「独身の兄弟の相続、こんなに大変とは…」実例から学ぶ残される人のための対策
著者情報

司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫
年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
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司法書士法人東京横浜事務所
代表/司法書士 田中 暢夫
年間100件以上の相続のご相談・ご依頼に対応している相続専門の司法書士。相続案件を中心に、日々記事を書いたり、ご相談を受けたりしています。
「仲のいい兄弟がいるけど、独身だから相続がどうなるか心配」
「できれば遺言書を書いて欲しいけど、遺産目当ての様で何となく言い出しづらい」
親の相続はイメージもしやすく、遺言などの対策をして欲しいことも比較的伝えやすいのに比べ、兄弟の相続については漠然とした不安を抱えつつも言い出せないという方も少なくないと思います。
しかし、独身の兄弟が亡くなった場合、仲のいい兄弟姉妹の誰かが大変な思いをする可能性が高いです。
筆者は、相続実務の専門家として独身の方の相続手続きを多数サポートしてきましたが、故人と一番親しく、相続人の代表として尽力した方と、何もしていない他の方とで貰える遺産額は同じというケースをたくさん見ています。
本記事では、実際の事例をもとに独身の兄弟の相続手続きの大変な点を解説するとともに、独身の兄弟に遺言書を書いてもらう方法についても解説します。

遺言書さえあれば・・・
司法書士田中暢夫いつかそんな後悔をしないように、本記事を読んでいただき、独身の兄弟と今後について話し合うきっかけとしてください。
事例で解説・独身の兄弟の相続はこんなに大変
まずは、実際にあった独身の兄弟の相続事例を見ていきましょう。
以下では、独身の兄弟の相続で起こった問題とそれをどのように解決したかを解説します。
事例① 相続人が多い上、新たな相続の発生でより複雑化してしまって大変

【事例の概要】
叔父様が亡くなられた方からのご相談。
相続人は兄弟姉妹と甥姪あわせて10名。
遺産については相続人間で公平に分けることで一応の合意はできているものの、相続人が多いため戸籍の収集が大変で、相続人間でのやり取りや書類の手配にも苦労しているという事で相談にいらっしゃいました。
さらに、手続きを進めている途中で相続人のうちの一人が亡くなってしまい、ほとんど面識のないお子様に連絡を取り、手続きに協力してもらわなければならないことに…
【問題点】
- 相続人である兄弟姉妹や甥姪合計10人に連絡を取り、遺産分割協議及び相続手続きについての協力を取り付ける必要がある。
- 手続き中に亡くなった相続人の子供(二次相続人)にも協力して貰う必要があるが、ほとんど面識がない。
- 相続人はそれぞれ離れて暮らしているため、郵送等でのやり取りにかなり手間がかかる。
- 相続関係を証明するために膨大な量の戸籍を取得しなくてはならない。
- 不動産については売却して代金を分ける予定だが、代表者含めて遠方在住のため、売却活動等を行うのが難しい。
- 関係者が多く、調整が大変なため、代表者が手続きを行うと過大な負担となる。
- 相続預金分配の方法等で後になって揉めることは避けたい。
【どのように解決したか】
上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決しました。
- 膨大な量の戸籍を収集し、相続人を確定しました。
- 全国各地にいる10人(後に増えたため合計12人)の相続人に一人ずつ連絡を取り、手続きへのご協力をお願いし、同意を貰うことができました。
- 面識のない相続人については特に慎重な対応が必要だったため、書面等で丁寧に事情を説明しました。結果、無事同意を貰い、手続きに協力してもらうことができました。
- 特定の方に負担がかからないように、遺産分割協議の調整及び協議書の手配、不動産の名義変更、金融機関の解約及び分配まで、必要な手続きを全て代行し、相続人の皆様の手を煩わせることなく完了させました。
- 不動産の売却についても当事務所で手配を行い、売却代金の公平な分配までサポートしました。
この事例の詳細についてはこちら

