているケース

      なお、亡くなる前年(対象期間は1月1日から12月31日)に、故人が上記の条件に該当する場合で、翌年の1月1日から確定申告期限(原則として翌年3月15日)までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合、前年分と当年分(死亡した年の分)の両方の準確定申告が必要になります。

      この場合の準確定申告の期限は、前年分、当年分とも相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。

      例えば、年が明けて2月1日に亡くなった場合は、前年分の準確定申告と、当年1月1日~2月1日分の準確定申告の2回分を行う必要があり、期限はともに6月1日となります。

      ■準確定申告の期限

      準確定申告の期限
      準確定申告の期限

      相続人が2人以上いる場合は、全員の連署により準確定申告書を提出することになります。

      準確定申告の期限を過ぎた場合、本税の他に罰則として「延滞税」「無申告加算税」が課されます。

      参考

      納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁

      司法書士田中暢夫

      所得が少なければ、延滞税等含めてもそれほど大きな税額にはなりませんが、できるだけ期限内に申告を済ませるようにしましょう。

      準確定申告が必要なケースに該当しない場合でも、申告することで源泉徴収された税金等の還付を受けられることがあります。

      故人が生前に確定申告をしていたケースは、還付を受けるために準確定申告を行うことも検討しましょう。

      なお、準確定申告の期限は4か月ですが、還付を受けるための申告(還付申告)は、原則としてその年の翌年1月1日以降、5年間*提出することができます。

      *たとえば2025年分の確定申告の場合、2010年12月31日までは提出可能

      高額療養費の請求

      本人が亡くなった後に、未支給の高額療養費があれば、遺族(相続人)の方から請求することができます。

      高額療養費制度とは、医療機関等でひと月に自己負担限度額を超えて医療費を支払った場合に、申請をすると超えた額が支給される制度です。

      亡くなった後に高額療養費の払い戻しを受けるためには、原則として相続人からの申請が必要になります。

      加入中の健康保険によっては自動的に口座に振り込んでくれる場合もありますが、口座凍結により振り込めない場合などはやはり申請が必要になります。

      高額療養費の払い戻しがある場合、一般的には医療費を払ってから2~4か月後に、自治体や健康保険組合等から申請書が届くので、口座番号等の必要事項を記入して提出します。

      本人の生存中は申請書と領収書のみの提出で申請可能なことがほとんどですが、亡くなった後に相続人名義の口座に振り込んでもらう場合は、本人との関係がわかる戸籍謄本等の提出を求められる場合もあります。

      司法書士田中暢夫

      高額療養費の支給を受ける権利は、診療を受けた月の翌月の初日から2年で時効消滅するので早めに申請しておきましょう。

      高額療養費の払い戻しは本来亡くなった本人が受けるべきものであり、相続財産として遺産分割や相続税課税の対象になります。

      また、相続放棄する場合は高額療養費の請求はしないように注意しましょう。(故人の口座に勝手に振り込まれる分は問題ありません。)

      死亡後の高額療養費請求手続きについてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

      【49日目以降】少し落ち着いたら遺産相続手続きを行う

      遺産相続の手続きをいつ頃から始めるかの決まりはなく、亡くなった直後から始める方もいますが、一般的には四十九日を過ぎ、死亡直後の慌ただしさが落ち着いたころに始めれば遅くはありません。