事例② 亡くなった方と疎遠で財産の詳細が不明なため、何から手を付ければいいかわからず大変

【事例の概要】
お姉様が亡くなられた方からのご相談。
相続人はお母様のみ。
相続人である母は高齢で動けないため、息子の自分が動いているが、故人は遠く離れた地方住まいで、手続きのために何度も足を運ぶのは難しいとのこと。
また、故人は長年他の家族とは交流が無く、財産の詳細が不明という事もあり、どこから手を付けていいかわからない状態。
借りていたアパートの賃貸借関係の清算も済んでおらず、できれば相続手続きだけでなく死後に必要な手続きの一切を代行してもらいたいとのことで相談にいらっしゃいました。
【問題点】
- 亡くなった方は地方在住だったため、手続きのために何度も現地に足を運ぶのが難しい。
- 賃貸借関係の清算が必要だが、遠方のため対応が難しい。
- 亡くなった方とは長年疎遠だったため、金融機関などの財産の詳細が不明。
- 故人が所有していた自動車についても、名義変更の上、処分が必要。
- 金融機関の解約や、保険金の請求その他の細かい手続きを含めて一切手を付けていないが、すべてを代行してくれる専門家や専門業者は少ない。
【どのように解決したか】
上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決しました。
- 遺品整理業者を手配し、遠方にある故人宅まで行って、遺品の中から必要な資料等の仕分けを行いました。
- 賃貸アパートの解約、未払賃料・清掃費用等の支払も代行し、賃貸借関係を清算しました。
- 故人宅から見つかった預金通帳等の資料から、関係先を把握し、財産調査を行いました。
- 敷地内にあった自動車については、地元の業者に連絡を取り、必要な手続きを行ったうえで引き取ってもらいました。
- その他、戸籍の収集、金融機関の解約、保険金等の請求、公共料金等の解約・清算など、亡くなった後に必要な手続きの一切を代行させていただき、ご相続人様の負担なく手続きを終えることができました。
この事例の詳細についてはこちら

事例③ 相続人同士が疎遠なため、連絡を取って話し合いをするのが大変

【事例の概要】
伯母様が亡くなられた方からのご相談。
相続人はきょうだい二人と甥であるご相談者様の3人。
きょうだいのうちの一人とご相談者様は親しい間柄だが、もう一人のきょうだいについては20年以上連絡を取っていないという状況。
親族から連絡先を聞き連絡を取ってみたが不通で、遠方に住んでいるらしいが正確な住所もわからないという事で、途方に暮れて相談にいらっしゃいました。
【問題点】
- 相続手続きのためには相続人全員の協力が必要なため、疎遠な相続人に連絡を取る必要がある。
- 遺産分割協議の前提として、相続財産の調査を行い、財産目録を作成して開示する必要がある。
- 協議がまとまった後の不動産の名義変更や、金融機関の解約及び分配についても、公平に行う必要がある。
- 不動産については売却して代金を分けるつもりだが、遠方に住んでいるため売却活動を行うのが難しい。
【どのように解決したか】
上記の状況及び問題点を受けて、当事務所で下記のとおりサポートを行い、解決しました。
- 疎遠な相続人の方に、手続きについての説明と協力をお願いする内容のお手紙を出しました。結果、無事協力していただけることになりました。
- 遺産分割協議の前提として、不動産や金融機関の調査を行い、相財産目録を作成し、相続人の皆様に開示しました。
- 分け方については法定相続分をベースとすることでまとまったため、遺産分割協議書を作成し、署名捺印の手配を行いました。
- その後の相続登記や、預貯金の解約・分配まで当事務所で代行させていただきました。
- 税理士と連携の上、必要な資料の収集等も行い、期限内に相続税申告を終えることができました。
- 不動産の売却についても当事務所で手配を行い、売却代金の公平な分配までサポートしました。
司法書士田中暢夫このケースでは、故人と生前から懇意にしており、死後も相続人の代表として尽力した方と、長年疎遠だった方で貰える遺産額は同じという結果になりました。
この事例の詳細についてはこちら

独身の兄弟が亡くなったときの相続が大変な6つの理由
上記の事例でもわかるとおり、独身の兄弟が亡くなったときの相続は大変になりやすいです。
大変になりやすい理由としては、主に下記の6つが挙げられます。
- 戸籍の量が多く、集めるのが大変
- 相続人がみんな高齢である
- 相続人が離れて暮らしている
- 他の相続人と疎遠である
- 被相続人と疎遠・遠方に住んでいる
- 先に亡くなっている相続人がいる
以下、それぞれについて解説します。
戸籍の量が多く、集めるのが大変
独身の兄弟が亡くなった場合、相続手続きを行うにあたって必要な戸籍集めが大変になることが多いです。
独身の方は基本的に親と同一戸籍に入っているため、父母が存命の場合は戸籍集めはそれほど大変ではありません。
一方、兄弟(兄弟姉妹)や甥姪が相続人になる場合、通常よりもたくさんの戸籍を集めなくてはなりません。
具体的には、下記のような戸籍が必要になります。
■必ず必要な戸籍
- 被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
- 被相続人の父母(場合によっては祖父母も)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
- 相続人である兄弟姉妹や甥姪の現在の戸籍謄本
■場合によって必要な戸籍
- (先に死亡した相続人がいる場合)先に死亡した相続人の死亡の記載のある戸籍謄本等
- (代襲相続が発生している場合)先に死亡した相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
- (相続放棄した先順位相続人がいる場合)相続放棄した人の現在の戸籍謄本
父母の戸籍はかなり昔の戸籍までさかのぼる必要がありますが、昔の戸籍は手書きのため、解読するのも一苦労です。
戸籍収集が大変なケースの具体的な事例はこちら

司法書士田中暢夫自分たちで戸籍を集めるのが難しい場合は、相続手続きを代行してくれる専門家等に依頼することをおすすめします。
■兄弟や甥姪の戸籍は広域交付制度の対象外
「戸籍の広域交付制度」とは、最寄りの役所において、全国の戸籍を一括して取得することができる制度です。
2024年3月1日から始まったこちらの制度を利用すれば、相続手続きに必要な戸籍収集の手間を大幅に減らすことができます。
ただし、兄弟姉妹や甥姪の戸籍謄本については広域交付制度の対象外のため、従来通り本籍地の役所窓口に出向くか郵送での請求が必要になります。
相続手続きに必要な戸籍の種類と集め方についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

相続人がみんな高齢である
独身の兄弟が亡くなり、父母や兄弟姉妹が相続人になる場合、相続開始時点で相続人も高齢であることが多く、問題が生じやすいです。
高齢になると認知症のリスクが高まりますが、認知症等で意思能力が無い相続人がいると、家庭裁判所で成年後見人を選んでもらわなければ手続きを進められません。
また、先述の「事例① 相続人が多い上、新たな相続の発生でより複雑化してしまって大変」のように、相続手続き中に相続人が亡くなってしまい、事態が複雑化するリスクもあります。
司法書士田中暢夫高齢の方が多いと、健康上の理由で外出が難しいため、なかなか手続きが進まないという事もよくあります。
相続人の中に高齢者が多くて大変なケースの具体的事例はこちら

相続人が離れて暮らしている
独身の兄弟が亡くなった場合、相続人同士の物理的な距離が遠いことで、手続きが大変になることも少なくありません。
兄弟姉妹は大人になればそれぞれ独立して暮らすことが一般的です。
相続人全員が近くに住んでいる場合は集まる事も簡単でしょうが、離れて暮らしている場合は、必要書類に署名捺印を貰うだけでも手間がかかります。
また、メールやLINEでやり取りする場合に、微妙なニュアンスの意思疎通で苦労する事も多いです。
司法書士田中暢夫亡くなった方の近くに住んでいる方が中心となって動くことが多いのですが、負担が大きい割に報われないという不満もよく聞きます。
相続人が離れて暮らしているため大変なケースの具体的事例はこちら

他の相続人と疎遠である
独身の兄弟が亡くなった場合、相続人同士の心理的な距離が遠いため、やり取りが難しいという事もよくあります。
長年交流がない疎遠な方に連絡を取るのは気が重いことです。
遺産の分け方についての話となればなおさらです。
また、先述の「事例③ 相続人同士が疎遠なため、連絡を取って話し合いをするのが大変」のように、連絡先が分かっていても相手が対応してくれない事や、連絡先が分からないという事もあり得ます。
司法書士田中暢夫連絡が取りづらいからと言ってその方を除外することはできないので、何とかして連絡を取る必要があります。
疎遠な相続人がいるときの相続手続きについてくわしくはこちら

被相続人と疎遠・遠方に住んでいる
独身の兄弟が亡くなった場合、亡くなった方(被相続人)と疎遠なため、あるいは物理的に距離が遠いため手続きが大変というのもよくあるケースです。
兄弟との関係性によっては、数十年間交流が全くないという事も珍しくありません。
先述の「事例② 亡くなった方と疎遠で財産の詳細が不明なため、何から手を付ければいいかわからず大変」のように、被相続人の暮らしぶりや財産の状況が全くわからないという事もあり得ます。
また、兄弟との交流がある場合でも、住んでいる場所が遠い場合は、自宅の整理や相続手続きのために何度も現地に足を運ぶのは大変な負担になります。
特に相続人が一人しかいないケースでは、自分で全てを行わなくてはならないので、かなり大変です。
司法書士田中暢夫本当に何もわからない場合、借金等の有無を調査し、場合によっては相続放棄も検討しなければならないので、一度専門家へ相談することを強くおすすめします。
遠方に住む兄弟が急死し、一人で手続きを行うことになったため大変なケースの具体的事例はこちら