      遺産相続手続きは、亡くなった後の手続きの中でも最重要かつ手間がかかる部分です。

      前章までを参考に、比較的簡単な手続きが終わっていれば、気持ち的にも余裕を持って遺産相続手続きに取りかかることができるでしょう。

      遺産相続手続きの流れ

      一般的な相続手続きの流れは下記のとおりです。

      すでに本記事で解説した部分も含まれますが、改めて手続き全体の流れを把握しておきましょう。

      各手順について詳しく知りたい方はリンク先の記事をご参考ください。

      STEP
      戸籍を集めて相続人を確認する

      相続手続きを進めるにあたっては、必ず戸籍を集めて相続人を確認する必要があります。

      窓口請求のほか、郵送請求や広域交付制度による請求を行い、効率よく戸籍を集めましょう。

      戸籍が集まったら、後の手続きを楽に進めるために法定相続情報一覧図を取得することをおすすめします。

      STEP
      相続財産の調査を行う

      必要な戸籍が揃い次第、相続財産の調査を開始します。

      調査対象は不動産、預貯金、株式等の証券、生命保険契約などです。

      相続関係によっては遺言書の調査も忘れずに行いましょう。

      借金があるかもしれない方は、念のため信用情報の調査も行っておきましょう。

      STEP
      相続財産目録を作成する

      財産調査が終わったら、調査結果をもとに相続財産目録を作成しましょう。

      財産目録の作成は義務ではありませんが、遺産分割協議にあたっての相続人間の認識共有や、相続税の申告が必要かどうかの判断に役立ちます。

      財産目録の形式に決まりはありませんが、PC(エクセル等)で作成すると編集が容易です。

      下記リンク先のひな型も参考に作成してください。

      STEP
      相続人全員で遺産の分け方について話し合う(遺産分割協議)

      相続財産目録で遺産分割の対象となる財産を確認した上で、遺産の分け方について話し合いましょう。

      遺産分割協議は相続人全員の参加が必要です。

      法律上の期限はありませんが、先延ばしにすると様々なデメリットが生じるので相続開始後6~10か月を目安に話をまとめることを目指しましょう。

      未成年者や認知症の方がいる場合は、遺産分割協議にあたり別途裁判所で代理人選任の手続きが必要になることもあります。

      STEP
      遺産分割協議書を作成する

      相続人間の話し合いにより遺産の分け方が決まったら、合意した内容をもとに遺産分割協議書を作成します。

      戸籍謄本や登記簿謄本などの資料を確認しながら、記載ミスや漏れがないように作成しましょう。

      下記リンク先の協議書の見本やひな型も参考にしてください。

      STEP
      遺産分割協議書に署名捺印する

      遺産分割協議書を作成したら、相続人全員に署名捺印を貰います。

      全員がすぐに集まれるなら一同に会してもいいですが、遠方の場合や時間が合わない場合は郵送で手配します。

      一つの書面を順次回していく方法だと時間がかかる上、汚損や紛失のリスクもあるので、各自がそれぞれ単独で署名押印した書面をまとめて提出する方法(証明書形式)をおすすめします。

      遺産分割協議書とあわせて、全員分の印鑑証明書を忘れずに貰っておきましょう。

      STEP
      預貯金の解約や不動産の名義変更などの相続手続きを行う

      相続人全員が署名捺印した遺産分割協議書と印鑑証明書が揃ったら、順次解約や名義変更手続きを行っていきます。

      金融機関の相続手続きや法務局での登記手続きは、相続人代表者や財産の取得者が単独で手続きを行います。

      解約した預貯金について、代表者がまとめて払戻しを受け、後で各相続人に分配する場合は、振込先の口座を忘れずに聞いておきましょう。

      STEP
      (必要な場合)相続税の申告・納付を行う
      相続税の基礎控除額

      遺産総額が相続税の基礎控除額【3,000万円+(600万円×法定相続人数)】を超える場合は、相続税の申告・納付を行います。

      申告・納付期限は故人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。

      配偶者控除や小規模宅地等の特例等の税制上の優遇措置を受けるためには、遺産分割協議も10か月以内に終わらせる必要があるので注意しましょう。

      司法書士田中暢夫

      相続をめぐる事情は人により異なるため、上記の他にも様々な手続きが必要になることがあります。
      後述の「亡くなった後に必要な手続き160のチェックリスト」も参考にしてください。