先に亡くなっている相続人がいる
独身の兄弟が亡くなった場合、他の兄弟が先に亡くなっているため、手続きが大変になることも珍しくありません。
相続人になるはずの兄弟(兄弟姉妹)が先に亡くなっている場合、先に亡くなった方に子供(被相続人から見て甥姪)がいれば、相続人になります。
一緒に暮らした時期のある兄弟姉妹と異なり、甥姪とは年齢も離れており、ほとんど交流がないので、なかなか話がまとまらないという事はよくあります。
司法書士田中暢夫兄弟と甥姪あるいは甥姪同士の面識がなく、亡くなったことから知らせなければならないケースもよくあります。
面識がない甥姪と連絡が取りづらく大変なケースの具体的事例はこちら

独身の兄弟が亡くなったときの相続人(相続関係)
独身の兄弟が亡くなったときの法定相続人は下記のとおりです。

以下、相続関係ごとの法定相続人及び法定相続分について解説します。
子供がおらず両親がすでに死亡していれば兄弟が相続人
独身の兄弟に子供がおらず、父母や祖父母が全員死亡している場合、兄弟(兄弟姉妹)が法定相続人になります。
兄弟姉妹の法定相続分は人数で均等割りです。

子供がいなくても親が存命の場合は親のみが相続人
独身の兄弟に子供がいない場合でも、親(父母)が健在であれば、親が法定相続人になります。
この場合、存命の父母が複数いれば法定相続分は人数で均等割りです。
実父母の他に養父母がいる場合は、養父母も相続人になります。
また、あまり多くはありませんが、父母が両方とも亡くなっているが祖父母が健在のケースでは、存命の祖父母が法定相続人になります。(法定相続分は父方母方問わず人数で均等割り)

司法書士田中暢夫なお、直系尊属(父母や祖父母)が相続人になる場合、一番近い親等の方が優先のため、父母が一人でも存命の場合は、祖父母がいても相続人にはなりません。
独身でも子供がいる場合は子供のみが相続人
亡くなった方が独身でも、下記のようなケースでは子供が相続人になります。
- 離婚した元妻との間に実子がいる。
- 元妻の連れ子を養子縁組して、離婚の際に養子縁組を解消していない。
- 結婚はしていないが認知した子供(婚外子)がいる。
子供が複数いる場合、法定相続分は人数で均等割りです。
実子と養子がいる場合でも、平等に均等割りです。

先に死亡している兄弟がいる場合はその子供(甥姪)が相続人
亡くなった時点で兄弟(兄弟姉妹)がすでに死亡している場合、その子供(被相続人から見て甥姪)がいれば、その方が繰り上がりで相続人になります。(代襲相続と言います。)
甥姪の法定相続分は、亡くなった親(兄弟姉妹)の法定相続分をそのまま引き継ぎます。
子供が複数いる場合は人数で均等割りになります。

司法書士田中暢夫なお、甥姪もすでに亡くなっている場合、その子供は相続人にはなりません。(兄弟の代襲相続は一代限り)
異母・異父兄弟の法定相続分は両親が同じ兄弟の半分
兄弟姉妹が法定相続人になるケースで、父母の一方を異にする異母兄弟や異父兄弟(半血兄弟姉妹)がいる場合は、異母・異父兄弟の法定相続分は両親とも同じ兄弟の2分の1になります。

内縁の妻・夫に相続権はない
独身の方に内縁の妻や夫がいる場合でも、法律上の婚姻関係になければ相続人にはなりません。
例え長年一緒に暮らしていて、周囲から夫婦同然と思われていても、遺言書が無ければ相続することはできません。
司法書士田中暢夫なお、内縁の妻や夫は、特別寄与者として財産分与(特別寄与料)を受けられる可能性はあります。
遺言書がある場合は遺言書の内容に従う
独身の兄弟が法的に有効な遺言書を遺していた場合、遺言書の内容に従って相続することになります。
遺言は法定相続分より優先されるため、例えば「全財産を公益団体に遺贈寄付する」と記載されていた場合、法定相続人がいても相続権はありません。
なお、直系尊属(父母など)や子供には遺留分という法律上最低限認められる取り分があります。
そのため、親などが法定相続人のケースでは、相続開始後に遺留分の請求をすることで遺留分相当額の金銭の支払いを求めることはできます。
司法書士田中暢夫遺言書がある場合でも、法定相続人(及び受遺者)全員の同意がある場合は、遺言と異なる内容で遺産分割をすることは可能です。
遺言書があるが、相続人全員の同意のもと遺産分割協議を行ったケースの具体的事例はこちら

独身の兄弟の相続特有の3つの注意点
独身の兄弟の相続については、特有の注意点が3つあります。
- 兄弟姉妹(甥姪)には遺留分がない
- 兄弟姉妹(甥姪)の相続税は2割増し
- 兄弟姉妹の代襲相続は一代限り
以下それぞれについてくわしく解説します。
兄弟姉妹(甥姪)には遺留分がない
兄弟姉妹や甥姪には遺留分が無いので、遺言がある場合、例え一切遺産を貰えない内容だとしても、金銭の支払いを求めることはできません。
遺留分とは、法定相続人に最低限認められる取り分です。
遺言書で遺産の分け方が指定されている場合に、自分の貰える財産が遺留分を下回る方は、多く貰う方に対して不足分の金銭の支払いを求めることができます。
しかし法律上遺留分が認められるのは配偶者・子供・直系尊属(父母など)までです。
司法書士田中暢夫兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合、遺言書を書いておけば、遺言者の希望を100%実現できるという事になります。
遺留分についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

兄弟姉妹(甥姪)の相続税は2割増し
兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合、その人の相続税額は、本来の相続税額の2割に相当する額が加算された金額となります。
また、不動産や預貯金等の遺産は一切相続しなくても、兄弟姉妹や甥姪が死亡保険金を受け取る場合があります。
死亡保険金には「500万円×相続人の数」の非課税枠がありますが、その枠を超えた部分については相続税の課税対象となります。
兄弟姉妹や甥姪が生命保険金を受け取った場合、非課税枠を超える部分について課税される相続税は、やはり2割増しになります。
兄弟姉妹の代襲相続は一代限り
独身の兄弟の相続で兄弟姉妹や甥姪が相続人になるケースでも、被相続人の甥姪の子供は、遺言書が無い限り相続人にはなりません。
先述の「先に死亡している兄弟がいる場合はその子供(甥姪)が相続人」で解説したとおり、被相続人より先に亡くなっている兄弟姉妹がいる場合、その子である甥姪は代襲相続人になります。
しかし、甥姪まで先に亡くなっている場合、さらにその下の世代には行かず、他の相続人の相続分が増えることになります。
被相続人の直系卑属(子供、孫、ひ孫)は、下の世代がいる限り代襲相続人になりますが、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りです。
司法書士田中暢夫甥姪の子供に相続させたい場合は、遺言書の作成が必須なので気を付けましょう。
独身の方の相続対策は遺言書の作成が不可欠
ここまで独身の兄弟が亡くなったときの相続について、トラブル事例や大変な理由などを解説してきましたが、これらの問題のほとんどは生前に遺言書を作成しておくことで解決できます。
以下、その理由について具体的事例とともに解説します。
遺言書があれば特定の方に全財産を遺すことも可能
先述の「遺言書がある場合は遺言書の内容に従う」で解説したとおり、遺言は法定相続分より優先されるため、遺言書があれば特定の方に全財産を遺すことも可能です。
折り合いの悪い相続人と仲の良い相続人がいる場合に、仲の良い人だけに財産を遺したいと思うのは自然なことです。
兄弟姉妹や甥姪が相続人の場合は遺留分もないため、遺言書があれば確実に自分の希望通りに財産を遺すことができます。
司法書士田中暢夫相続人が父母などの場合は遺留分の問題がありますが、遺留分を請求するかどうかは任意であり、請求されなければ支払う必要はありません。
特定の相続人に全財産を遺すために遺言書を作成した具体的事例はこちら

遺言書があれば相続手続きの負担を大きく軽減できる
遺言書があれば、残された方の相続手続きの負担を大きく軽減することができます。
独身の方が亡くなった後の相続手続きは大変なのはすでに解説したとおりですが、遺言書があれば遺産分割協議は不要で、他の相続人の協力を得ることなく相続手続きを進めることができます。
特に相続人の中に疎遠な人や仲の悪い人がいる場合、遺言書の有無で手続きの難易度は大きく変わります。
司法書士田中暢夫手続きの負担減のためには、遺言書で遺言執行者を定めておくことも重要です。
相続手続きの負担軽減のために遺言書を作成した具体的事例はこちら