      遺産相続手続きの必要書類

      遺産相続手続きでは、戸籍謄本など、ほとんどの手続きで共通して必要になる書類があります。

      多くの手続きで共通する「基本の必要書類」は下記のとおりです。

      手続きによってはこのほかにも書類が必要になりますが、まずはこちらの書類を揃えることを心がけましょう。

      ■相続手続きにおける基本の必要書類

      誰の書類有効期限取得場所備考
      遺産分割協議をする場合(遺言書がない場合)
      亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本,改製原戸籍)なし本籍地の市区町村役場
      *広域交付制度利用の場合は最寄りの市区町村役場
      法定相続情報一覧図で代用可能
      住民票の除票(又は戸籍の附票)なし最後の住所地の市区町村役場
      *戸籍の附票は本籍地の市区町村役場
      法定相続情報一覧図で代用可能
      相続人全員の遺産分割協議書なし相続人全員で作成法定相続人が1人の場合は不要
      戸籍謄本なし
      *相続開始日以降に発行されたもの
      本籍地の市区町村役場法定相続情報一覧図で代用可能
      印鑑証明書手続きによって有効期限が異なる住所地の市町村役場
      遺言書がある場合
      亡くなった人の遺言公正証書書(正本又は謄本)なし公証役場
      自宅など
      ①公正証書遺言の場合
      遺言書情報証明書なし法務局②自筆証書遺言書保管制度利用の場合
      検認済遺言書(又は検認調書謄本)なし家庭裁判所
      自宅など
      上記①②以外の遺言書の場合
      戸籍謄本(死亡の記載のあるもの)なし本籍地の市区町村役場*
      *広域交付制度利用の場合は最寄りの市区町村役場
      法定相続情報一覧図で代用可能
      住民票の除票(又は戸籍の附票)なし最後の住所地の市区町村役場
      *戸籍の附票は本籍地の市区町村役場
      法定相続情報一覧図で代用可能
      財産をもらう人の戸籍謄本なし
      *相続開始日以降に発行されたもの
      本籍地の市区町村役場法定相続情報一覧図で代用可能
      遺言執行者の選任審判所謄本なし家庭裁判所遺言執行者がいる場合*
      *遺言で指定されている場合は不要
      相続手続きにおける基本の必要書類

      親が亡くなった直後にやってはいけないこと

      ここまでとは逆に「親が亡くなった直後にやってはいけないこと」もあります。

      下記の3つが代表的です。

      以下、それぞれについて解説します。

      必要以上に多額の現金を引き出す

      亡くなった後、親の口座から必要以上に多額のお金を引きだすことはやめておきましょう。

      口座内のお金の権利は相続人に移っていますが、遺産分割協議が終わるまでは相続人全員の共有状態です。

      ここで相続人のひとりが勝手に引き出してしまうと、私的な使い込みを疑われるなど、他の相続人とのトラブルの原因になりかねません

      少なくとも他の相続人の同意を得ずに引き出すことはやめた方がいいでしょう。

      ただ、そうは言っても葬儀費用等の支払いで至急お金が必要なケースもあるので、いついかなる時も引き出してはいけないとまでは言えません。

      もし、葬儀費用に充てるため等の理由でやむを得ず引き出す場合は、下記のことに注意しましょう。

      • できる限り事前に相続人全員の同意を得る。
      • 事前に共有できなかった方には事後にできるだけ早く伝えておく。
      • お金の用途と支出額が証明できるように領収書等を保管しておく。
      • 必要な額を大きく上回るお金を引き出さない。
      司法書士田中暢夫

      故人に借金がありそうな場合は、引き出してしまうと相続放棄できない可能性があるので特に注意しましょう。

      ■亡くなるとすぐに銀行口座は凍結される?

      口座名義人が亡くなっても、すぐに口座が凍結されることはありません。

      金融機関が口座を凍結するのは、口座名義人の死亡を知った時です。

      金融機関が顧客の個人情報を役所と共有することは無いため、役所に死亡届を出したからと言ってただちに口座が凍結されるようなことはありません。

      ほとんどの場合、相続人や親族が金融機関に連絡したことによって口座名義人の死亡が確認され、口座が凍結されます。

      死亡後に口座凍結されるタイミングについてくわしくはこちらをご覧ください。

      ■相続預貯金の仮払い制度はあまり使えない

      口座が凍結してしまっても、「相続預貯金の仮払い制度」を利用すれば一定額のお金を引き出すことができます。

      「相続預貯金の仮払い制度」とは、遺産分割協議が成立する前であっても、ひとつの金融機関当たり150万円まで相続人が単独で預金の払戻しを受けられる制度です。

      ただし、実際の所この制度は使い勝手が悪く、利用した方がいいケースは稀です。

      なぜなら、通常の相続手続きと仮払い手続きで必要な書類や手続きにかかる期間にほとんど差がないからです。

      一般家庭の多くが該当するであろう「相続人全員と容易に連絡が取れ、手続きに協力してくれるケース」では、すみやかに通常の相続手続きを行えばよく、仮払い制度を利用する必要はありません。