遺言書があれば相続人に財産を渡さず、遺贈や寄付することも可能
遺言書があれば他の兄弟に財産を渡さず、相続人ではない第三者へ遺贈することも、特定の団体に寄付することも可能です。
独身の方の場合、積極的に財産を遺したい相手はいないという方もいるでしょう。
しかし、「あいつにだけは絶対に財産を渡したくない」という相手はいてもおかしくありません。
そのような場合、例えば「全財産を公益団体に遺贈寄付する」という内容の遺言書を書くことで「財産を渡さない」という希望を実現することができます。
もちろん、純粋にお世話になった人や団体に財産を遺したいという方にとっても遺言書は有効な手段です。
疎遠な兄弟ではなく親しい知人に財産を遺すために遺言書を作成した具体的事例はこちら

相続人が複数いる場合、遺言書が無いと不公平になる可能性が高い
相続人が複数いる場合、遺言書が無いと不公平になる可能性が高いです。
遺言書が無ければ、相続人間の話し合いで遺産の分け方を決めることになりますが、多くの場合、法定相続分どおりに分ける事になります。
法定相続分どおりで分けるというのは一見公平に思えますが、実情を鑑みると不公平になってしまうケースも少なくありません。
例えば、生前や死後に特定の方が親身になってお世話や手続きを行ったにもかかわらず、何もしていない他の方と取り分がほとんど同じという事態が起こり得ます。
これでは、一生懸命にお世話した方が報われません。
また、財産を遺す方も、お世話になった方に多くの財産を遺したいと思うのが普通ではないでしょうか。
このような事態を避けるという意味でも、遺言書は有効な手段です。
司法書士田中暢夫現在特定の親族にお世話になっている方、今後そうなる可能性が高い方は、遺言書で感謝を伝えるとともに、遺産の配分についても配慮することをおすすめします。
お世話になっている親族に多くの財産を遺すために遺言書を作成した具体的事例はこちら

独身の兄弟に遺言書を書いてもらう方法
本記事をご覧の方の中には、相続手続きでのトラブルを避けるために、「独身の兄弟に遺言書を書いてもらいたい」と考えている方も少なくないと思います。
そこで、独身の兄弟に遺言書を書いてもらう方法について、相続の実務家の視点から解説します。
手続きが大変、他の方とトラブルになりたくない等の面を強調して伝える
独身の兄弟に遺言書を書いて欲しい場合、「遺言書が無いと亡くなった後の手続きが大変」「相続のことで他の相続人とトラブルになりたくない」等の面を強調して伝えることを心がけましょう。
いきなり遺言書を書いて欲しいと切り出すと「財産が欲しいのか」「早く死んでほしいのか」等の誤解を招き、拒絶される可能性があります。
まずは「遺言書が無いと困ったことになる」という事を伝え、遺言書はトラブル回避の手段であることを理解してもらうことを心がけましょう。
財産が欲しいから書いて欲しいわけではないことをわかってもらうために、「内容は任せるから」と伝えてもいいかもしれません。
司法書士田中暢夫本記事で挙げた事例が当てはまりそうな方は、想定されるトラブルの例として本記事や本HPの解決事例を見せてもいいかもしれません。
誰かが身元保証人や連絡先にならなくてはいけないことと絡めて伝える
独身の兄弟に遺言書を書いて欲しい場合、「いずれ施設や病院に入る際に、誰かが身元保証人や連絡先にならなくてはいけない」ということと絡めて伝えるのも有効です。
独身の兄弟がそこまで高齢ではない場合、遺言書について話をしても「まだ当分先のこと」であり、「自分自身が困ることはない」ため、あまりピンとこないかもしれません。
しかし、いずれ年齢を重ねて体が弱ってくると介護施設や医療施設への入所・入院が必要になるということは、自分自身の現実的な問題として考えられるのはないでしょうか。
そこで、「今後もしそのようなことになった時、自分が身元保証人や連絡先になるのはいいけど、その代わりもしもの時の手続きで困らないように対策はしておいて欲しい」という風に伝えてみましょう。
この場合も、遺産目当てと思われると気分を害してしまうので、あくまで「亡くなった後の手続きの負担軽減のために」遺言書が必要と伝えるようにしましょう。
実際に、身元保証人や連絡先になっている親族は故人と一番親しいことが多く、死後の手続きも代表者として動くことがほとんどです。
「相続人が複数いる場合、遺言書が無いと不公平になる可能性が高い」でも解説したとおり、遺言書等の生前対策をしておかなければ、生前や死後に特定の方が親身になってお世話や手続きを行ったにもかかわらず、何もしていない他の方と取り分がほとんど同じという事態が起こり得ます。
司法書士田中暢夫兄弟との関係性にもよりますが、「何も対策してくれないまま私だけが大変な思いをするのは嫌だよ」ぐらいは言ってみてもいいかもしれません。
一度専門家に相談するよう後押しする(できれば一緒に相談に行く)
独身の兄弟が多少なりとも遺言書の必要性を感じている状態であれば、一度専門家に相談するよう後押ししましょう。
身近な親族の相続トラブルでもあれば、遺言書の必要性は実感しやすいですが、そうでなければいまいち危機感が無く、そのうちでいいかと後回しになりがちです。
相続に精通した専門家に相談すれば、実際の経験に基づき、遺言書がない場合の大変さについて具体的に教えてくれるため、遺言書を作成する動機付けとなるでしょう。
家族のすすめで相談に行くことになった場合は、できれば一緒に相談に行くことをおすすめします。
一緒に話を聞くことで、相続における問題や遺言書の必要性などを共通認識として持つことができ、誰にどのように財産を残すべきか、遺言執行者はどうすべきか等の遺言の内容も自然に決まることが多いからです。
相談の際は、その専門家が相続に精通しているかどうかは注意してください。
あまり詳しくない方に相談すると、一般的な話に終始してしまい、問題点が明確にならず、漠然とした不安が解消されない可能性があるためです。
また、詳しくない専門家に依頼したために遺言書の内容が不十分なものとなり、相続手続きの際に支障が出た事例もしばしば見られます。
士業専門家の中でも本当に相続に詳しい方は意外と少ないので、ホームページで実際の事例を公開している場合は参考にするといいでしょう。
遺言書の失敗事例と残された人が困らない遺言書作成のポイントについてはこちら

遺言書以外に独身の方が生前にできる対策
独身の方が生前に行う相続対策としては、遺言書作成の優先度が高いですが、その他にも家族関係や財産状況によっては行っておいた方がいい生前対策がいくつかあります。
以下それぞれについて解説します。
生命保険を活用する
独身の方の生前対策としては、生命保険を活用する方法があります。
生命保険の被保険者死亡時に支払われる死亡保険金は、受取人の固有財産になるため、遺産分割や遺言の対象になりません。
相続手続きや遺言執行を待たずに受取人がすぐに受け取ることができるため、葬儀費用等の緊急の支払いや当面の生活費に充てることができます。
また、死亡保険金には相続税申告における非課税枠(500万円×相続人の数)があるため、節税効果も期待できます。
なお、生命保険は契約内容によっては相続対策にならないどころか、かえってトラブルの原因になることがあります。
下記事例のように不必要にたくさんの保険に入っている場合は、一度契約内容を見直すことをおすすめします。

家族信託を活用する
独身の方の生前対策としては、家族信託も有効です。
家族信託とは、財産の所有者が家族などの身近な人に財産を託し、託された人が財産の管理・運用・処分などを行う仕組みのことです。
家族信託は、本人が認知症になった後の財産管理対策として非常に有効ですが、契約の際に亡くなった後の財産の取得者についても定めるため、遺言書の代わりの機能も持ちます。
家族信託は遺言書と比べてより専門的知識と経験が求められるため、司法書士などの専門家に相談の上で活用を検討しましょう。
死後事務委任契約を結んでおく
独身の方で、死後の手続きを任せられる家族がいない場合は、死後事務委任契約を検討しましょう。
死後事務委任契約とは、自分の死後に必要になる事務処理・手続き等をあらかじめ信頼できる人に委任しておく契約です。
亡くなった後の葬儀の手配、遺品整理、行政への届出、親族や知人への連絡等は、通常は家族(相続人)が行います。
しかし、相続人がいない場合や疎遠な場合は、これらの事務処理をめぐり、誰かにしわ寄せがいく可能性が高いです。
親しい知人や専門家などと死後事務委任契約を結んでおくことで、相続人以外がこれらの事務処理を行うことが可能になります。
なお、実務上は遺言執行と死後事務委任のどちらで処理すべきか微妙なケースも少なくないため、死後事務委任契約の締結時には、遺言書の作成(遺言執行者の指定)も同時に行うことが多いです。
死後事務委任契約についてくわしくはこちら