      相続預貯金の仮払い制度についてくわしくはこちらをご覧ください。

      他の家族の許可なく遺品を処分する

      他の家族の許可なく遺品を処分することは、トラブルの原因になるのでやめましょう。

      ここでいう処分とは「捨てる」「売却する」だけでなく、「形見分けする」も含まれます。

      経済的価値のない動産(家財道具、衣類、写真など)は、遺産分割協議の対象とせず、「形見分け」として親族や知人に分けることも少なくありません。

      しかし、自分にとって価値のないものであっても、他の家族にとっては大切な思い出の品かもしれません。

      他の家族に知らせず勝手に他人にあげると後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

      気持ちの問題が大きいので、経済的価値があるものよりかえって厄介です。

      経済的価値の有無に関わらず、親の残した遺品はすべて遺産分割の対象になると考え、誰が取得するか決まるまでは、勝手に処分することはやめておきましょう。

      遺産相続手続きを勝手に進める

      たとえ他の相続人のためであっても、遺産相続手続きを勝手に進めることはやめておきましょう。

      本記事で解説したとおり、死後に必要な手続きの中には、他の相続人の関与なく遺族の一人が単独で行える手続きも多いです。

      また、代表者の方が「他の家族は手続きに全く無関心で、自分がやらなければ進まない」と考えているケースもよく聞きます。

      もちろん本当に無関心な方もいるでしょうが、実際には「相続のことはよくわからないし、不安があるから専門家に相談しながら慎重に進めたい」と考えている方も多いです。

      そんな中で、代表者の方が手続きをどんどん進めていったら不安が強まり、「自分の都合のいいように進めようとしているのでは」とあらぬ疑念を抱かれてしまうかもしれません。

      遺産相続手続きはお金に関わることなので、自分から言い出しづらい方もいることを心得て、他の方にしっかり情報共有し、理解を得てから進めるようにしましょう。

      ただ、他の人に気を使いながら動くのは大変でしょうし、自分だけ損した気持ちになることもあると思います。

      不満をため込んで軋轢が生じてしまうぐらいなら、相続の専門家などの第三者に任せるのも一つの手かもしれません。

      親が亡くなった後の手続きは誰に代行してもらえる?相談先は?

      親が亡くなった後の手続きは、細かいものを含めると100種類以上にも及びます。

      中でも専門的知識が必要となる遺産相続手続きは、慣れない方にとって大変な負担となります。

      そこで相続手続きの専門家への相談や依頼を考える方も多いと思いますが、一般の方には馴染みのない分野であり、誰にどの手続きのことを聞いたらいいかわからないという方もいるのではないでしょうか。

      そこでここでは、死後手続き・相続手続きの専門家について、対応できる分野や選ぶ際のポイントなどを解説します。

      専門家への依頼を考えている方はぜひ参考にしてください。

      誰に相談できる?

      相続についての相談先となることが多いのは、下記4つの士業専門家です。

      1. 司法書士・・・不動産の相続手続きや裁判所の手続きなどの専門家・一般的な相続手続きの代行も可能
      2. 弁護士・・・遺産分割交渉や遺留分請求など紛争解決の専門家
      3. 行政書士・・・行政関係手続きの専門家・戸籍の収集や預貯金の相続手続きなど一般的な相続手続きの代行が可能
      4. 税理士・・・相続税の申告や準確定申告など税務の専門家

      具体的に相談・対応できることを専門家別にまとめると下表のとおりです。

      ■専門家別の対応可能業務

      専門家別の対応可能業務
      専門家別の対応可能業務

      ※〇は対応可能。×は対応不可。△はその業務の一部しかできない又は扱っている事務所が少ない。

      法律上、弁護士は相続登記や税申告も対応可能ですが、相続専門を謳う法律事務所でも紛争解決に注力しているので、実際には提携の司法書士や税理士に依頼することが大半です。

      司法書士と行政書士は混同されやすいですが、司法書士は不動産登記や裁判所に提出する書類の作成等が代行できるなど、対応できる範囲に違いがあります。

      上記を踏まえた上で、誰に何を相談できるかについては、一般的には下記のように考えておけば大丈夫です。

      • 遺産を巡って争いになっていない場合・・・司法書士
      • 遺産を巡ってすでに争いになっている場合・・・弁護士
      • 相続税について相談したい場合・・・税理士

      多くの方にとってはじめての相続の相談先としておすすめするのは「司法書士」です。

      司法書士は相続全般について対応可能であり、相続を専門とする司法書士であれば、必要に応じて相続に強い税理士や弁護士の紹介もしてくれるので、最初の相談先として最適です。

      ただし、司法書士の中でも相続については相続登記ぐらいしかやっていない事務所もあるので、相続手続き全般についてのアドバイスを期待する方は、相続に強い司法書士に相談するようにしましょう。

      ○○士などの資格名よりも重要な専門家選びの3つのポイント

      相続発生後、最初の相談先は相続専門の司法書士が適任であると述べましたが、実は専門家選びの際は○○士などの資格名よりも重視すべきことがあります。

      それは下記の3つです。

      1. 「専門性」
      2. 「対応力(対応実績)」
      3. 「わかりやすさ」

      ①「専門性」については、単に相続専門を謳っているだけではなく、「本当に相続に精通しているか(十分な知識があるか)」が重要です。

      ホームページ等で積極的に相続に関する情報発信をしている事務所であれば、ある程度は専門性があると判断していいでしょう。

      ②「対応力(対応実績)」についてですが、いくら知識があっても実際に対応・解決できなければ意味がありません。

      また、「対応実績累計○○件」「年間相談件数○○件」とうたっている事務所は多いですが、開業年数や事務所の規模に左右される上、ごく簡単な依頼も含まれる可能性もあるため、これだけでは十分な判断材料にはなりません。

      判断材料にしやすいのは、これまでの解決事例やお客様の声などの「個別の対応実績」です。

      ホームページで公開している場合は参考にするといいでしょう。

      最後に③「わかりやすさ」ですが、いくら専門性や対応力があっても、話している内容が理解不能では信頼して任せるのは難しいでしょう。

      専門的で難しい話を知識のない方にもわかりやすく伝えることができるか、というのはどのような分野においても重要な能力です。

      こればかりは実際に話をしてみないとわからない部分ですので、最初の面談で納得するまで質問するといいでしょう。

      相続手続きを依頼したいと言っても

      相続手続きを一から十まですべて丸投げしたい」と

      できる所は自分でやるので難しい所だけお願いしたい(その分費用を抑えたい)

      とでは大きな違いがあります。

      さらに言えば、後者には「できれば、自分でやる手続きについてもアドバイスしてほしい」というニーズも含まれるかもしれません。

      お客様自身も気づいていない本当のニーズを汲み取って適切な提案ができるかどうかは、専門家の中でももっとも差が出る部分です。

      下記は当事務所のサービス説明になりますが、相続手続きの代行サービスの一例として参考にされてください。

      専門家選びの際は下記の記事も参考にしてみてください。

      「亡くなった後に必要な手続き160のチェックリスト」をダウンロード

      本記事で解説した以外にも、親が亡くなった後はたくさんの手続きが必要になります。

      そこで、本記事で解説した手続きを含め、亡くなった後に必要な160の手続きを便利なリストにしました。

      人によって必要な手続きは異なりますが、かなり網羅的なリストなので、ほとんどの方はこの中に必要な手続きはすべて含まれていると思います。

      このリストで自分に必要な手続きをチェックして、期限までに忘れることなく手続きを終わらせましょう。

      親が亡くなった後についてのよくある質問

      ここからは、親が亡くなった後のご相談の際によく受ける質問を、Q&A形式で解説します。

      親が亡くなった時にかかる税金について知りたい

      相続税、所得税、登録免許税などの税金がかかる可能性があります

      親が亡くなった後に、相続人が支払う可能性がある税金及び税率等は下記のとおりです。

      ■親が亡くなった後に相続人が支払う可能性がある税金

      税金の種類税率・税額申告・納付期限納税義務者・その他
      相続税各相続人の法定相続分に応ずる取得金額 により10~55%相続開始を知った日の翌日から10か月以内・財産を取得する相続人が各自負担
      ・遺産総額が基礎控除以下の場合は申告・納税不要
      所得税(準確定申告に係るもの)課税される所得金額により5~45%相続開始を知った日の翌日から4か月以内・相続人全員が原則法定相続割合で負担
      ・故人の所得等が下記すべて満たす場合は申告不要