任意後見契約等を結んでおく
生前の財産管理対策としては、任意後見契約を結んでおくことも有効です。
独身の方の場合、認知症になった場合の財産管理が問題になりやすいです。
親子であれば、通帳等を預かって事実上管理しているケースも少なくありませんが、兄弟の場合は年齢が近いこともあり、難しいことも多いです。
任意後見契約を結んでおけば、将来認知症になった時の財産管理を、信頼できる親族や専門家に任せることができるので安心です。
直接的な相続対策ではありませんが、遺言書と併用することで、自分の財産を守り、次の世代に適切に残すことが可能になります。
養子縁組をする
独身の方の相続対策としては、養子縁組をするという方法もあります。
仲のいい甥や姪を養子にするケースが多いですが、兄弟でも年下の方であれば養子にすることは可能です。
ただし、養子縁組には下記のような注意点があります。
- 戸籍の変更や名字の変更を伴う場合がある。
- 未成年を養子縁組すると実親が親権者でなくなる。
- 法定相続人の人数が減ることにより、相続税の負担が大きくなる場合がある。
- 節税目的のみで行った養子縁組は、相続税申告の際に税務署に否認される可能性がある。
- 特定の方が相続人になることにより、親族間での争いに発展する恐れがある。
特に、養子縁組により特定の方が財産を独り占めすることになるケースでは、養子縁組の有効性を巡って争いになりやすいです。
親子同然に親しい関係であれば検討してもいいですが、独身の方の場合、養子縁組により相続税の負担が大きくなることもあるので、遺言書など他の方法と比較して慎重に検討しましょう。
独身の兄弟が亡くなったときに必要な手続き(遺産相続以外の手続き)
独身の兄弟が亡くなると、遺産相続手続きの前に様々な手続きが必要になります。
必要な手続きと大まかな流れは下記のとおりです。

必要な手続きの詳細については下記の記事をご覧ください。 (親が亡くなったときの手続きについての記事ですが、基本的な部分は同じです。)

独身の兄弟が亡くなったときの遺産相続手続きの流れ
独身の兄弟が亡くなったときの遺産相続手続きの流れは、相続関係その他の事情によっても異なりますが、一般的には以下のように進めることが多いです。
各手順について詳しく知りたい方はリンク先の記事をご参考ください。















独身の兄弟が亡くなったときに必要に応じて行う手続き(期限が短いもの)
一般的な遺産相続手続きの流れは上記のとおりですが、遺産の額や故人の状況によっては、他にも様々な手続きが必要になります。
その中でも以下の手続きは期限が短いので、必要な場合はすみやかに対応しましょう。
相続放棄(3か月以内)
独身の兄弟に借金があり、預貯金などのプラスの財産を上回る場合は、すみやかに相続放棄を行うべきです。
相続放棄をすれば、プラスの財産ももらえない代わりに債務を引き継がずに済みます。
相続放棄をするためには、亡くなったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申立てを行う必要があるので、早めに手続きを行いましょう。
司法書士田中暢夫故人の遺産を使ってしまった場合、債務も含めてすべて相続した扱いとなるため、相続放棄する場合は遺産には一切手を付けないように気を付けましょう。
相続放棄についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。

準確定申告(4か月以内)
独身の兄弟に年金や給与所得以外の所得がある場合など、一定の要件に当てはまる場合は、亡くなったことを知った日から4か月以内に準確定申告を行う必要があります。
「準確定申告」とは、法定相続人が被相続人に代わって確定申告を行う制度です。
資料集めに時間がかかると4か月はあっという間に過ぎてしまうので、該当する方は早めに取り掛かりましょう。
経験が無い方が自分で申告するのは大変なので、税理士に任せてしまった方が楽かもしれません。
相続税の申告・納付(10か月以内)

独身の兄弟の遺産総額が相続税の基礎控除額【3,000万円+(600万円×法定相続人数)】を超える場合は、相続税の申告・納付を行います。
申告・納付期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
小規模宅地等の特例の適用など一定の要件を満たせば納税はゼロで済むケースもありますが、その場合でも特例の適用を受けるために申告は必要なので注意しましょう。
よくわかっていない方が自分で申告をするとかなりの確率で税務調査の対象に選ばれてしまうので、相続に強い税理士への依頼をおすすめします。
相続税の申告についてくわしくはこちらの記事をご覧ください。


独身の兄弟が亡くなったときの相続に関するよくある質問
ここからは、独身の兄弟が亡くなったときの相続についてのよくある質問を、Q&A形式で解説します。
まとめ
独身の兄弟が亡くなった場合、主に人間関係の問題から相続手続きが大変になることが多いです。
本記事を参考にして、遺言書作成などの対策を行い、将来への相続への不安を解消していただければ幸いです。
また、すでに独身の兄弟の相続が発生している場合は、自分だけが大変な思いをすることのないように、お早めに相続に精通した専門家に相談することをおすすめします。
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