      ①給与所得が2000万円以下
      ②年金収入が400万円以下
      ③副業所得その他の所得が20万円以下
      登録免許税不動産の固定資産税評価額の0.4%(原則)登記申請と同時申請人(不動産の取得者)が負
      住民税・所得割は前年の所得の10%
      ・均等割は自治体により異なる
      6・8・10・1月の各月末(普通徴収の場合)・1月1日時点で生存している住民に課税
      ・死亡年に納税すべき住民税がある場合は相続全員が連帯して負担する
      ・自治体が定める非課税限度額以下の人など条件に該当する場合は非課税
      固定資産税・都市計画税・固定資産税は不動産の課税標準額の1.4%(原則)
      ・都市計画税は自治体により異なる
      各自治体が定める期限(年4回の分割納付が原則)・1月1日時点の不動産所有者に課税
      ・故人が負担すべき固都税については原則として相続全員が連帯して負担する
      ・遺産分割協議で不動産取得者が決定した場合は取得者が負担する
      ・課税標準額が免税点未満の不動産は非課税
      ・公衆用道路など公共用途の不動産は非課税
      自動車税・軽自動車税(種別割)・自動車税は総排気量及び年式により異なる
      ・軽自動車税は車種及び年式により異なる
      毎年5月31日(原則)・4月1日時点の車両所有者に課税
      ・故人が負担すべき(軽)自動車税については原則として相続全員が連帯して負担する
      ・遺産分割協議で車両取得者が決定した場合は取得者が負担する
      譲渡所得税(所得税・住民税)・不動産は所有期間により譲渡所得の約20%又は40%(原則)
      ・株式等は譲渡所得の約20%(一律)
      譲渡翌年の確定申告期限内(通常は3月15日)・相続した不動産や株式等を売却(有償譲渡)して利益が出た場合に売却した人に課税
      ・売却しても利益が出なかった場合(譲渡損の場合)は非課税
      ・条件を満たせば税額が減免される特例有
      親が亡くなった後に相続人が支払う可能性がある税金

      なお、上記は相続人等が納税しなければならない税金ですが、亡くなった人に源泉徴収等で納めすぎた税金がある場合、準確定申告(還付申告)をすることで所得税の還付を受けることができます。

      還付申告は義務ではないので、還付金の額と申告にかかる手間(又は税理士に申告を依頼する費用)を比べて、申告するかどうか決めましょう。

      また、故人が支払い済みの住民税や国民健康保険等の保険料に過払い(過誤納)があった場合、納めすぎた住民税や保険料は還付されます。

      還付を受けられる場合、相続人代表者宛に「過誤納金還付(充当)通知書」等の書類が送付されるので、同封の還付請求書(口座振込依頼書)等に記入し、提出してください

      司法書士田中暢夫

      還付された税金は、相続財産として遺産分割や相続税の対象となるので注意しましょう。

      親が亡くなったら固定資産税は誰がどうやって納めるのか知りたい。

      相続人代表者又は不動産取得者が納付書で納付しましょう。

      不動産の所有者が亡くなった場合、固定資産税の納付義務は相続人が引き継ぎます。

      相続人が複数の場合は、全員が連帯して納付義務を負います。

      遺産分割協議により不動産を取得する人が決まったら、以後の固定資産税はその方が負担することになります。

      実際には、相続発生から遺産分割協議成立までの間に他の方がとりあえず支払った固定資産税があれば、その分も清算する(不動産取得者が負担する)のが一般的です。

      納付方法は、すでに届いている納付書(納税通知書)があれば相続人の代表がそのまま支払えば大丈夫です。

      納付書を紛失した場合やまだ納付書が届いていない場合*は、役所(東京23区は都税事務所)に連絡すれば再度送ってもらえます。

      *固定資産税の納税通知書(納付書)は毎年5~6月頃に当年度分が届きます。

      なお、役所が不動産の所有者が亡くなったことを把握すると、下図のような「相続人代表者指定届」が送られてくることがあります。

      ■相続人代表者指定届 記入見本

      相続人代表者指定届出書の記入見本
      記入見本 相続人代表者指定届出書(多摩市HPより引用)

      こちらは今後納税通知書の送付先となる相続人代表者を指定するための書面ですが、提出は義務ではありません。

      納税通知書は毎年1月1日時点の登記簿上の所有者(登記名義人)に送られてくるので、年内に不動産の名義変更手続き(相続登記)を完了させる見込みであれば提出しなくても問題ありません。

      年内に相続登記が終わらない場合は、代表者を決めて提出しておきましょう。

      参考

      相続人代表者指定届出書(納税義務がある方が亡くなられたとき)|多摩市

      司法書士田中暢夫

      「相続人代表者指定届」は納税通知書の受取人を指定するための書面であり、所有者を決定(変更)するための書面ではありません。所有者を変更するためには相続登記が必要になります。

      親が亡くなったら住宅ローンはどうなるのか知りたい

      団信で完済となるケースが多いですが、親子ローンやペアローンの場合は引き続き返済が必要になります。

      亡くなった方が単独で返済していた住宅ローンであれば、通常は団信(団体信用生命保険)から金融機関に死亡保険金が支払われ、残りのローンは完済となるので、相続人が支払いをする必要はありません。

      団信による住宅ローン完済の仕組み

      ただし、契約していたのがペアローン(夫婦ローン)や親子ローンの場合は下記のとおり相続人が支払いを続けることになります。

      ■ペアローン(夫婦ローン)の場合

      夫婦がそれぞれ別に団信に加入して住宅ローンを組む形式。

      夫婦のどちらが亡くなると、死亡した方のローンは団信で完済となるが、残りの配偶者の分は引き続き自分で返済を続ける。

      なお、取り扱いのある金融機関は限定的ですが、夫婦の片方が死亡した場合に残りの配偶者分も完済となるタイプの団信(夫婦連生団信)も存在します。

      ■親子ローン(親子ペアローン)の場合

      親子がそれぞれ別に団信に加入して住宅ローンを組む形式。

      親が亡くなると、親のローンは団信で完済となるが、子の分は引き続き自分で返済を続ける。

      ■親子ローン(親子リレーローン)の場合

      当初は親が主債務者となりローンを返済し、一定期間経過後に子にローンが引き継がれる形式

      通常は子のみが団信に加入し、親は団信に加入しないため、親が亡くなったらそのまま子が返済を続ける。

      司法書士田中暢夫

      いずれの場合も、完済分については抵当権抹消登記、承継・変更分については抵当権変更登記などが必要になります。

      なお、まれに住宅ローン返済中に死亡しても団信から保険金が下りないケース*があります。

      *保険料の支払いが遅れたために団信契約が失効しているケースや、死亡保険金支払いの免責事由(加入後一定期間内の自殺など)に該当するケースなど。

      その場合は下記3つの方法からいずれかを選択することになります。

      1. 相続放棄する。(不動産を手放す代わりに相続人は返済しなくて済む。)
      2. 不動産を相続して、相続人が返済を続ける。
      3. 相続したうえで不動産を売却し、売却代金から一括返済する。

      亡くなった後の住宅ローン・団信関係の手続きについてくわしくはこちらをご覧ください。

      まとめ

      ここまで60,000文字を超える長い記事にお付き合いいただきありがとうございました。(全部くまなく読んだ方は少ないかもしれませんが…)

      本記事を参考にしていただければ、親が亡くなる前にやることや亡くなった後にやることについてすぐにでも実践していただけると思います。

      しかし、実のところ親が亡くなった後の手続きは本記事に書ききれなかったものがまだまだあります。

      また、相続をめぐる事情は十人十色のため、イレギュラーな事態は普通に発生するのですが、その一つ一つについて自分で対応するのは大きな負担となります。

      特に遺産相続手続きについては相続人全員の同意・協力が必要なため、感情面含めて配慮しなければならず、「自分はこんなに頑張っているのに…」とやるせない思いを抱える場面もあるかもしれません。

      手続きの進め方に不安を感じた方、これ以上自分で対応することが難しいと感じた方は、お早めに相続の専門家に相談することを強くおすすめします。

      ※記事の内容や相続手続の方法、法的判断が必要な事項に関するご質問については、慎重な判断が必要なため、お問い合わせのお電話やメールではお答えできない場合がございます。専門家のサポートが必要な方は無料相談をご予約下さい。

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      この記事の執筆者

      司法書士法人東京横浜事務所
      代表 田中 暢夫(たなか のぶお)

      紹介年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。ミュージシャンを目指して上京したのに、何故か司法書士になっていた。
      誰にでも起こりうる“相続”でお悩みの方の力になりたいと、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
      九州男児で日本酒が好きですが、あまり強くはないです。
      保有資格東京司法書士会 登録番号 第6998号
      簡裁訴訟代理認定司法書士 認定番号 第1401130号

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